長男の遺留分を無視!父の遺言書で起こった対立

少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。6月18日の放送では、相続の際の不動産評価額について北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ三井信託銀行株式会社 名古屋営業部 財務コンサルタント山崎豊さんに伺いました。
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今回は、不動産の評価額をいくらにするかという問題について。
山崎「亡くなった方の保有不動産を、複数の相続人で財産分与の話し合いをする際に、不動産の評価を巡って意見が対立することがあります」
北野「相続不動産の評価を決める過程でトラブルになるということですか?」
山崎「揉める原因の一つとしては、不動産という財産の価額が 複数存在していることがあります」
主なものは、①固定資産税評価額、②相続税評価額、③公示価格、④時価です。
固定資産税評価額は、役所で取得できる固定資産評価額証明書に記載されている固定資産税を計算するために用いられる評価額。時価は、実際に売りに出した場合にいくらで売れるかの価格。
「時価の60%程度」と言われることもあり、実際の売買価格との間には 大きな乖離があります。固定資産税評価額を基準にして遺産分割や遺留分を計算してしまうと 不動産を相続する人の方が有利になります。
一方で不動産を相続しない人は、預貯金等の金融資産でこの不動産に見合う額の財産を 取得したいわけですから、「この不動産がそんなに安いはずがない」と言って 不動産の本当の価値を巡って意見が衝突することになるのです。
なぜ長男への配分がなかった?
北野「この事例のご家族は、お子さまたちの仲がそんなによくなかったんですか?」
山崎「残念ながら仲が良くありませんでした。亡くなられたお父様が自筆の遺言書を書いておられたのですが、長男には配分せず、二男と長女に遺産を相続させる内容でした」
長男の遺留分を侵害する遺言書であったため、長男は遺留分侵害額請求を、二男と長女に行いました。
北野「そこで固定資産税評価額と時価の乖離が論点になったわけですね?」
公平性の観点からは、「時価を採用する」ことが多く、合理的と見ることができます。ですが、不動産を引き継ぐ二男にとっては、実際に売却するわけではないため不満が残ります。
北野「不動産を引き継ぐ相続人は、そのあたりのことをきちんと認識しておかなければなりませんね」
これまでの回でも遺言書の作成で「遺留分に配慮すること」を解説してきましたが、「遺留分を巡って意見が対立するケースは後を絶たない」と山崎さん。
話し合いがうまくまとまらなければ最終的に調停・審判に至るケースもあります。
遺留分も配慮した遺言書作成を
では、各相続人が納得するように配分を決めておけば争いは起こらなかったということなのでしょうか?
山崎「遺言者であるお父様は、生前長男と不仲であった上に、長男は二男、長女とも疎遠な関係でした。お父様はそのお気持ちをそのまま自筆遺言書に記載されていたわけですが、長男の遺留分への配慮があれば、円滑に手続きができた可能性もあります」
北野「相続人の仲がよくても遺言書を書く方がいるのですから、仲が悪い、あるいは疎遠である場合などは特に遺言書は必要ですね!」
今回のポイントは、遺留分への配慮。
相続人間の良好な関係性を継続させるためにも、適切な内容の遺言を作成することで無用のトラブル防止につながると覚えておくことが大切です。
「心当たりのある方は今のうちに相談して!」と呼びかけた北野でした。
(葉月智世)
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