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日本製鉄がアメリカ大統領を訴える背景とは

日本製鉄がアメリカ大統領を訴える背景とは

日本製鉄によるUSスチールの買収計画に対し、米バイデン大統領から中止命令が出されている件が連日大きく報道されています。日本製鉄の橋本英二会長兼CEOは7日、本社で提訴に踏み切ったことを発表。バイデン大統領の違法な政治介入で審査が適正にされず、命令は到底受け入れられないと語りました。日本企業が大統領を訴えるという前代未聞の事態ですが、なぜここまで買収に力を入れているのでしょうか?1月8日放送『CBCラジオ #プラス!』では日本製鉄の買収問題について、ジャーナリストの北辻利寿さんが解説しました。聞き手は永岡歩アナウンサーと三浦優奈です。

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国家同士の争い

日本製鉄はバイデン大統領だけでなく、さらに買収を違法に妨害しているとして、アメリカ鉄鋼大手クリーブランド・クリフスと全米鉄鋼労働組合会長に対し、妨害の差し止め命令や損害賠償を求めています。

クリフス社の2023年生産量は世界22位で、USスチール社は24位。
クリフス社はUSスチールの買収争いについて4位の日本製鉄に負けたのですが、負けた後も買収に反対し続けているという事情があります。

一方、大統領が中止命令を出した理由のひとつとして挙げたのは安全保障上の問題です。
そうすると、日米安保条約による同盟の意味が改めて問われます。

先日岩屋毅外務大臣は、ブリンケン国務長官と会談し「残念」と語りましたが、北辻さんは「もっと強い主張をしても良かったのかな」と苦言を呈します。

どうしても買収したい理由

また、北辻さんは「今回の提訴は時間との戦いもある」と語りました。

もともと買収の目標は今年3月末でしたが、裁判を考えると全く間に合いません。
時間切れで買収断念という可能性も出てきますが、一方で大統領も再来週には交代。
この件について石破総理がトランプ氏とどう向き合っていくのかが問われます。

日本製鉄としては、2023年に2.2兆円で買収することはすでに合意済みで、後には引けない状況です。
かつては生産量世界一を誇った日本製鉄は現在4位。1位の中国企業と比較すると、生産量は3分の1以下にまで下がっています。

上位10社のうち6社が中国企業で、日本国内での需要が先細ってきている今、海外に活路を見い出さなければ衰退の一途をたどる、そのために海外企業を買収することで規模を拡大する必要があるのです。

買収に反対せざるを得ない事情

日本製鉄は従業員の削減や施設の閉鎖、生産の海外移転は行なわない、さらには雇用創出に向けて4千億円以上の追加投資を行なうことを表明するなど、USスチールに対してかなりの好条件を出しているにもかかわらず、全米鉄鋼労働組合は買収に反対。

組合は選挙で大きな力を持っていて、民主党に付いていたために組合の意向を無視することはできません。

さらに共和党のトランプ氏が先に「USスチールはアメリカで守ろう」と言い出してしまったために、バイデン大統領も「こちらも守る」と言わざるを得ない状況になってしまいました。
今後の状勢が注目されます。
(岡本)
 

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