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「ヨーロッパ最後の独裁者」ベラルーシ・ルカシェンコ大統領、7期目の当選確定

「ヨーロッパ最後の独裁者」ベラルーシ・ルカシェンコ大統領、7期目の当選確定

ベラルーシで大統領選挙が実施され、アレクサンドル・ルカシェンコ現大統領が7期目の当選を果たしました。1月27日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、この選挙が注目を集める理由と、ベラルーシという国の現状について、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が詳しく解説しました。

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長期政権と交通の要衝

ベラルーシが独立して以来、ルカシェンコ氏は約30年にわたり大統領の座に就いています。5年任期で今回7期目の当選を果たしたため、在任期間は35年に達する見込みです。

ルカシェンコ氏は「ヨーロッパ最後の独裁者」とも呼ばれ、ロシアに近い立場を取っていることでも知られています。

ベラルーシは東にロシア、南にウクライナ、西にポーランドなどのEU加盟国、北にバルト三国が存在する重要な場所にあります。

この地理的条件により、ロシアとヨーロッパを結ぶ東西のルート、そして黒海とバルト海を結ぶ南北の陸路における交通の要衝になっています。

前回選挙の混乱と弾圧

前回2020年の大統領選挙では、経済状況の悪化や強権的な統治への不満から、国民の間で「この大統領は長すぎる」「変えなければいけない」という声が高まり、反ルカシェンコ運動が大きく盛り上がりを見せました。

ルカシェンコにより有力な野党候補者が次々と妨害を受ける中、逮捕された候補者の妻であるチハノフスカヤ氏が立候補しました。チハノフスカヤ氏は当初知名度がありませんでしたが、反対派が彼女のもとに結集し、大きな支持を集めることになりました。

世論調査では接戦が予想され、場合によっては勝利も見込まれる状況でした。しかし、選挙管理委員会が大統領の影響下にあったため、ルカシェンコ氏が80%、チハノフスカヤ氏が10%の得票率と発表されました。

これに対して不正選挙を訴える抗議デモが全国で発生。約5万人が拘束される事態となり、チハノフスカヤ氏は身の危険を感じて国外に脱出せざるを得なくなりました。

強制着陸事件と選挙の実態

その後も反体制派への弾圧は続き、2021年には特に注目を集める事件が発生しました。

有名な反政府系ジャーナリストが搭乗していたアイルランドの格安航空会社の旅客機が、ベラルーシの領空付近を通過中、爆破予告があったという口実で戦闘機に誘導され、ベラルーシの空港に強制着陸させられました。着陸後、爆弾捜索を装って機内に入った当局が、このジャーナリストを逮捕・連行しました。

今回の選挙では、前回の教訓から、事前からの言論統制が強化され、反対派の徹底的な排除が行なわれています。形式的な選挙の体裁を整えるため、4人の対立候補が立てられているものの、そのうち3人はルカシェンコ派とされ、残る1人も無名の野党系候補という状況です。

これについてEU諸国は、選挙前から「偽りの選挙」であると批判し、いかなる結果も認めない姿勢を示しています。

したたかな外交戦略

ロシアのウクライナ侵攻に関して、ベラルーシは独特の立場を取っています。ロシア軍の駐留や物資支援は許可する一方で、自国軍の派遣は拒否。この点で北朝鮮とは異なり、実際の戦闘への参加は避けています。

ルカシェンコ大統領は、プーチン大統領との同盟関係を保ちながらも、息子を中国に留学させるなど、中国との関係も重視しています。また、独裁者として知られる現在とは異なり、かつては西側諸国にも接近を試みた時期があり、現在でも、政治犯の一部釈放など配慮する動きを見せています。

このような行動は、「完全なプーチン寄りではない」という態度を欧米に見せつけようという戦略的な判断だと見られており、「もしプーチン大統領が失脚した場合に、共倒れを避けたい」という計算も働いているのではないかと指摘されています。
(minto)
 

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