憧れから責任へ。落合博満監督が川上憲伸に託した2005年開幕マウンド

CBCラジオ『ドラ魂キング』。「川上憲伸、挑戦のキセキ」は、野球解説者の川上憲伸さんが、自身のプロ野球人生を「挑戦」という視点から振り返るコーナーです。5月7日の放送では、落合博満監督政権2年目・2005年の開幕戦を回顧。本拠地・ナゴヤドームでの劇的なサヨナラ勝ち、その舞台裏や、「憧れの開幕投手」から「チームの柱」としての覚悟に至る心境の変化について語りました。聞き手は、宮部和裕アナウンサーです。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く劇的なサヨナラ満塁弾
この開幕戦は、現在横浜DeNAベイスターズの監督を務める三浦大輔投手との投げ合いとなりました。
川上「0対0でいってて、もう投げ切って交代かなという感じでした。9回、この回に点を取ってくれないと自分の勝ち星はない」
それでも「試合をしっかり開幕戦で作れた」と、ほっとしていたという川上さん。そんな中、アレックス・オチョア選手の劇的なサヨナラ満塁本塁打が飛び出したのです。
川上「確かスリーボール・ワンストライクくらいになってたと思います。ノーアウト満塁で。『1点。どんな形でもいいから、犠牲フライでもいいから取ってくれ!』と思ったところのホームランですから。嬉しいを超えちゃいましたよね」
落合監督からの信頼
落合監督就任初年度の2004年の開幕投手は川崎憲次郎投手でしたが、翌2005年に開幕投手を任されたのは川上さんでした。
宮部「スタートに、まず落合監督の挑戦というよりは信頼というところがありました。憲伸さんへのエースの信頼が出てましたよね」
川上「2004年は沢村賞だったり、MVP賞、最多勝とか、いわゆるタイトルを総ナメ状態でゲットすることができて。僕自身もかなり自信はついた年を迎えたわけです」
2004年、川上さんは自分に対して落合監督が「どうなのかな、怪我が多いし」という疑念を持っていたかもしれないと感じていたそうです。しかし、川上さんが1年間ローテーションを守り抜き、チームの軸として活躍したことで、翌年には「文句なし」で開幕投手に指名されたのだろうと振り返りました。
川上「自分でも『さすがに開幕投手かな』というのは思ってました」
任されたスケジュール調整
この年の2月1日のキャンプ初日、川上さんは落合監督から「もうわかってるよな。お前で行くからな」と開幕投手を告げられたといいます。
川上「あとは自分で調整をしっかりして。『開幕に自分をベストに持っていけるオープン戦4試合を、どうやってはめ込んでいくかというのを自分で考えろよ』というのは、確か監督に言われたような気がします」
宮部が調べたところによると、この時落合監督は川上さんに対して「任せるからな、逆算しろよ」という言葉をかけていたそうです。
川上「『お前が決めて、そこからいろんな選手を決めていくから。もし地方球場がちょうど当てはまるならそこでいいし、ドームで行くならドームでもいいし。ただ、中7日になったり4日になったりするのは、知らんよ』とオープン戦中は言われました」
落合監督と川上さんの間でこういったやり取りがあったそうです。
少ない言葉、大きな期待
劇的な開幕戦の直後、川上さんは「はっきり開幕とは言われていないが、監督の起用には全て意図がありますから」とコメントしていたそうです。
落合監督は伝える言葉が少ないタイプでした。「長々と説明するのではなく、ひと言パッと言って『あとは考えろ』というスタイル」だったため、川上さんは監督の言葉の真意を自分なりに想像していたと振り返ります。
川上「『こういう意味かな?』とか。その中で、2月1日から『逆算』と発した監督であれば、僕にかなり頼ってくれるじゃないですけど。この試合は任せっぱなしというぐらいの感じでくるだろうなというのは思ってましたから」
開幕投手は長いイニングを投げづらいものの、それでも試合を作り、長く投げていかなければならないという責任感を強く持っていたと語ります。
イメージは「初めての開幕投手」
川上さんにとって、この時が3度目の開幕投手でした。プロ2年目の1999年に星野仙一監督のもとで初めて開幕投手を務め、2003年には読売ジャイアンツの上原浩治投手に投げ勝っています。
しかし川上さんは3回目という数字は意識はしておらず、イメージとしては「初めての開幕投手みたいな感じ」だったそうです。
川上「やっぱり自分だけの問題じゃないなという感じで受け止めてました。逆プレッシャーも責任感もあったし。それまでは『開幕投手いいな』っていう感じで迎えてたと思うんですけど、これはちょっと違う感じでした」
宮部「まさにエースの信頼といえるんでしょうね」
落合監督の少ない言葉の中に、大きな期待と任せる姿勢を感じ取り、川上さんは覚悟を持って開幕のマウンドに立っていたようです。
次回は、2005年5月20日「完全試合目前」の運命のシーンについて伺います。
(minto)
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