三菱UFJ銀行で貸金庫から窃盗。今後想定される展開は?

1月14日、三菱UFJ銀行で貸金庫から顧客の金塊を盗んだとして、元行員の女性が窃盗容疑で逮捕されました。2024年10月までの4年半、60人以上が被害に遭い、被害総額は現金や金塊など合計17億円以上にのぼると見られています。大手金融機関内で起こった衝撃的な巨額窃盗事件ですが、被害者への補償など、今後どのような展開となるのでしょうか?21日放送の『CBCラジオ #プラス!』「ニュースにプラス!」のコーナーでは、銀行員の窃盗について、アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美先生に、光山雄一朗アナウンサーが尋ねます。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く貸金庫の鍵の不正利用
今回、どんな事件だったのでしょうか?
正木「三菱UFJ銀行の銀行員が、銀行が保管している貸金庫の予備の鍵を不正利用して無断で顧客の貸金庫を開け、中の現金、金塊、貴金属などを取り出した疑いがあるという事件です。
まだ一部報道されているところしか状況はわからないですが、予備の鍵の管理責任者であったということ、銀行内での鍵の管理体制に不備があったということで、かなり長期間かつ巨額の被害をうんでおり、銀行の信頼が大きく損ねられています。
銀行は会見で、予備の鍵は本部で一括管理するとか、貸金庫内の防犯カメラを増設するといったことを検討していると言っていました」
窃盗と横領の違い
今回は容疑者が窃盗の罪で逮捕されました。これはどんな罪になりますか?
正木「窃盗罪は、自分以外の他人が事実上支配、管理をしているものを自分の支配下に入れてしまうものです。法定刑が10年以下の懲役または50万円以下の罰金となります」
いわゆる「横領」とはどう違うのでしょうか。
正木「一番大きな違いは、誰が支配しているものなのかです。窃盗罪は自分以外の人が支配しているものを盗ることです。横領は自分が支配している他人のもの、預かっているものを自分のものにしてしまうことです。管理は自分にあります」
今回は銀行以外の人が支配するもの、ということになるんですね?
正木「貸金庫は銀行にありますが、中のものは貸金庫を借りている人が管理をしている、事実上支配をしていて、銀行が支配しているものではないと評価されています。なので、他人の支配しているものを勝手に取ってしまったので、窃盗罪に該当します」
9億円横領事件
過去にこういうことはあったんですか?
正木「めちゃくちゃあります。ただ金額がこんなに大きいものとか、貸金庫に手を出すということはあまり聞きません。
顧客をだまして取ってしまったということは、近年もたくさんあり、一番巨額なのは昭和40年代の滋賀銀行で9億円横領したというものです。現在の価値で20億円くらいと言われています。
横領して交際相手に貢いでいました。これは有罪になっていて、行員に関しては懲役8年、お金を横領させていた男に関しては懲役10年という判決がくだっています。これも銀行の確認体制が整っていれば、もっと早く不正が発見できたと指摘されています」
誰が補償するか
こうした事件の場合、被害者の補償はどうなりますか?
正木「基本的には銀行がすると思います。行員本人に賠償するだけのお金がないと思いますので。
法律的には従業員が仕事に関して誰かに損害を与えたときには、会社も賠償責任を負うという使用者責任という規定があります。仕事の範囲に見えるような行為で損害を与えたとなると、会社も使用者責任が認められると思います。
過去にも被害額の全額について銀行が補償を行ない、銀行が補償した分に関して加害者に求償を行なうとなっていますので、基本的には銀行が対応してくれると思います」
どんな影響を与えたか
この事件は今後どうなっていくと思いますか?
正木「事件そのものについていえば、貸金庫は借りている人しか、何が入っているかわからないです。どこまで犯罪が立証できるのか?
ただ逮捕容疑に関しては、容疑者が自分でばれないように写真を撮っていたようなので、ある程度の立証は可能かと思います。
どこまで被害が立証できるのかは、犯罪の面でも銀行側の補償の面でも、一定程度問題になると思います。
あとは銀行の管理体制が問題だったということで、どのような形で改善がされるのか。貸金庫の業務に関してどうするかは、貸金庫をやるかどうかについて、やるならどうやるかについて他の銀行にも影響が出ています」
信用が第一の銀行で、巨額の盗難が簡単に行なわれたことに大きな衝撃を受けた事件でした。
(みず)
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