事業承継をする上での「良縁」とは
少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。1月12日の放送では都内のシステム開発会社の承継事例を北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 経営承継支援 はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くシステム開発会社の現状は?
今回藤原さんが紹介するのは、都内のシステム開発会社の継承事例。どのような会社だったのでしょう?
藤原「年商は1.5億円ほどで、社長さんの年齢は60代半ば。毎年、堅調に利益を出している優良会社さんでした」
「システム開発会社」とはよく耳にしますが、どのような状況になっているのか北野が尋ねます。
藤原「最近は、とても離職率の高い業界なんです」
北野「転職率が高いと聞いたことがある」
ただ、今回の事例の会社は、従業員をとても大事にする会社で離職率が低いのが特徴でした。
売り手にとっての優良会社とは
そんな優良会社がなぜM&Aをすることにしたのでしょう?
藤原「従業員さんにとっては働きやすい環境だったんですが、社長さんが自らプロジェクトに入って動くことが多く、その上で単独での成長に限界を感じていたと」
さらに、この会社は中小企業で知名度がなかったため、新しい従業員の採用が困難だということも決断した理由でした。
買い手はすぐに見つかったのでしょうか?
藤原「はい。買い手さんは、年商100億円超の上場企業のシステム開発会社さん」
同業かつ今までM&Aで20社以上の買収実績があったそうです。
北野「年商100億!すごい買い手が見つかりましたね」
あまりの年商の額に「すぐ決まったのでは?」と推測する北野。藤原さんも「決まりましたと」と回答。
後継者問題の解決
さらに、この買い手会社には良いところがあると続けます。
藤原「買い手さんは上場企業で、過去にM&Aが成立した後も、売り手企業の社長さんと従業員さんを大切にしていて、関係も良好なんです」
この買い手会社は、以前後継者がいない会社を引き継いだ際、売り手の従業員に経営能力があることを見抜き、承継後に社長に抜擢したこともあったそう。
北野「自分が乗り込んで、乗っ取るとかではなくて?」
藤原「今回の会社も従業員が経営能力はあったので、社長にしたいと考えましたが、その従業員に株を買い取るお金がなかったので、泣く泣く事業を引き継いだ」
でも今回のM&Aで、その従業員は社長に抜擢され活躍する機会を得たとのこと。
北野「それは売り手さんも安心されるでしょうね」
事業承継をする上での「良縁」とは
藤原さんは、今回のM&Aによって、売り手会社にとって二つの良いことがあったと言います。
ひとつは、このように従業員にチャンスを与えてくれる上場企業のグループに入れたこと。
もうひとつは、会社の成長だけではなく、自身のキャリア形成をしていきやすい環境になったこと。
藤原「どちらも実現されました」
売り手会社の従業員たちも喜んでいたそうです。
北野「売り手、買い手の仲を持つのも仲介会社の腕の見せどころですよね」
藤原「M&A仲介会社の役割は、ただお相手をくっつけることではなくて、お互い良縁になるように常に売り手と買い手に適切に情報を伝えることなんです」
M&Aをする時に「一方的にとか、上から」とかではなく、お互いに「良縁」にするということが大事だと納得の北野でした。