万が一の時に相続人を守る「予備的遺言」とは
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自身の財産を誰にどのように相続させるかを遺言で残している方は多いと思いますが、相続を考えていた相手に万が一の事が起きる場合もあります。2月5日放送CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、こうした事態への対策と相続人への配慮の仕方について、三井住友信託銀行 名古屋営業部 財務コンサルタントの山崎豊さんが解説しました。聞き手は北野誠です。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く推定相続人はお互いを知らない相手?
山崎「今回は、『遺留分に配慮すること』と『予備的遺言の必要性の観点』から、お客様が既に過去に作成されていた遺言書の書き換えをした事例です」
北野「予備的遺言は初めて聞きますね。どんな方でした?」
山崎「70代の主婦の方です」
この方はすでに遺言書を作成しているので「遺言者」と呼称します。
推定相続人は、同じく70代の夫と長男の2名。遺言者は再婚していて、現在の夫と二人暮らしです。長男は前夫との間のこどもで、長男が幼い頃に離婚して前夫が引き取りました。
なお遺言者と長男の関係は疎遠とのことで、現在長男に配偶者やこどもがいるかは不明とのこと。
山崎「(現)夫は長男の存在を認識していないという事情がありました」
北野「ややこしいパターンですね」
夫に全財産相続を予定していたが
遺言者の財産内容はどのようなものがあったのでしょうか?
山崎「自宅マンションと預貯金等が主たる財産で、その他に夫が受取人に指定されている死亡保険金がありました。財産の総額は約6200万円」
北野「なかなかですね」
遺言者の「書き換えをする前」の遺言書はどのような内容だったのでしょう?
山崎さんは書換え前の遺言書を「原遺言」と呼称していると前置きしました。
山崎「原遺言は5年前に作成されたもの。全ての財産を夫に相続させるという内容でした」
また、その原遺言には「予備的遺言の手当てがされていなかった」と続けます。
万が一の時に役立つ「予備的遺言」
山崎さんによれば、「予備的遺言」とは、遺言書によって相続財産を受ける予定の相続人または受遺者が遺言者よりも先に死亡した場合、もしくは相続・遺贈を放棄した場合に備えて、その方に渡る予定であった財産を受け取る次の順番の人をあらかじめ決めておくこと。
北野「作成済の遺言書を書き換えしなければいけない事情があったということですね?」
山崎「そうなんです。原遺言書には予備的遺言が設定されていなかったので、万が一、夫に先立たれた場合、遺言の効力は失われてしまい、遺言者の唯一の相続人が長男(前夫との間の子)となります」
原遺言は全ての財産を夫に相続させる内容でした。つまり夫が長男の遺留分を侵害していることになります。
遺言者の相続時、「夫が長男から遺留分侵害額請求をされてしまう可能性が高い」と山崎さん。
山崎さんは予備的遺言について、どのようにアドバイスをしたのでしょうか?
山崎「原遺言作成時には、遺言者は『予備的遺言までは考えが及ばないため決められない』との意向を受けていたため、予備的遺言は設定しませんでしたが、改めて当社から予備的遺言の必要性について説明をして再検討をお願いしました」
長男との関係は疎遠だったので、「遺言者に頼れる親族は他に存在するのか?」「夫に先立たれた場合は誰に財産を遺したいと考えているのか?」を確認したそうです。
長男の遺留分はどうする?
北野「長男の遺留分についての対応はどうされたのでしょう?」
山崎「原遺言の内容からは、夫が長男の遺留分を侵害しているため、万が一、遺留分侵害額請求があった場合、長男の存在を知らない夫が、長男からの遺留分侵害額請求への対応を余儀なくされる懸念があることを説明し、理解を得ました」
遺言者の本意としては「夫に財産を遺したい」という意向は変わらないものの「相続時に夫に迷惑をかけたくない」との思いも強く、一部財産を長男へ配分することを検討することに。
北野「懸念事項は解決できた?」
山崎「夫に先立たれた場合、全財産を長男が相続することになることを認識いただき、予備的遺言の必要性について遺言者の理解を得ました」
さらに、遺言者の頼れる親族として、姪の存在が確認できたそうです。
万が一、夫に先立たれた場合には、姪を中心に財産を配分することも考慮することになったとのことです。
相続したい人を配慮した内容に
書換え後の遺言内容は、予備的遺言を含めて長男の遺留分を侵害することがないように配慮した内容となりました。
1,自宅マンション、動産、その他財産は夫へ相続させる
2,金融資産は夫と長男に均等に相続させる
3,予備的遺言を新たに設定し、夫が先に亡くなった場合「自宅マンション、動産、その他財産」は姪へ、金融資産は姪及び長男に均等の割合で承継する
4,長男が先に亡くなった場合、金融資産を長男の直系卑属へとし、長男の直系卑属が存しない場合には姪に承継する
北野「なるほど!原遺言の見直しをすることによって遺留分の問題を解消したうえに予備的遺言で資産承継者を財産ごとにきちんと指定して老後に憂いがないようにしたわけですね」
原則的に予備的遺言を設定するようにお勧めしている山崎さん。
「遺言書がある場合にも定期的に見直す必要がある」と気づいた北野でした。
(野村)
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