小さな温泉旅館、M&A後の「意外な再構築」で成功へ
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少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。2月12日の放送では個人事業主の温泉旅館のM&A事例を北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 経営承継支援 はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く10室未満の小さな旅館の事業承継
今回藤原さんが紹介したのは、関東地区にある個人事業主の温泉旅館の事例です。どのような旅館だったのでしょう?
藤原「10年前に不動産会社から物件を購入した後、リフォームをして温泉旅館として運営。築年数が古く部屋の数が10室未満の小さな旅館」
こちらの旅館はなぜM&Aを選択したのでしょうか?
藤原「まず、後継者がいらっしゃらない」
さらに、旅館経営には体力が必要ですが、オーナーが加齢による限界を感じていたことも理由なのだそう。
異業種のWEB会社が買い手に
買い手はすぐに見つかったのでしょうか?
藤原「いいえ、当初は同エリアの温泉旅館や温泉チェーンに提案したんですが、部屋数が少なすぎるため、なかなか見つからなかった」
藤原さんが声をかけた企業の中で興味を示したのは、全くの異業種である旅行関連のWEB制作会社だったとか。
北野「WEB会社がなぜ、温泉を?」
藤原「売り手さんの旅館は、有名な温泉郷だったので『温泉権』に魅力を感じてM&Aをすることに決めた」
しかし、温泉旅館事業としてみると部屋数も少ないため採算が合わないので、部屋数を増やすことが条件になったそうです。
北野「部屋の数を増やすとなると、土地を広げないといけませんよね?」
藤原「そうなんです」
M&Aの成功ポイントは成約後の「再構築」
部屋数拡大のため、隣の土地を持っている所有者に「土地を譲ってもらえないか」と交渉したそうですが、法外な金額を提示されあえなく断念することに。
M&A自体も白紙になったのでしょうか?
藤原「いいえ、温泉旅館として活用するのではなく、一旦WEB会社の営業拠点として活用できないかと。ちょっとムリがあるんですけど(笑)」
意外な方針転換で成約に至りました。
藤原さんは「M&A成功のポイント」として、現在の事業のまま引継ぎ先を考えるのではなく、現在の資源を活用しどのように収益のあがる状態に再構築するかを考えることも重要だと解説しました。
北野「なるほど。その後は営業拠点として活用されている?」
藤原「それが…営業拠点として活用していたんですが、海外旅行客が増えてきたので、インバウンド需要を取り込むために方向展開をした」
現在は海外旅行者向けのゲストハウスとして収益を得ているそうです。
弱点であった人材不足と人件費も、チェックインなどの作業をできる限りセルフ方式に転換してコストを下げることが可能になり、収益をあげるモデルとして成功していると藤原さん。
北野「結果的によかったですね!」
M&Aの成功は成約後に「どのように再構築するか」ということも重要なのだという教訓になりました。
(野村)
番組紹介
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