医学博士に聞いてみた。ハチに刺されたらどうしたらいい?

CBCラジオ『北野誠のズバリ』の「中高年よろず相談室」では、健康の悩みなどを解決していきます。9月5日の放送では、ハチに刺されたときの対応について相談が寄せられました。心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が回答します。聞き手は北野誠です。
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まずは64歳女性からの相談内容です。
「6月末に裏庭でアシナガバチに刺され、すぐに水で洗いアロエを塗ってよくなったのですが、7月はじめに右手くるぶしと中指と薬指の間の2か所をまた刺されました。少し痛みがあり、腫れていたので薬局に行きました。
1軒目では吐き気がなく、「じんましんのような症状がなければ放っておいても大丈夫』と言われました。
別の薬局では『薬を塗って2日くらい様子をみて吐き気、じんましんなどの症状が出たら病院へ行ってください』と言われました。
その後大丈夫なのですが、今後ハチに刺されたらアナフィラキシーショックとか出るのでしょうか?
またハチに刺されたときはどのように対処すればいいのでしょうか?」(Aさん)
アナフィラキシーショックで死亡も
ハチに刺されて亡くなるケースでは、体内で何が起こっているのでしょう?
吉田「2つのケースがあります。スズメバチは集団で襲ってくる習性があります。一斉に刺されて毒によって死亡する。これは中国で多いですが、日本ではこういうケースは少ないです。
毎年日本ではハチに刺されて、少ない年で15人、多い年だと40人ほど死亡していますが、大半がハチの毒の毒性ではなく、アナフィラキシーショックというアレルギー反応を起こして死亡しています」
ハチの種類と危険性
Aさんのケースのようにアシナガバチでも危険なのでしょうか?
吉田「アシナガバチは集団で襲ってくることはほとんどないし、刺されたときの毒の量も少ないので、スズメバチよりはましですが、ハチの毒が体内に入ってアレルギー反応を起こすのは同じです。
しかも、刺される回数は周囲に多いアシナガバチの方が4倍多いので、全体の死亡リスクはほぼ同じです。
ちなみにミツバチは毒の成分がかなり違い、アナフィラキシーショックが起きることはほぼないです」
2回目以降は注意
吉田「アナフィラキシーショックは、1回目刺されたときはまず起きないです。刺されて体内でアレルギー反応の原因となるIgE抗体ができて、その状態で2回目以降に刺されたら、体質によってはアナフィラキシーショックを起こすことがあるんです。
ご相談者のように2回目は大丈夫でも、3回目以降にはじめてアナフィラキシーショックを起こすこともよくあることです。
逆に、2回目でも3回目でも、1回でもアナフィラキシーショックを起こすと再び刺されたら、30~60%以上の確率で再びアナフィラキシーショックを起こすというデータが出ています」
ここを刺されたら注意!
ハチが刺す身体の部位によっても症状や危険性は違うのでしょうか?
吉田「アナフィラキシーショックは全身のアレルギー症状なので、身体のどこを刺されても発症率に差はないですが、刺されるととても危険な部分はあります。
最も危険なのは口の中、喉、首の部分。腫れあがって空気の通り道が塞がれて呼吸できなくなることがあり、死亡例もありますので、呼吸が苦しくなったら迷わず救急車を呼んでいただきたいです。
あと目を刺されたときは、視力が回復しないときもあります。刺された針を自分で抜かないこと。抜く時に角膜を損傷することが多いので、必ず眼科に行って抜いてもらうことが大事です。
あと指を刺されたときは指輪をしていたら必ず外すこと。刺されてからしばらくすると腫れてきます。血流障害を起こしたり、神経が麻痺したり、筋肉が壊死することもあり、筋膜の切開手術が必要になることもあります」
刺されたときの対処法
ハチに刺されたらどうしたらいいでしょうか?
吉田「1匹だったら静かに距離をとります。あわてて手で払うと、警戒するフェロモンで仲間を呼ぼうとします。
大事なのは(刺されて)30分から60分は全身の症状の出方を見ること。具体的には呼吸困難とかふらつき、激しい冷や汗、全身のじんましん、吐き気、嘔吐。こういう症状が出たら、アナフィラキシーショックの可能性がありますので、救急車を呼んでいただきたいです。
それまでの間は横になって、必ず足をあげた姿勢にしていただきたい。そうすると足の血液が脳に届きやすくなりますので、ショック症状が起きにくいです」
ハチに刺されるととにかくあわててしまいがちです。上記のことを頭に入れて、冷静な対応をしましょう。
(みず)
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