早めの切り替え必須!「赤字からの事業承継」を成功に導くには
少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。1月22日の放送では、関東にある金型部品製造業の承継事例を北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 経営承継支援 はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。
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今回藤原さんが紹介したのは、関東にある金型部品の製造業の事例。どのような会社だったのでしょう?
藤原「年商は1億円未満で事業として赤字でした。従業員さんは6名で純資産は3000万円未満でした」
北野「ちょっと厳しそうな会社ですね」
そんな時にM&Aを決意した理由はなんでしょう?
藤原「まず後継者がいらっしゃらない。次にタイミング的に資産超過、3000万のあるうちに早めに買い手を見つけようと」
とはいえ北野は、「このような状況だと買い手を見つけるのが大変なのでは?」と懸念。
藤原さんによれば、このような金属部品製造の業者は家族経営の小規模事業者が多く、今回の売り手社長も「金属部品の製造分野は斜陽産業」と発言していたとのこと。
藤原「当初は『買い手は見つからないだろう』と非常にネガティブなところからスタートしました」
買い手が見つからない
売り手社長は条件を出さずに売却を考えたのでしょうか?
藤原「売り手社長は、先ほどの状況(業績悪化)があるにもかかわらず『同業者しか安心できないから異業種はNG』との条件が…」
案の定、金属部品の小規模事業者が多く、M&Aで他社を買う資金力がある大きな会社は見つかりませんでした。藤原さんもマッチングにとても苦労したそうです。
その後、どうなったのでしょう?
藤原「半年が過ぎようとした時に、売り手社長に異業種も買い手候補先として間口を広げるように打診し、了承を得ました。」
北野「よかったですね。買い手さんは見つかったんですか?」
藤原「提案先から3つの業種に絞られました」
1つ目はファンド、 2つ目は異業種ですが売り手会社が取り扱っている金型部品を外注している周辺企業、3つ目は売り手の技術を活用し中国市場で成長させたいという中国企業。
結果、2つ目の周辺企業が買い手候補先となり、交渉が始まりました。
早めの切り替えが功を為す
買い手はどんな企業だったのでしょう?
藤原「関東でプラスチックの成形品等の製造業をされている会社で、年商は2億円超」
買い手会社は、売り手会社が持っている製造技術を応用して新分野に進出することや、環境問題を見据えた新工法の対応策として売り手会社の技術を取り入れたいと考えて手を挙げたそうです。
北野「売り手さんの技術が買われたんですね」
藤原「はい。さらに買い手さんは工場の”5S”(整理、整頓、清掃、清潔、躾)が徹底されていて、工場スタッフが自発的に行動していることを評価されました」
一方、売り手会社からは、「同業者の買い手候補者にこだわっていたが、異業種とのM&Aで相乗効果が高まることを知ってよかった」と喜んでいただけたそうです。
北野「売り手さんは、(藤原さんの)アドバイスを信じて良かったですね。こだわっていたら、成立しなかったかもしれませんからね」
そのまま時間が経てば資産がなくなっていたかもしれません。早めの切り替えができたことに安堵する北野でした。
(野村)