6月20日放送のＣＢＣラジオ『北野誠のズバリ』には、51歳の女性リスナーから、便秘に関する相談が寄せられました。この相談に心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が回答します。

便秘で困っています

「私は昔から便秘症で、一週間出ないときもあります。そうするとお腹がはったり、時には気分が悪くなって嘔吐することもあったりします。
以前大腸カメラで検査してもらったら『腸がものすごく長い』と言われました。便を放置するとどうなるのでしょうか？」（51歳・女性）

まず便秘になるメカニズムについて語る吉田先生。

吉田「原因として圧倒的に多いのは機能性便秘といって、ストレス、生活習慣の問題で便を出す排便反射というのが低下している。あるいは運動不足、水分の不足、食物繊維の不足で、便が出にくくなって便秘になる、こういうケースが大半です」

一方、腸に腫瘍や炎症が広がって便が通過しにくくなったり、糖尿病とか甲状腺機能低下症など、別の病気が原因で便秘になることもあるそうです。
「ぜひ一度消化器内科で診察をうけていただきたい」と語る吉田先生。

なぜ便秘は女性に多い？

便秘というと、女性の方がなりやすいイメージがあります。

吉田「それは正しいです。厚生労働省の調査で便秘に悩まされている人、男性は2.5％、女性は4.6％、男性の2倍近くにのぼります。

理由は女性ホルモンのプロゲステロンは腸の動きを抑える作用を持っていますが、生理の前にはプロゲステロンが増えるので便秘も悪化するわけです。

あと腸を動かすのは自律神経です。女性が更年期になると自律神経が乱れてしまうので、腸の動きも悪くなって便秘が増えます。

そして、そもそも男性より腹筋が弱いので便を押し出す力も弱い。さらに出産を経験すると骨盤の筋肉の働きが悪くなって便秘を加速するということもあります。いろんな要因が重なって女性は便秘になりやすいです」

ひどい便秘で困ること

便秘を放置することのリスクを語る吉田先生。

吉田「腸に長い間便が留まっているとウェルシュ菌とかバクテロイデスという菌が繁殖して有害な物質をまき散らします。
具体的にはインドール、ヒカトールという便特有の悪臭成分だったり、注意しないといけないのはアンモニアが増加して肝臓で処理しきれないくらい増えると脳にも悪影響を及ぼします。

あと硫化水素も発生して、腸の粘膜にダメージを与えるし、メタンも発生し、これは腸の運動を抑える働きをし、余計に便秘になります。悪循環です。

最悪、便秘が悪化して腸が完全にふさがることもあるし、腸の壁に穴が開いたりすることがあります。油断しないでください」

腸が長いと便秘になりやすい？

Aさんが「腸が長い」と言われたことについて。

吉田「フランスのプール大学が200人の腸の長さを測定しました。平均は7ｍ95.5cm。個人差が大きくて、プラスマイナス1ｍ29cm。
つまり腸が長い人と短い人では2ｍくらい開きがあります。ご相談者はおそらく9ｍ以上はあるのではないでしょうか」

腸の長さと便秘はどう関係するのでしょうか？

吉田「便秘になりやすいかどうか、特に影響を与えるのは結腸です。大腸のはじめの7割が結腸で、ここで水分を吸収して便を硬くして最後に直腸に送って、そこで便を出します。
福島県立医科大学の研究では、結腸が長いと便秘になりやすい傾向があるというデータが出ています。

しかし、これは便秘になりやすい決定的な要因と言えるほどではなくて、ご相談者の便秘の要因は結腸が長いだけでなく、運動不足、食事の問題、ストレスといった要因もあると思います」

トイレでの工夫が有効

便秘を防ぐには、運動や食物繊維の接種などがありますが、これらに加えてぜひやっていただきたいことがあるという吉田先生。

吉田「トイレに座るときにちょっとだけ工夫をしてください。和式トイレが洋式トイレに変わって便が出にくくなっています。
大腸は出口の直前で曲がっています。その角度は和式だと126度でスムーズに排便できます。洋式だと100度になり、排便に多くの筋が必要になり、これが便秘が増える要因になっています」

洋式トイレの家庭が増える中、簡単な対策があるそうです。

吉田「足元に10cm～30cmの足台を置くと、角度が20度～30度改善されて和式トイレとほぼ同じになります。
医学でも立証されていて、アメリカでは専門の踏み台も数多く販売されています。

足が10cm～30cm上がったら台はなんでもいいです。体重をかける必要もないので」

ちなみに、吉田先生が踏み台として特に勧めるのは「段ボールの空箱」だそうです。
（みず）