米が消えた夏の先に…価格2倍の波紋と農業の行方

2024年夏にスーパーから米が突然消えてから半年以上。その後米の価格は急上昇し、現在は前年同月比73%増という異常事態に発展しています。3月20日放送の『CBCラジオ #プラス!」では、この価格高騰の背景と、高齢化する農業従事者の減少がもたらす日本の食料供給リスクについて、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が解説しました。聞き手は永岡歩アナウンサーと山本衿奈です。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く高騰する米価格
米の取引価格は最高値を記録しており、2月時点で前年同月比1万1182円高い2万6485円となりました。これは73%の値上げに相当します。
政府は備蓄米の放出方針を決めましたが、効果はまだ現れておらず、店頭に実際に並ぶのは今月末頃の見通しです。
この状況を受け、日本の農業従事者は2年連続で米増産に動き始めています。19道県で2025年度の作付面積が増える見通しで、4年前の水準に戻るとみられています。
廃止された減反政策の実態
国が昔は「減反政策」として米の過剰生産を抑え、価格の下落を防ぐ政策を実施していました。一旦はこの政策をやめたものの、農林水産省は現在も需要予測に基づく生産量目安を示しており、主食用のお米を減らして麦や大豆といった作物に転換した農家には補助金を出す仕組みを維持しています。
当然、補助金のある方に農家は動きます。表向きは減反政策をやめたとしていても、事実上は別の形でコントロールが続いていたのです。しかし現在では、各農家が経済合理性を追求した結果、この補助金を使ったコントロールも機能しなくなってきています。
米政策の時代的転換
石塚は「昔は米がとても大事だから、みんなが作ったら余ったという時代があった」と振り返り、過剰米や古米、古古米が問題になっていた時代を回顧。「国が色々と補助金などで調整し、減反を促進して一定の量を作れるようにしてきたが、もうそういう時代ではない」と述べました。
「農家の人たちも、補助金をもらって餌用の米を作った方がいいのか、皆さんが食べる主食米を作った方が儲かるのかを自分たちできちんと判断して。減反の方向性ではなく、よかったらどんどん作ってくださいという方向に切り替えないといけない」と、その必要性を強調しました。
見えなくなる米の流通
永岡は「農林水産省が米の量を正確に把握しきれていない」と指摘。その背景には流通の多様化があるといいます。
昔は農協(JA)に納めるケースがほとんどだったため、世の中にどれくらいの米があるか把握しやすい状況でした。しかし現在は、農家から消費者が直接購入したり、農協以外の業者が販売したりするようになり、正確な流通量の把握が難しくなっています。
2024年の夏にスーパーから米が突然消えた際、『新米が出たら大丈夫、買えるようになります。値段も戻ります』と言われていましたが、「どこが?倍なんですよ!」と永岡は指摘。
「だから、農林水産省がどこまで把握していくのか。むしろ流通の多様化という意味では把握は無理かもしれませんから、ある程度しっかり作って量を増やすというのもいいでしょうし。米農家さんがしっかり儲かるシステム作りが必要」と続けました。
高齢化する農業と将来への不安
農業従事者の高齢化も大きな課題です。
10年後に米の作り手が減るといわれています。農家も高齢化すると「米作りが大変だからやめよう」という流れがあり、その後の対応をどうするのかということです。
「自分が亡くなった後、この田んぼをどうするのか。孫や息子に任せられない」という不安も、現実的な問題としてあります。減っていくばかりでは余計に大変になってしまいます。
永岡は「しっかり儲かるシステムを作ること、若者たちが後を継ぎたいと思う形を作ることも大事になっていく」と締めくくりました。
(minto)
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