落書きは立派な犯罪。どんな罰則が科せられる?

京都を代表する名所のひとつ、嵐山の竹林の小径で竹に落書きされる被害が再び増加しています。京都市は倒竹する危険性があるとして被害が大きい竹の伐採を検討しています。定期的に話題となる公共物への落書き行為ですが、法律では取り決めがあるのでしょうか?10月21日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、光山雄一朗アナウンサーが落書き問題について、アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士に尋ねます。
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公共のものに落書きをする行為は、法律ではどのような扱いになるのでしょう?
正木「落書きに特化した法律はあるわけではないです。が、落書きをすることによって、そのものを物理的に使えなくしてしまう。汚してしまうことで外観、美観を著しく損なう、そのものが持っている効用を事実上なくしてしまいます。
モノを壊すという形で法律的には評価できるということで、いろいろな法律で落書きに関する規制はあります。
刑法の中では器物損壊罪、建物に落書きした場合は建造物損壊罪、という犯罪になったりします。あとは落書きしたことによって、書かれたところの業務を害することになるので威力業務妨害罪にあたるケースもあります。
また、何に描くかによりますが、描くものが文化財に指定されているときは文化財保護法という法律があって、その文化財を壊したり使えなくするという評価がされる場合もあります。
全国的に落書きが発生していて、各自治体対応に苦慮していて条例を設けている場合もあります。愛知県だと一宮市に落書き行為の防止に関する条例というものがあって、落書き行為の禁止、落書きを消すための費用を請求できると定めているものがあります(ただし罰則なし)。
これらは消せない、消すのがかなり難しい落書きに適応されるものですが、簡単に消せるものだと軽犯罪法違反という形で摘発される場合があります。さまざまな法律で落書きした場合に該当する可能性があるという形になります」
嵐山の事件は器物損壊罪?
では、嵐山の竹林に落書きした今回のケースはどれに当たりますか?
正木「おそらく器物損壊罪がメインと思いますが、こちらは古都保存法という法律があって歴史的風土特別保存地区に指定されています。この場所はCMとか雑誌でもかなり利用されていて、海外の方にもかなり人気の観光地だそうです。
竹はナイフなどで傷をつけて落書きしているので、直すことはできません。さらに重要な保存を計ろうとしているところの風景を著しく害するとなるので、器物損壊罪という形で問題になる可能性が高いと思います」
ただ、誰が落書きしたという特定はしにくいでしょうね。
正木「誰かが見ているとか、カメラがあるとかではないと、立証は難しいかなと思われます」
修繕費が400万円!
過去に問題になった事例はありますか?
正木「一番近いところだと、今年の5月に新潟県で国の重要文化財の橋にスプレーで落書きをしたという形で、19歳の若者2名が逮捕されました。
これは文化財保護法違反、他にビルにも落書きをしたということで器物損壊罪の疑いで逮捕されています。
あと、落書きを消すための修繕費が400万円ほどかかったと言われ、これは自治体から全額請求されています。それ以外も事例はたくさんあります」
バンクシーは落書き?
公共物や私有物に絵を無許可で描くことで知られる、芸術家のバンクシーの場合はどうなるのでしょうか?
正木「見解はわかれると思いますが、バンクシーに関しては、かなり著名な芸術家。描かれた物の価値が描かれたことによって下がるのではなくて、価値が莫大に上がる。だから器物損壊罪ではないという解釈も成り立ちます。
ただ、イギリスで王立裁判所の外の壁にバンクシーが新作を描いたそうです。
許されるべきという世論もありますが、警察は王立裁判所の壁に描くとはけしからんということで器物損壊罪で捜査を開始しているそうです。この議論は世界でもされています」
防止するには
今後落書きを防止するためにどのような対策が求められますか?
正木「我々個人個人のモラル、そもそも落書きは違法なことだ、許されることではないということを知らしめるべきです。
実際そうは言っても、すべてを守ることはできないので、防犯カメラの設置をしたり、定期パトロールをしたり、看板などで知らしめることもありますし、落書きされた場合警察に通報する、犯人がわかった場合にはしっかり損害賠償請求をする。
被害者側も刑事処分を求めることで、落書きは法的に許されることではない、当然取るべき責任があるとわかるような動きをしていかないと、社会的に許容されている感じを生んでしまうと思います」
罰則の内容はどういうものでしょうか?
正木「器物損壊罪だと1件であれば、3年以下の拘禁刑、または30万円以下の罰金。建造物損壊罪とか文化財だと5年以下の拘禁刑が一番重いところかなと思います」
落書きは立派な犯罪です。その認識を持つことがまず一歩のようです。
(みず)
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