地方では0代女性の人口流出が進む理由

TBS CROSS DIGの報道によると、総務省住民基本台帳人口移動報告2024年年報を分析したところ、47都道府県中40道府県で社会減、国内人口移動による人口の減少が発生しました。この40道府県は特に地方が多いのですが、人口が減っている理由には、何があるのでしょうか。5月17日放送『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では、ニッセイ基礎研究所生活研究部人口動態シニアリサーチャーの天野馨南子さんに人口流出について解説いただきました。聞き手はパーソナリティの北野誠と加藤由香アナウンサーです。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く地方からの流出が多いのは22歳女性
この40道府県では前年と変わらず20代前半の人口を大きく社会減させ、多くが就職による転居と見られています。
特徴的なのは男性よりも女性の方がかなり多く社会減している点。
地元から出てもやがて戻ってくる男性が多い反面、女性は地元に戻る数が少ないそうです。
そして、リーマンショックの翌年以降、常に男性よりも女性の方が大きく流出しているとのことです。
天野さんによれば、20代女性の中でも特に22歳が多いそう。
これは四年制大学の学生が卒業したタイミングですが、今や四年生大学の進学率は男女差で6%しか変わらず、就職先にも差がなくなっています。
仕事がないから都会へ行く?
しかし、地方の企業では相変わらず「男性の方を採用したい」という考えが強いところが多いため、女性は大都市へ行かざるを得ないという事情もあるようです。
さらにコロナ禍以降にリモート採用も増えたため、大都市にある企業の就職活動がしやすくなったというのも、その動きに拍車をかけています。
また、全国で少子高齢化が進んでいるため、地方では仕事がないというわけではありません。
地方では女性向けの職場はいわゆるお世話の仕事、介護、保育、看護といった仕事や観光、飲食、宿泊といった家事の延長線上に似た仕事に限定した考え方が強いことで、さらなる雇用のギャップを産んでいるのではないかと天野さん。
人口減対策にズレ
20代女性が定着しないと、その地域の人口減は避けられないという状況ですが、国は危機感を抱いていないのでしょうか?
実は半世紀前と比べて夫婦が持つこどもの数はさほど減っていませんが、未婚率が上がったため、全体としてこどもの数は昔と比べて減っています。
ただ、国が婚活支援をすると炎上しかねないため、政治家は子育て支援のほうに目を向けがち。
また、高齢な政治家ほど「結婚できないなんてことがあるのか」と、自分たちの経験則に縛られているようです。
男女格差のある労働環境の改善が必要
共働きで家事や育児をお互いに担っていくという夫婦のモデルが理解できず、政策がずれているのではないかと天野さん。
想定される一般的な夫婦のモデルが変わっていく中で、労働環境に関する男女格差は大きな問題といえます。
よく「管理職の女性比率を上げるべき」という話が出ますが、地方の家族経営のような企業であれば、人数が少なくても女性を採用すればその比率は上がります。
しかし、正社員給料の男女格差は、OECD38か国中日本はワースト4位。2割以上の差がついているという世界的にも遅れた状況です。
この是正は首都圏にある大企業だけではなく、地方にも広げなければなりません。
Z世代の男性には「仕事や家の役割をお互いが担いたい」との考えから、安定した仕事をしている年上の女性と結婚する人も増えてきているのだそう。
企業も女性活躍推進より「ジェンダーレス雇用をする」という考え方に気づく必要があるようです。
(岡本)
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