アメリカがWHO脱退を撤回?分担金の引き下げが目的か
1月21日、トランプ米大統領は就任初日にWHO(世界保健機関)からの脱退を通告する大統領令に署名しました。しかし、先日ラスベガスで開かれた集会では「WHOへの拠出額を大幅に引き下げられるのであれば再加盟を検討する」と演説しました。脱退するといった後にすぐさま再加盟を示唆しましたが、目的はお金なのでしょうか?1月29日放送『CBCラジオ #プラス!』では、トランプ大統領がWHOを脱退しようと考えている意図は何か、ジャーナリストの北辻利寿さんが解説しました。聞き手は永岡歩アナウンサーと三浦優奈です。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くWHOってどんな組織?
以前、コロナ禍によく「WHO」という言葉をニュースでよく聞きましたが、どのような機関なのでしょうか。
WHOは国連の調整機関で、世界すべての人の健康を増進し保護するために国どうしが協力しましょうという目的で、1948年(昭和23年)に設立されました。
現在、194の国と地域が加盟し、本部はスイスのジュネーブにあります。
過去の活動で最も注目されたのは天然痘の撲滅で、種痘という予防方法を世界各国に推進し、1977年(昭和52年)に地球上から天然痘がなくなったと宣言しました。
感染症や伝染病対策の他では、高血圧や肥満、ガンなどの疾患に関する国際的なガイドラインを策定しています。
WHOへの不満の理由
そのような重要な組織から脱退すると、アメリカ国民の健康にも良くない影響を及ぼすのではないかと思われますが、脱退を表明した理由はWHOの活動資金です。
活動資金は各国が分担して支払っていますが、外務省の最新の資料によりますと、分担金を世界で最も多く払っているのがアメリカで、年間1億ドルあまり(約155億円)と、全体の20%ほどを占めています。
ただ、トランプ大統領は「アメリカは5億ドル(約775億円)払っている」と言っていますが、これは分担金以外に寄附金も払っているためです。
寄附金は新型コロナなど何かあった時に使われるもので、過去にはエイズウイルスの治療にも使われ、当時は世界全体の75%を出したり、結核では半分以上出しています。
次に分担金を多く出しているのは中国で5,700万ドル(約88億円)で全体の12%ほどですが寄附金は少ないため、寄付金を含めると10位以内にも入っていません。
ちなみに、分担金の3位は日本となっています。
脱退すると日本にも影響が
分担金の金額は、その国の経済規模や過去の経緯などを参考に協議して決められています。
つまり、人口規模によって金額が決められているわけではないため、「なぜアメリカの4倍以上も人口がある中国のほうが負担が少ないのか」と不公平感を募らせているわけです。
さらにコロナ禍の対応でも当時はWHOが中国寄りのスタンスを取りすぎているのではないかという不満もあり、前回トランプ氏が大統領だった時に脱退しました。
脱退して拠出金が減ってしまうとなると、新型コロナなどの感染症に対する世界的な対策に影響が出る恐れがあるため、今はWHOがアメリカに脱退取り下げをお願いしている状況です。
また、アメリカが脱退すると、穴埋めのために日本を含めて分担金が増える可能性があります。
脱退は撤回されるのか?
前述のように、分担金を下げるなら再加盟しても良いとの取引が持ちかけられているものの、金額は中国と同じぐらいと主張しています。
今までの5分の1ぐらいにしてほしいと要求していますが、議会への通告までに1年間の猶予があるため、実際に脱退するとしても来年1月以降です。
この1年の間に果たして脱退は撤回されるのか、世界全体の健康に影響を及ぼす大きな問題です。注目されるところです。
(岡本)