『ブラックペアンシリーズ』最新刊はドラマに影響されている!?
水曜日の「CBCラジオ #プラス!」では書評家・大矢博子さんが小説などおすすめの新刊を紹介します。9月11日の放送でピックアップしたのは海堂尊さんの『ブラックペアンシリーズ』(講談社)。15日に最終回を迎えるドラマ『ブラックペアン2』(TBSテレビ)の原作小説となるこの作品、展開がドラマ版と全く異なるそうです。
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2018年にシーズン1となるドラマ『ブラックペアン』(TBSテレビ)が放送されました。
病院の心臓外科を舞台に二宮和也さん演じる渡海征司郎が多くの患者を救っていく物語です。
そして現在放送中のシーズン2は、前作とは異なる天才心臓外科医・天城雪彦が、世界で彼しかできない施術技術を提げて日本の医療を引っ掻きまわします。
このドラマ2作品とも海堂さんの小説が原作ですが、原作小説とドラマの内容が全く違うそうです。
シーズン1の原作は『ブラックぺアン1988』。
舞台は1988年消化器外科ですが、ドラマでは現代の心臓外科に変えているので、作中に出てくる医療技術がドラマと原作で異なります。
そして最も大きな違いは主人公です。原作での主人公は、ドラマで小泉孝太郎さんが演じる高階権太。
大矢「ドラマでは小物感がありますけど(笑)。原作ではめっちゃかっこいい!」
原作では脇役の渡海をドラマでは主人公にし、作り直しています。
また、放送2話ほどで原作の話をほぼ使用しており、それ以降はオリジナル脚本です。
続いてシーズン2の原作は『ブレイズメス1990』『スリジエセンター1991』の2作品。
小説は1990年から1991年が舞台ですが、ドラマではシーズン1同様現代に変えています。
原作の主人公は天城で、こちらはドラマも小説も同じ。
設定に大きな違いはありませんが、個別の患者のエピソードは大部分がドラマオリジナルです。
原作者もファンになるほど!
実写化した作品が原作と大きく異なると、原作ファンの怒りを買うこともありますが、大矢さんによると、『ブラックペアン』に関しては叩かれていないとか。
それどころか、原作者の海堂さんがドラマを高く評価しているということです。
理由のひとつは、海堂さんが最も大事にしているテーマをドラマでもしっかりと描いていること。
「程度の差こそあれ、医者というのは懸命に患者を救おうとしている」というスピリットを受け継いでドラマが制作されています。
ドラマの大部分がオリジナル脚本のため、原作者自身も先の展開が読めなくて毎週ドキドキしているんだとか。
原作者までも惹きつけてしまうほどの魅力がドラマにはあります。
最終回、原作通りに行くか?
ドラマ版はオリジナル展開が多いですが、大矢さんによると、終盤になると原作に寄せてくるんだとか。
シーズン2も終盤のエピソードは原作に出てきたそうです。
シーズン2の原作である『スリジエセンター1991』はかなり衝撃的な結末で、大矢さん曰く「その通りにドラマ化されると悲鳴をあげるのではないか」というほどの衝撃。
「原作通りに行くのか、変えてくるのか、原作既読済みが最も注目しているところ」と、大矢さんは原作と見比べてドラマも楽しんでほしい思いを語りました。
最新刊はドラマリスペクト!?
原作3冊はシーズン1放送前に書かれたものです。
ドラマ版では関係性のある渡海と天城は、原作では面識はない設定でした。
しかし、今年7月のドラマ放送開始に合わせて出版されたシリーズ最新刊『プラチナハーケン1980』は、これまでのシリーズよりもさらに前の物語であり、ここで初めて渡海と天城は知り合いだったと明かされました。
最新刊はドラマが決まってから書いた小説です。
大矢「海堂さんの、ドラマに対するリスペクトとドラマのファンに対するサービス、みたいな感じの展開」
ドラマ版と異なる展開と、ドラマ版に影響を受けて作られた『ブラックペアンシリーズ』。
4冊セットで読んでほしい作品です。
(ランチョンマット先輩)