肥満が喘息につながる!?…3つの新しい脅威!秋の「呼吸器トラブル」原因と対策
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
ドクターは、順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器内科 准教授 医学博士 原田紀宏先生です。
今回のテーマは「〜新たな原因となる脅威が!〜秋の呼吸器トラブル」
秋になると増える呼吸器のトラブル。その主な原因は「季節の変わり目による気温・湿度・気圧の変化」「夏に増えたダニの死骸などによるアレルギー」「秋から流行するウイルス」などがあります。そして、他にも呼吸器のトラブルにつながる新しい脅威が3つあるそうです。そこで今回は、近年患者が増えている3つの呼吸器トラブルの原因や対策などを専門医に教えてもらいました。
秋の呼吸器トラブルの主な原因
<原因(1)気温・気圧の変化>
季節の変わり目は、体調を崩しやすい時期。その理由の1つが気温や気圧の変化だそうです。秋は気温の変化が大きく、天候不順も多くなるので気圧の変化も大きくなります。そういった微細な変化を感じて体調が悪くなると、呼吸器トラブルにもつながってしまうそうです。
<原因(2)アレルギー>
秋は、夏の間に増殖したダニが寒くなり始めると死んでいきます。ダニの死骸が砕けて空気中を舞い、それを吸い込む事で咳などのアレルギー症状が出るそうです。
<原因(3)ウイルス・細菌>
秋に呼吸器トラブルが増える3つ目の原因は、インフルエンザなどのウイルス性の感染症。細菌によるマイコプラズマ肺炎もこの夏流行し、これからの時期も警戒されているそうです。
新たな脅威!秋の呼吸器トラブル(1)「異常気象喘息」
<今喘息でない人も要注意!「異常気象喘息」>
大人の喘息患者の7割は、成人になってから喘息を発症しており、そのきっかけの1つが異常気象だそうです。異常気象による大雨は増加傾向にあり、40年前と比べて頻度は約1.7倍。秋の1日の気温差も近年広がっています。こうした異常気象は喘息を悪化させるだけでなく、新たに発症させる恐れもあるそうです。
<異常気象が喘息につながる原因は?>
喘息患者は、気管支の神経が過敏になっています。詳しい事は分かっていないそうですが、人体が感じた温度や気圧の微妙な変化が過敏になった気管支の神経に影響を与え、
喘息が悪化すると考えられているそうです。
<秋雨によって増える喘息の原因(1)「オービクル」>
異常気象だけでなく、秋雨にも喘息につながる原因があるそうです。その1つが、花粉に付着している「オービクル」と呼ばれる小さな粒子。オービクルが花粉から離れて吸入される事によって、肺の奥に入り込み喘息が悪化する事が知られているそうです。花粉本体は粒子が大きく肺の中には入りませんが、オービクルは非常に小さいため、肺の奥にまで侵入してしまうのだとか。オービクルが花粉から剥がれてしまう原因が、秋に多く降る雨。花粉が雨にうたれて地面に溜まり、車や人に踏まれる事でオービクルが剥がれてしまいます。そして、晴れて舞い上がったオービクルを吸入してしまうと考えられているそうです。
<秋雨によって増える喘息の原因(2)「花粉の破裂」>
2つ目の原因は、花粉の破裂。雨で花粉が水分を含むと、膨張して破裂します。飛び出してきた細胞がさらに細かな粒子となり、それが気管支まで届いて喘息症状を起こすと考えられているそうです。
<花粉の対策>
先生によると、吸い込んでしまう花粉に対してはマスクをして吸い込まないようにする事が大事だそうです。そして、外出から帰ってきた時や洗濯物を取り込む時は、しっかりはたいて花粉を落としましょう。さらに、掃除と換気をこまめに行い家の中に入った花粉を取り除く事も大事だそうです。
新たな脅威!秋の呼吸器トラブル(2)「肥満喘息」
<食欲の秋に要注意「肥満喘息」>
