どこまでできる?インドネシアの首都移転
先月、名古屋の東山動植物園にやってきて話題のコモドオオトカゲ「タロウ」。タロウはシンガポールの動物園からやってきましたが、もともとコモドオオトカゲが生息しているのはインドネシアです。そのインドネシアが、現在首都移転で大きな話題となっています。9月3日放送『つボイノリオの聞けば聞くほど』(CBCラジオ)では、インドネシアの首都移転について小高直子アナウンサーが説明しました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くコモドオオトカゲの「コモド」とは?
コモドオオトカゲの「コモド」ですが、これはインドネシアの小スンダ列島にあるコモド島などの島に生息しているため。
コモド島の面積は約390平方kmで、愛知県岡崎市ぐらいの広さです。
人口は2千人ほどで、1991年にユネスコの世界自然遺産に登録されたコモド国立公園の一部。
周囲には白い砂浜や珊瑚礁が広がる美しい海があり、野生のコモドオオトカゲに会えるかもしれないということで、観光地としても注目されています。
ちなみに別名である「コモドドラゴン」の名前は、20世紀の初めにヨーロッパ人が訪れた際、大自然の中で遭遇した人が、「恐竜の生き残りがいる!」と思ったことが由来だそうです。
インドネシアってどんな国?
インドネシア全体に目を向けると、約1万3千500にも及ぶ島から成り、面積は約192万平方kmと日本の約5倍。
国の最も西にある縦長の島がスマトラ島、その隣は首都ジャカルタのあるジャワ島、さらにその隣はリゾート地として人気のバリ島、さらに隣がコモド島などの小さな島々が連なる小スンダ列島があります。
そして、これらの北側には東からパプア、マルク、スラウェシと続き、ジャワ島の北には現在注目の「カリマンタン島」があります。
カリマンタン島は英語圏やマレーシアでは「ボルネオ島」と呼ばれ、こちらの方が耳なじみのある方も多いでしょう。
カリマンタン島の南側3分の2ほどはインドネシアですが、北側の3分の1はマレーシアとブルネイ王国の領土です。
約20年以内に首都を移転
先程、小高がカリマンタン島を「今注目の」と紹介したのは、ここに首都が移転される計画があるためです。
2022年1月、インドネシア政府は首都をジャワ島のジャカルタから、カリマンタン島東部のヌサンタラに移転すると発表しました。
現在、インドネシアの人口は約2億8千万人と世界4位の多さですが、そのうち半数以上の1億5千万人がジャワ島で暮らしていて、首都の周りには3千万人もの人々が集中しています。
狭い場所に人口が集中しているため、交通渋滞や排気汚染が深刻な問題であることや、ジャワ島とそれ以外の島との経済的格差が拡大している問題があります。
さらに地下水をくみ上げ続けた結果、毎年地盤沈下が進んでいることに加えて温暖化上による海面上昇のため、首都ジャカルタが水没の危機に直面しているとか。
首都移転を決めた理由
これらの理由により首都の移転が決定しましたが、カリマンタン島の東部が選ばれた理由は、国全体の中心に近い位置であること、ジャワ島の近くを通る断層から離れているため、地震のリスクが比較的低いことなどがあるとのことです。
首都移転は約4兆5千億円かけて2045年までに完了する計画ですが、経費の2割は国で賄うものの、残りの8割は海外からの投資を見込んでいます。
まずは政府機能移転から進めていて、現在は大統領府や宮殿、省庁の建物はほぼ完成しているとのこと。
先月12日にはヌサンタラで初となる閣議が開かれ、17日にはインドネシア最大の祝日、独立記念日の式典をジャカルタとヌサンタラの両方で行ったそうです。
首都移転にさまざまな問題が
ここまでの話から順調に首都移転が進んでいると思いきや、実は問題が山積みです。
国が負担する2割の経費はそろそろ底を突きそうですが、頼みの民間や海外からの資金調達が目標額の2割に届いていない状況。
首都移転計画はジョコ大統領肝いりの計画ですが、今年の12月に退任することが決まっていて、次の大統領とされているプラボウォ氏は前任者ほどの熱意を持って計画を進めるかどうかは未知数。
さらに、昨年行われた地元メディアによる世論調査でも約6割の人が移転に反対しています。
理由として財政の問題や、オランウータンなどの多くの希少生物が棲む森林破壊への懸念などが挙げられています。
先住民が立ち退きを求められることもあり、国から補助金がもらえるものの、近くの土地は地価が10倍近くに跳ね上がり引越し先が決まらない、といった問題も発生しているようです。
一方、日本では
一方で、これまでブラジルやオーストラリアでは実際に首都移転が行われていますが、ヌサンタラという名前が定着するには時間がかかるかもしれません。
ちなみに、首都移転については日本も他人事ではありません。
東京とその周辺に人口やビジネス、行政機能などが一極集中していることでさまざまな問題が発生していて、時折首都移転の話が出るものの、具体的な話はあまり出ていません。
最近では大きな災害も発生しているため、いま一度考える時期に来ているのかもしれません。
(岡本)