国内有数のソープランド街“金津園”に密着「恩返しがしたい…」父の借金・母のガン・妹の学費を一人で背負う風俗嬢の想い
ディープな街で“ハートフル”を探すドキュメント番組「ハートフルワールド」。今回の舞台は、国内有数のソープランド街・岐阜市の金津園。そこは、多くの人が口を閉ざす街でもあります。道行く人にハートフルな人や場所を尋ね、“金津園のリアル”に迫りました。
「取材は無理」ベールに包まれた金津園の“リアル”
明治21年、「金津遊郭(かなづゆうかく)」として開設された「金津園(かなづえん)」。街は艶やかな遊女たちでにぎわっていました。昭和の全盛期には、約70店舗の特殊浴場がひしめく国内有数の色街に。現在は岐阜駅前の再開発に伴い、店は減少傾向にありますが、今でも40店あまりが残っていて、約1000人の風俗嬢が働いているといわれています。
道行く人たちに「ハートフルな人や場所を教えてほしい」と尋ねて一人歩くディレクターですが「取材は無理」「映すな」など、誰も応えてくれません。金津園で昔から営業している喫茶店の女性は、最近は店が女性を大切にしていて、全体的に「秘密主義」だといいます。
人通りが少なくなった夜も、通りを歩く女性たちに声をかけ続けるディレクター。しかし、テレビの取材だと伝えるや否や、門前払いされてしまいます。そんな中、取材1日目に「いい話はあるけど言えない」と断られた女性に、再び会うことができました。改めて、金津園で働く理由を尋ねてみると…
「動物愛護団体をやっているので、その活動費です。」
仲間たちと一緒に動物愛護団体を運営しているというこの女性。病気になった動物の医療費や搬送費などが必要だといいます。この業界に抵抗はなかったのか尋ねると、色々思うことがあったそうですが、大好きな犬や猫を守るために、この業界で働く覚悟を決めたといいます。
「いい会社に勤めるために留学がしたい!」金津園で働くそれぞれの“覚悟”
金津園に通い詰めること1か月。ディレクターが交渉を続けていると、ある店の男性が「顔出しNG」を条件に女性3人の取材を承諾してくれました。
まずはAさん(19歳)、現役の大学生です。この業界で働く理由を伺いました。
(Aさん・業界歴約1か月)
「留学したくて。その留学費用を貯める為にここで働いています」
将来の夢はキャビンアテンダント。親に学費を援助してもらっている状況なので、これ以上負担をかけられないと話します。この仕事のことは親や友人も知りません。
(Aさん・業界歴約1か月)
「留学行けた子とかが、将来いい就職先とかに就いたりするから、格差みたいな。結局下にいる人達は、こうやって働かないといけない世の中」
続いて、少し前まで大学生だったというBさん(20代)、この業界に入るきっかけを伺うと…。
(Bさん・業界歴約3年)
「奨学金を借りて、将来返済をするじゃないですか、その時にお金無くて、どうせ風俗やるなら若い時にやっといた方がいいなと思って」
Bさんは、働き始めて約1年で学費を貯めることができました。現在の収入は1日約15万円。今は贅沢をするために、この仕事を続けていると話します。
(Bさん・業界歴約3年)
「(Q両親は知っている?)さすがに知らないです」
父親の借金・母親のガン・妹の学費…すべてを一人で背負う女性
最後に話を聞かせてくれたのは20代のCさんです。
(Cさん・業界歴約2年)
「お父さんが急に家出をしたんですよ。そのまま妹の大学費用まで持って出ていっちゃったので」
父親の家出後、父親に600万円の借金があることがわかり、同じ頃、母親にガンが発覚。そんな状況でしたが、妹2人には「大学に行きたい」という思いがあることを知ったCさん。悩んだ末に、昼の仕事を辞めて、この業界で働くことに。
(Cさん・業界歴約2年)
「長女なんで、やれることは…と思うのと、お母さんに今まですごく愛情を注いで育ててもらったので、何か恩返ししたい」
普段の生活に密着させてもらいました。ある日、スーパーに行くと…。
(Cさん・業界歴約2年)
「全部安い納豆売り切れている(Q値段気にする?)気にします。安いのが売り切れていたら買わない」
あまり食事にはお金をかけないそうで「食べられればいい」と、切り詰めた生活を送っています。
「死にたいと考えたこともある」過去の分までこれからは幸せに
何度か取材を重ねるうちにCさんは、父親との「辛い過去」を打ち明けてくれました。
(Cさん・業界歴約2年)
「お父さんに、暴力をふるわれていた時が一番しんどかった」
見せてくれた当時の写真には、赤紫になった痣や傷跡が生々しく映っていました。父親が暴力をふるうのは家族の中でCさんだけで、顔と上半身ばかりを殴っていたそうです。本当に辛くて「死にたい」と自殺を考えたこともあったと、声を詰まらせます。
そんなCさんに、とても優しく接してくれたのがお母さん。父親と2人にならない状況を作ったり、気分転換に外に連れ出してくれたりしたそうです。
(Cさん・業界歴約2年)
「助けてくれたのはお母さんなのに、お母さんがガンになってしまって、失ってから悲しんでも遅いなって思うので、ちゃんと治療をしてほしい」
金津園で働くのは、辛い時を支えてくれた“お母さんへの恩返し”のため。心のどこかでは「お母さんのガンが治るかどうか不安」に思っていると本音をこぼすCさん。これからの人生の目標を尋ねると…。
(Cさん・業界歴約2年)
「昔の分まで楽しく幸せに生きることですね」
国内有数のソープランド街・岐阜市の金津園。多くの人が口を閉ざすこの街には、大切な家族や、守りたい動物、将来の自分のためなど、様々な事情を抱えて働く女性たちの姿がありました。
CBCテレビ「ハートフルワールド」11月18日放送より