常に天井から水が滴り落ちる「雨降隧道」 ここでしか見ることができない特別な廃道へ 山梨県の廃道を巡る旅
ミキの昴生と亜生がMCを務める、全国の道に特化したバラエティ番組『道との遭遇』。今回は、全国800か所以上の道を巡ってきた道マニア歴19年の石井あつこさんが、山梨県にある“廃道”を巡ります。※廃道は危険ですので、むやみに立ち入らないでください。
隧道に雨が降り注ぐ!?水が滴る特異な「雨降隧道」
石井さんと一緒に旅をするのは、一般の男性。2人が訪れたのは、山梨県身延町(みのぶちょう)。
(道マニア・石井あつこさん)
「駿州往還(すんしゅうおうかん)から山間部に至る小さな生活道が、他では見ない変わった状況になっているのでぜひ見てほしい」
山梨県の甲府から身延町を経由して静岡県の興津(おきつ)までをつなぐ駿州往還は、駿河湾から甲府へ海産物や塩などを運ぶ重要な物流ルートでした。
石井さんが「ここでしか見ることができない」と言う特別な廃道を目指して、2人は県道421号へ。
間遠(まとう)トンネルの手前を分岐し、山へと続く道がかつて使われていた道。一見では分からないものの、山へ入っていくとかろうじて細く平らにならした路盤を感じます。
(道マニア・石井あつこさん)
「この道は、間遠から矢細工(やさいく)を繋ぐ町道。今でも地形図には点線(徒歩道)で記載されている」
急なカーブもあるほど険しい山道ですが、「昭和15年前後に造られた車道」と石井さん。矢細工の集落から切石という町に出る近道だったため、「地元の人は、切石に行くのにこの道を軽トラックで飛ばしていた」と言います。
歩くこと1時間半。見えてきたのは、昭和15年竣工の「雨降(あめふり)隧道」。崖の際に穿たれ、水がポタポタと滴っています。
(道マニア・石井あつこさん)
「車道化した際に越えられなかった最難関のところに、一本だけ隧道が造られた。水が通りやすい地層に隧道が掘られたため、山の湧き水や雨水が常に滴り落ちている」
この隧道にだけ雨が降り注いでいるような状態で、素掘りの隧道内には水がたまっています。
廃道に佇む“謎の小屋”を調査
続いて2人は、石井さんが見つけた絵葉書の隧道を目指すことに。
(道マニア・石井あつこさん)
「絵葉書に、岩崎の岩隧道、富士川と書いてある。同じ隧道の別ポジションの写真もあり、隧道内から見た景色には富士山が写っていた」
富士山が見え、かつ富士川沿いの隧道を探して、「おそらく西嶋にある『矢崎隧道』だろう」と目星をつけて過去に訪れたことがあるそう。
以前は調査しきれなったため、今回はこの隧道を徹底的に調べたいとのこと。
富士川に架かる月見橋を過ぎると、県道403号にかつて「矢崎隧道」だった現役のトンネルが現れます。絵葉書と見比べると、外景や隧道内からの景色が酷似しており、「このトンネルが、絵葉書にある『岩隧道』だと思う」と石井さん。
隧道の周りを囲うように存在する旧道は、水利組合が管理しているとのことでしたが、今回は特別に許可を得て中に入れてもらえることに。
旧道の入口付近には隧道の岸壁にくっつくように建てられた資材置き場用の倉庫があり、倉庫の中に入るとむき出しの岸壁が。穴が掘られた痕跡も残っています。
穴の正体について地元の方に話を伺ったところ、地元の人達で隧道を掘り進めていたときに、現在の隧道の計画が具体化し県から予算がおりたため、途中で掘るのをやめたのではないかとのこと。
「矢崎隧道」の竣工は大正3年のため、小屋の中の穴は明治時代に掘られた痕跡のよう。その後昭和30年代に、穴の広さを活用した資材置き場を造ったそう。
絵葉書に写る今はなき建物は、お酒やお団子なども楽しめる茶屋だったそうで、昭和35年頃まで営業していたといいます。
一枚の絵葉書から、歩んできた歴史を知ることができました。
12月3日(火)午後11時56分放送 CBCテレビ「道との遭遇」より