下水でできる汚泥を肥料に変える!名古屋市の新しい取り組み
読売新聞の記事によりますと、名古屋市上下水道局は下水処理で出る汚泥を乾燥させて肥料を作り、農林水産省の新規格に登録しました。初代尾張藩主らにならって「循かん大なごん」と命名し、販売を目指しています。そこで9月21日放送『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では、名古屋市上下水道局技術本部計画部下水道計画課の藤村達也さんに、肥料に変える目的などを尋ねました。聞き手は大石邦彦アナウンサーです。
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家庭から排出される下水を処理する過程で、下水汚泥が発生します。
下水汚泥には植物の育生に欠かせない栄養素、リンや窒素が多く含まれますが、日本ではこれら肥料の主要成分を輸入に依存しています。
国際情勢や為替変動により近年では輸入価格の高騰などが起こっているため、安定供給が課題となっています。
そのような状況で昨年、国から下水汚泥を利用することにより、肥料の国産化による安定供給を図っていこうという方針が示されました。
以前、大石が農家に取材した際、「肥料が高くなった、手に入りにくくなった」という声を聞いていて、実際に大きな問題となっているようです。
これまでは下水汚泥は焼却して灰にしたり、乾燥させて燃料にしたりという処理の仕方でしたが、国の方針を受けて名古屋市上下水道局下水道計画課は、国内初の「菌体りん酸肥料」という規格で登録。
国内にある貴重な資源として下水汚泥の利用先を進めることで、循環型の社会作りに貢献していきたいと語っています。
下水の汚泥には何が含まれている?
家庭から排出される下水は、微生物で分解してきれいにし、微生物を沈めてうわずみを川に戻しています。
この時、沈ませた方の微生物や下水に含まれている小さな固形物のかたまりが下水汚泥となっており、その中にリンや窒素といった肥料の原料となる成分も含まれています。
懸念されるのは有害な化学物質も含まれているのではないかということ。肥料に転用しても安全なのでしょうか?
藤村さん「一定程度は残念ながら入っているんですけれども、有害成分につきましては規格の方で制限されている基準値というものがございまして、今回登録するにあたって分析をいたしまして、すべての項目で基準値を下回っていることを確認しております。
加えて、今後肥料として製造・流通させていく際には、すべての製造ロットごとに分析を行い、基準を下回ったもののみを出荷し、万全を機したいと考えております」
「菌体りん酸肥料」とは?
前述のように「循かん大なごん」は「菌体りん酸肥料」という規格で登録されます。この「菌体りん酸肥料」とはどのような肥料なのでしょうか?
藤村さん「肥料を生産するのに際して、肥料法というもので登録が義務づけられておりまして、さまざまな規格が用意されております。
この度、昨年10月に下水汚泥の利用を促進していこうという観点から、新たに菌体りん酸肥料という規格が創設されました。
これまでも汚泥肥料という規格はあったんですけれども、成分の保証ができない、他の肥料と混ぜてはダメですよといったデメリットがありました。
今回新たに作られた菌体りん酸肥料という規格は、肥料の成分が保証できることと、他の肥料と混ぜても良いですというところが大きな特徴で、非常に使い勝手が良い規格ではないかと考えております」
大石が農家から聞いた話では「新しい肥料を使うのは勇気がいる」そうで、その点で既存の肥料と合わせて使えるというのは大きなメリットのようです。
追加投資は不要
名古屋市ではすでに燃料として1日50t製造していて、そのうち7t程度を肥料としてメーカー向けに出荷したいとのことです。
肥料生産のために新たに生産施設を作る必要がないというのも良い点です。
まだどの肥料メーカーに販売するのかは決まっておらず価格も未定ですが、輸入肥料よりもかなり安く販売したいと考えているとのことです。
この取り組みが名古屋で定着し、他の自治体でも同様の取り組みが増えれば、名古屋発祥で循環型の肥料生産が広まるかもしれません。
(岡本)