「産んでくれてありがとう!」若きドラゴンズ投手の言葉に拍手そして希望を見た

「産んでくれてありがとう!」若きドラゴンズ投手の言葉に拍手そして希望を見た

プロ野球ゲームセット後のヒーローインタビューは、選手が肉声でファンに語りかける貴重な場である。短い言葉で素直に喜びを表す選手。興奮のあまりか同じ言葉ばかり繰り返す選手。決めゼリフを絶叫する選手。いろいろなスタイルに遭遇する。

ヒーローインタビューの思い出

中日ドラゴンズの歴史をひも解くと、最近では2000年代に守備のスペシャリストとして活躍した英智選手(現ドラゴンズ2軍外野守備走塁コーチ)のヒーローインタビューは特に味があった。ユーモアあふれるひょうひょうとした語りにスタンドは大爆笑だった。現役では吉見一起投手は一言一言に“意味”と“内容”がある。チームと自分を常に俯瞰して見ている立場がにじみ出ている。若い選手もお手本にしてほしい。
そんなヒーローインタビューの場で、19歳の若竜から名言を聞くことができた。清水達也投手である。

花が咲いた清水投手その名言

清水投手は高卒2年目。埼玉県の花咲徳栄高校時代はリリーフエースとして活躍し、2017年夏の甲子園では優勝投手になった。ドラゴンズにはその秋ドラフト4位で入団した。2年先輩である小笠原慎之介投手に続く「甲子園のエース」入団だった。
その清水投手がプロ初先発で見事初勝利を飾った5月12日、ヒーローインタビューでの言葉は実に爽やかで、そして聞き応えがあるものだった。
打って守って盛り立ててくれた先輩たちへの感謝をくり返しながら、高校時代に活躍した甲子園球場については「自分は相性がいいと思って投げた」と少し自信をのぞかせて微笑んだ。定番の「ウイニングボールをどうしますか?」という質問に対しては、その日が「母の日」ということもあり、それにふれながら「両親に贈ります」と答えた。語る言葉ひとつひとつが長くもなく短くもなく、そして的確なものだった。
そして最後の質問、スタンドで試合を応援していた母親・百合野さんに対する言葉を聞かれこう叫んだ。
「産んでくれてありがとう!」。
まさに「母の日」、親としては至福の言葉であったろう。

出でよ!若き竜の投手たち

中日・清水達也投手、勝利後5月15日の様子©CBCテレビ

清水投手の登板はいわゆる“緊急登板”だった。投手陣にけが人が続出している今季のドラゴンズ。入団7年目、219試合目にしてプロ初先発を果たし、大型連休中のゲームで好投した福谷浩司投手が腰を痛め登板回避したため、急きょ清水投手が先発した。
思えば昨シーズンも交流戦の埼玉西武ライオンズ戦で、コンディションを崩した松坂大輔投手に変わって先発した藤嶋健人投手がその試合でプロ初勝利を挙げた。
愛しのドラゴンズに「貧しい」という言葉は使いたくないが、ことわざで言うならば「家貧しくて孝子顕る(あらわる)」と言えよう。少なくともプロのスカウトがその目で選んできた選手、若くても活躍する選手は早々に活躍する。“竜の孝子”たちの今後に期待したい。

「母の日」に躍動したヒーローたち

この日は「母の日」だった。他球場のヒーローインタビューでも「母の日」について若きヒーローたちが語った。
プロ初完投勝利を飾った広島東洋カープのアドゥワ誠投手は「お母さん、俺やったよ!」と故郷の熊本県にいる母親に向けて右腕を突き上げて叫んだ。
埼玉西武ライオンズの本塁打王・山川穂高選手は、日本人選手最速での100本塁打を放ち「丈夫な体に産んでくれてありがとう」と母親へメッセージを贈った。初夏の風が各地で吹き抜けたような気持ちのいい「母の日」だった。

さて、今年の「父の日」は6月16日。ドラゴンズはZOZOマリンスタジアムで千葉ロッテマリーンズと交流戦を戦う。「お父さんありがとう!」と叫ぶ“竜の孝子”が登場してくれるだろうか。父親の立場として楽しみに待っている。

【CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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