部外者の侵入で大失敗!M&A3つの注意点

少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。5月28日の放送では、菓子製造会社の失敗したM&Aの原因について北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ株式会社 経営承継支援 植田駿一郎さんに伺いました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く知名度抜群の菓子店がM&Aに
今回植田さんは、関東の菓子製造業をしていた会社の失敗事例を紹介しました。
どのような会社だったのでしょう?
植田「年商は1億円ほどで、従業員さんは10名弱。都内の一等地に店舗を構え、百貨店やお土産屋さんに卸しをしていた」
知名度は抜群で、歴史もあるお菓子屋さんでした。
そんな申し分のないお店ですが、なぜM&Aをしたのでしょう?
植田「まず業績面は厳しかったという点。また社長さんが80歳近くで、息子さんはサラリーマンとして会社務めをされており、親族や従業員に承継できる者がいなかった」
買い手候補にはどんな会社が挙手したのでしょうか?
植田「関東にある食品製造業者さんで、売上はおよそ5億」
自社のノウハウで建て直しができると判断、売り手のブランド力の向上ができると思ったため買収を検討したそうです。
急遽入ってきた「部外者」とは?
どのような流れで話は進んだのでしょう?
植田「まず、準備段階で論点になったのが『価格』です」
ブランドや歴史に反して業績面は低迷していて、理想と現実のギャップがあったため中立的な立場で「現実」を理解いただきM&Aのプロセスを開始しました。
その後、買い手企業と面談、工場見学など、順調に進んでいきました。
北野「ここまではスムーズですね。何があったんですか?」
植田「最終局面で当初から希望していた金額が提示され、無事に契約締結、と思った時に売り手の社長さんから電話がありました」
その内容は「息子に相談したところ、会いたいと言っているから会って欲しい」とのこと。
そこで、売り手社長、息子、仲介者で面談をすると「ブランドと歴史を評価すればもっと高い金額になるはずだ」との意見が…。
北野「出ましたね! それでどうなったんですか?」
植田「気持ちはわからないでもないんですが、現実的にそのブランドや歴史を生かした結果が今の業績です」
このM&Aの目的について「歴史とブランドを後世に受け継いでいくこと」と説明した植田さんですが、なかなか理解は得られなかったとのこと。
買い手企業にも、やんわりと相談したそうですが、こちらも理解は得られず、話は平行線に。
失敗のポイントは3つ
植田「時間だけが過ぎていき、買い手さんから検討中止の連絡が入り、M&Aは破断。その後コロナもあったため、売り手さんは最終的に廃業となってしまいました」
北野「息子は部外者ですからね。お前やってないやん!ってね」
今回のM&Aのポイントは何だったのでしょう?
植田「家族といえども、M&Aの背景を理解していない人の意見を鵜呑みにするのはよくないことです」
次に大事なのは「M&Aの目的を明確にすること」だと植田さん。
つまり、会社やブランドを残すことなのか、お金のためなのか、従業員の雇用か、そこをはっきりさせること。
そして3つ目は、自社の価値がどのくらいか、相場を正確に把握しておくこと。
植田「M&Aを決断する時ではなく、早めに自社の株価を把握しておいてほしいです」
M&Aを検討している方に「部外者は入れてないで!」と注意喚起した北野でした。
(野村)
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