身長と体重から割り出す数値「BMI」の日本人平均は男性23.8、女性22.5ですが、日本人22,962人を対象にした調査では、男女ともにBMI25.0以上になると喘息の有病率が増加すると報告されているそうです。
<肥満が喘息を引き起こす原因は?>
肥満になると、「炎症性サイトカイン」が身体の中に作られると考えられているそうです。炎症性サイトカインは、血管やリンパ球など様々な細胞から作られる物質でウイルスなどが身体に侵入した際に、免疫細胞を活性化させて撃退し身体を守る重要な働きをします。ところが、肥満になると脂肪細胞から炎症性サイトカインが過剰に分泌されてしまうのだとか。すると、免疫細胞が正常な細胞をも攻撃してしまい、様々な臓器に炎症が発生。それが気道にも影響することで、喘息を悪化させてしまうそうです。
<他にもある!肥満が喘息につながる理由>
炎症性サイトカイン以外にも、肥満が喘息につながる理由があるそうです。呼吸をする時は、肺の下についている横隔膜を下げて肺の空間を広げています。ところが、肥満になると脂肪のせいで横隔膜が下がりにくくなり、呼吸がしにくくなってしまうのだとか。そのため、呼吸器が弱い喘息患者は、症状をより強く感じやすくなってしまうそうです。
新たな脅威!秋の呼吸器トラブル(3)肺NTM症
<「肺NTM症」とは?>
肺NTM症とは、正式名「肺非結核性抗酸菌症」と言い、肺に「非結核性抗酸菌」が感染した状態の事。先生によると、この菌が肺に棲みついている人がいて、ひどい肺炎などを起こす事なく菌と共存している状況だそうです。しかし、免疫力が低下すると、菌が増殖し咳や痰が出るのだとか。さらに、ひどい場合は肺が壊されて血痰が出たり喀血が起こったりする事もあるそうです。
<「非結核性抗酸菌」とは?>
非結核性抗酸菌は、土や水などの環境によくいる菌で結核菌と同じ抗酸菌のグループだそうです。結核との大きな違いは、人から人には感染しないという事。健康なら大丈夫ですが、免疫力が落ちると感染するリスクも上がってしまうため注意が必要だそうです。
<世界で急増中!ジワジワ蝕む「肺NTM症」>
結核は患者数が減っている一方、肺NTM症の患者数は増加。2007年から10年で約3.4倍。24,000人以上になると推測されているそうです。数年かけてジワジワ進行するため、
ひどくなるまでは症状が出ず、X線検査では見つからない事もあるので病気の存在に気づかないケースも多いのだとか。詳しい事は分かっていないそうですが、中高年の女性でBMIが18.5未満の痩せた人ほどかかりやすいそうです。
<家庭で気を付けるべきは「お風呂場」>
先生によると、非結核性抗酸菌はカビがいそうな場所に一緒にいると考えられるそうです。そのため、家庭で気を付けるべきはお風呂場。細菌が増殖するリスクが高くなるため、追い焚きのお風呂に入るのはNGなのだとか。他にもシャワーヘッドに非結核性抗酸菌がついていると、吸入してしまう恐れがあるそうです。過去、全国180件の浴室を調査したところ、約6軒に1軒の割合で非結核性抗酸菌が検出されたというデータもあります。他にも、庭の水やりなどでホースにノズルを取り付けている場合は、シャワーヘッドと同じく菌を吸い込みやすいので注意が必要だそうです。
<シャワーヘッドの菌をしっかり落とす掃除法>
肺NTM症を予防するには、シャワーヘッドの日頃の手入れも大事だそうです。
▼シャワーヘッドが入るサイズの容器を用意する
▼40℃程度のお湯1Lにクエン酸大さじ1杯を溶かす
▼1時間ほど浸ける
▼古い歯ブラシなどでこすり洗いする
(※ヘッドが外せる場合は外して掃除しましょう)
<肺NTM症の治療>
先生によると、非結核性抗酸菌は弱い菌ですが、抗菌薬に対しては強い菌なのだとか。そのため、肺NTM症の治療は長期に渡る事が多く、抗菌薬を1年半〜2年ほど使いながら治療を続けていくそうです。
(2024年10月6日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)