CBC若狭敬一アナ、リクエスト問題で12球団オーナーに噛みつく?

5月31日放送のCBCラジオ『若狭敬一のスポ音』では、パーソナリティの若狭敬一アナウンサーが、「川越選手の幻のホームランで考えるリクエスト制度。現状を知ると見方が変わるかも」と題してリクエスト制度について語りました。NPB元審判の坂井遼太郎さんへの取材を通じ、自分なりに考えた対策を披露します。
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事の発端は5月27日、火曜日、神宮球場で行なわれた、東京ヤクルトスワローズ対中日ドラゴンズ9回戦。
1対0でヤクルトが1点リードの8回表、ワンアウト一塁の場面。
ドラゴンズの川越誠司選手の放った打球がライトポール際へ。一塁塁審はファールの判定。
井上一樹監督がリクエストし、リプレイ検証の結果、判定は覆らず、幻の逆転ツーランとなりました。
リクエストは、監督だけが1試合2回まで要求できます。判定が覆った場合は、回数には含まれません。延長の場合は1回できるようになります。
審判が判定を変更できるのは、映像で検証して明らかに誤審と判断した場合だけ。今回の場合は明確にホームランという映像がある時のみ。
確証が持てない時は最初の判定のままです。リプレイ検証の結果には異議を唱えることができません。
このルールは、リクエスト導入の2018年からほぼ変わっていません。
日米の違い
メジャーリーグでは2014年に「チャレンジ」という名称で導入されました。
ニューヨークにはチャレンジ専用のスタジオがあり、30球団の本拠地に設置されたチャレンジ専用のカメラ映像を一括管理しています。地元の放送局の映像も補完的に入手してジャッジに活用。
検証するのは、ニューヨークのチャレンジ専用スタジオにいるメジャーの現役審判と映像専門スタッフ。現地の審判は関与しません。
一方日本のプロ野球では2018年に「リクエスト」の名で導入されました。地元放送局の映像と館内映像で検証します。
審判はこう決めている
元NPB審判の坂井さんに、日本でのリクエスト検証の仕方を尋ねた若狭。
監督からリクエストが出るとどうなるのでしょうか?
4人の審判の内、判定を下した審判以外の1人がグラウンドに残ります。3人の審判の内、判定を下した審判は公平性を保つために検証には入りません。
検証するのは2人の審判と控えの審判1人の計3人。
例えばベテラン審判の1人が「こりゃアウトだな」とか「ホームランかも」と言ってしまうと、その言葉に若い審判が引っ張られる可能性があるので、ビデオを見ている間は発言を控えるとのこと。
考えがまとまったら、若い審判から順に発言して結論を出します。
意見がまとまらない場合、稀に「維持」か「変更」という言葉を同時に発言して多数決で決めるとか。
これでは不十分
坂井さんはこう答えたです。
坂井さん「アメリカと比べ、やはり日本は不十分です。これはリクエスト導入当時からわかっていたことですが、この環境は改善されないまま今に至っています」
日本で決定的に不十分なのが映像。放送局の映像や館内映像のため、本当に必要な角度の映像がない場合があります。
若狭「なんとなく、我々も野球中継を見てて思いますよね」
メジャーでは専用の映像を、審判の注文に合わせて映像スタッフが停止、スロー再生、コマ送り、拡大などと操作するそうです。
日本の場合は、一方的に流されているスロー映像を見ているだけ。つまり視聴者やファンと同じものを見ているということです。
映像を見ている審判に対しても、坂井さんはこう指摘します。
坂井さん「現地の審判は、試合に入り込んでいて、ワンプレーの重要さをものすごく感じているため、冷静に判断できないリスクがあります。やはり第三者が検証した方がいいと思います」
何台のカメラで追っている?
リクエストで使えるスロー映像は何種類ぐらいあるのでしょうか?
CBCの野球中継スタッフに確認した若狭。
CBCでは、現在地上波を12台のカメラで放送。ブルペンに1台、インタビュールームに1台あるため、グラウンドを撮るカメラは10台。
また、放送用のカメラワークなので、全てのカメラが打球を追っているわけではなく、他のカメラは選手、ファン、ベンチを撮っています。
スタッフ曰く「リクエスト対象プレーの瞬間を撮っているカメラは、多くて3台でしょうね」とのこと。
バンテリンドームナゴヤの館内映像カメラは5台。その中でリクエスト対象プレーを撮っているのは多くて3台だそうです。
バンテリンドームの館内映像でマックス3台。地上波映像でマックス3台。つまり6種類のスロー映像が最大です。
さらに、この中にはリクエストに影響しない角度で撮られているため、検証で使える映像はさらに少なくなります。
若狭のリクエスト改善案
若狭は「各球場にリクエスト専用カメラを複数台導入する」「NPBにリクエスト専用スタジオを新設する」「そこに審判と映像スタッフを常駐させる」「審判の数を増やす」の4つを提案。
若狭「リクエストは、ここまでして初めて導入するべきだったのではないかと私は思います」
坂井さんによると、メジャーリーグでは、チャレンジ導入にあたり、設備と人材確保に数年前から計画を立てて進めていたそうです。
若狭はリクエストを改善する4つの提案をしましたが、これには莫大な資金が必要です。誰が負担するのかという問題があります。
NPBは費用を出さない
改善費用を出す先としてまず浮かぶのがNPB。しかしNPBはそもそも収入源が少ないんだそうです。
チケット代、放映権料、グッズ収入。それらの権利はドラゴンズなどの主催チームにありました。
NPBの完全な主催ゲームはオールスターゲームの2試合と日本シリーズ、マックスで7試合。年間で9試合しかありません。
若狭「これで数十億儲けるなんて無理。そもそも12球団の拠出金で成り立ってるんです。NPBには、そんなにお金がないと僕は思ってるんですよ。あったらとっくにやってる」
じゃあどうするの?
坂井さん「お金もそうですが審判の数を増やすことも必要です」
リクエストに関わる高度な専門知識が身につくためには「10年は必要だ」と続けます。
坂井さん「リクエストの改善は今すぐできるものではないと思います。審判は今の環境で決められたルールで必死にやっています」
幻のホームランの翌日に、ドラゴンズの浅田本部長が抗議書をNPBに持参した報道を見て、若狭は「そうだ、そうだ」と思ったそうです。
しかし今回の取材を通して、心境に変化があったとか。
必要なのは切り換え?
若狭「証拠写真持って行ったって、そんなん現場で見られない。本部長、行先はNPBじゃなくて大島オーナーですよ?」
大島オーナーとはドラゴンズのオーナーです。
ドラゴンズと他の11球団のオーナーで金を出すように口説くべきだと主張しました。さらにファンへも。
若狭「『NPBけしからん。意見箱に延々文句垂れるぞ。審判、お前らプライドと保身ばっかりで何やってんだ』じゃなくて、チケット代上がっても仕方ないよな。みんなでクラウドファンディングやる?って気持ちが変わってもいいんじゃないかと思いました」
リクエスト問題、これからどうなっていくのでしょうか?
(尾関)
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