あの佐野史郎さんが編集!『水木しげる厳選集 虚』
この夏、俳優でミュージシャンの佐野史郎さんが編集・解説した『水木しげる厳選集 虚』(ちくま文庫)が発売されました。10月6日放送の『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』(CBCラジオ)では、佐野史郎ウォッチャーを自認する小堀勝啓がこの書籍を紹介します。
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小堀「実にユニークな一冊だと思って、早速さっそく書店で手に取ってしまいました」
『水木しげる厳選集 虚』には、妖怪漫画の第一人者水木しげるさんの短編作品から、厳選した19本が掲載されているそうです。
編者と解説は俳優の佐野史郎さん。
小堀「近年はさらに磨きがかかって俳優ならぬ怪優。怪物的な俳優として独自の境地を開いてらっしゃいます」
唐十郎さん率いる状況劇場に所属していた1980年代から佐野史郎さんに注目していたという小堀。
主演作『夢見るように眠りたい』(1986年 林海象監督)で感銘を受けて以来、佐野さんの大ファンになったそうです。
また佐野さんは、伝説のバンド「はっぴいえんど」研究をはじめとする往年のフォーク・ロックにも造詣が深く、自身でもバンドを率いて活動するミュージシャンでもあります。
マニアならではのセレクション
また怪談や妖怪、怪獣などのマニアとしても知られる佐野史郎さん。
『水木しげる厳選集 虚』ではどんな話を選んだのでしょうか?
巻頭に選んだ作品は「約束」。
ある夜、主人公の漫画家の元を幼馴染の親友が訪れます。
5年ぶりの再会となるこの親友は、幼い頃に一緒に漫画家を目指した仲。お互いの腕に傷を付けて「もしどちらかが先に死んだら、相手の元に現れよう」と約束をしていたのでした。
親友は食事をとると漫画家の布団に入って大いびきで眠ってしまいます。
翌朝、布団を剥いでみると、親友の姿はありません。
親友の親族に連絡を取ってみると、実はその時間に親友が亡くなっていたという話です。
この「約束」は、江戸時代末期の怪奇作家・上田秋成の『雨月物語』の一編「菊花の約」を下敷きにした作品で、怪談で知られる小泉八雲も書いていました。
こうしたモチーフのある作品は他にも収録されています。
3つの願いが叶うという石が出てくる「魔石」という一編は、これはイギリスの作家ジェイコブズの「猿の手」の水木しげる版。ちなみに「猿の手」は怪奇小説の古典です。
他にもカッパの頭の皿を取る仕事の人が出てくる民話的な話や、「剣豪とぼたもち」という時代劇など幅広いストーリーの短編が収録されており、漫画のモチーフがわかるとさらに楽しめそうです。
秋の夜長にぜひ
編集者の佐野さんによると、作者の水木さんは日本やアジアの妖怪だけでなく、アメリカの怪奇作家ラヴクラフトやSF作家ブラッドベリなどのモダンホラーの研究もしていたとか。
小堀は、佐野史郎さんがまだ隠し玉も持っていて、「水木しげる厳選集」をもう一冊出すのかもしれないと期待します。
小堀「怖いというより不思議な読後感の残る不条理ストーリーがいっぱいです。秋の夜長、ゲゲゲの鬼太郎以外の水木しげるワールドを覗いてみてはいかがでしょうか?あなたもその沼にどっぷりとハマってしまうに違いありません」
この『水木しげる厳選集』には、『テルマエ・ロマエ』などで知られる漫画家のヤマザキマリさんが編者を務めた『水木しげる厳選集 異』もあります。
2冊とも読めば、あなたはもう沼から抜けられません。
(尾関)