非上場の自社株、相続時に知っておくべき「2つの価値」

少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。6月4日の放送では、非上場自社株の相続時に把握しておくべき評価額の2つのポイントついて北野誠と松岡亜矢子が三井住友信託銀行 名古屋営業部 財務コンサルタント 竹中秀勇輝さんに伺いました。
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今回竹中さんは、非上場である自社株の相続トラブルをテーマに「自社株の評価額は大きく2つ把握しておく必要がある」と解説しました。
北野「自社株の評価、何か違いがあるんですか?」
竹中「自社株には2つの『価値』が存在します」
ひとつは「相続税評価額」。税務署が相続税を計算するために使う評価額で、純資産や業績をもとに算出されます。
ふたつ目は「時価」。実際にその株を売却したり、事業承継の場面で評価されたりする「実勢の価値」つまり換金価値になるそうです。
「時価」というキーワードが気になった北野、何か問題があるのか尋ねます。
竹中「この2つの価値には、しばしば大きな離れが生じます」
例えば「相続税評価額」が1億円でも、実際の「時価」が3億円というケースもあるといいます。
なぜこのような開きがあるのでしょうか?
竹中「一般的には、『相続税評価額』は『時価』よりやや低めの金額で算出できるように計算式が決まっています」
そして、過去の蓄えが多く純資産が大きく積みあがっている会社は、より「時価」が高額になる傾向があるそうです。
問題になるのは「遺留分」
「相続にも問題が生じそうだ」と懸念する北野に対し、竹中さんは「問題になるのは民法で定められている遺留分」と答えます。
「遺留分」とは、法定相続人に最低限保証されている取り分のこと。
北野「遺留分の計算って、相続とは考え方が違うんですか?」
竹中「ここが大きなポイント。相続とは考え方が異なります」
相続の場合は相続税法の「相続税評価」を基に金額を基準とします。
一方、遺留分の計算をする際は民法の「時価」が基準になるそうです。
そのため、「相続税評価額」で相続の話し合いをしていた場合、相続発生後に「もっと高い価値があるのでは?」と見て、「時価」を基準に遺留分侵害額請求を受ける可能性を、事前に把握しておく必要があるということです。
事前の把握でトラブル回避できる
では、遺留分の問題でトラブルにならないための対策はあるのでしょうか?
竹中「有効な策としては、事前に自社株の評価を『相続税評価』と『時価』の2つを把握しておき、親族で話し合いをしておくことが重要」
加えて、万が一遺留分請求をされた場合の金額を事前に把握しておくことも必要だそうです。
相続人が自社株評価の金額の違いを把握しているか否かで「トラブルを未然に防ぐ対策が検討しやすくなる」という竹中さん。
北野「他に何か対策はありますか?」
竹中さんは「遺言書作成」を提示します。特に大事なのは「自社株を誰にどのように承継させるのか、他の相続人にはどのように遺留分を確保するのか」を事前に検討しておくこと。
遺留分対策としては、生命保険や現預金などを活用し、バランスの取れた配分を検討しておくことが重要ということだそう。
北野「現預金が乏しい場合はどうしたらいいんでしょうか?」
竹中「生命保険や現預金での対応が難しい場合もあるかと思います。その場合は『民法の特例』や『民事信託』などを活用する法的・制度的な手段があります」
これらを組み合わせることで、経営の安定と家族の納得を両立させることが可能になるとのこと。竹中さんは、詳しくは専門家への相談をお勧めしました。
北野も「自社株を持っている方は、いま一度総価額を把握しておいてほしい」と促しました。
(野村)
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