侮れない!脂肪肝の恐怖
サマリーSummary
ゲンキリサーチャー:うしろシティ
ドクター:武蔵野赤十字病院 院長 肝臓専門医 医学博士 泉 並木
肝臓の基礎知識
肝臓の主な働きは3つ。細かく分類すると約500種類以上の仕事をしているといわれているそうです。
<肝臓の主な働き>
・胆汁の生成
胆汁とは、食べ物の脂を分解・吸収するための消化液の事。1日におよそ1Lの胆汁が肝臓で作られているそうです。
・栄養素をエネルギーに変換する
私たちが飲んだり食べたりしたものは、胃や腸で分解・吸収され栄養素が肝臓へ運ばれます。肝臓は、その栄養素をエネルギーに変換し全身に送っています。
・解毒と分解作用
例えばアルコールを摂取した場合、アルコールのままでは人体にとって毒性が高いため、肝臓で分解し無害なものへと変換しています。また、飲んだ薬の作用がずっと続かないのも、肝臓が分解してくれているからだそうです。
脂肪肝について
脂肪肝とは、肝臓内に脂肪が蓄積している状態の事をいいます。
<脂肪肝がもたらす肝臓の病気>
・肝硬変
先生によると、脂肪肝が長く続くと約15%が肝硬変になってしまうそうです。肝硬変とは、脂肪肝が進む事で炎症が生じ、細胞が壊れて硬くなってしまう状態の事。さまざまな働きをしている肝臓ですが、肝硬変になるとその能力が3割以下になってしまいます。また、肝硬変まで進行すると肝臓が元の状態に戻りにくくなってしまうので、早めに生活習慣を改善する事が大切だそうです。
・肝臓がん
脂肪肝が進行すると、肝臓がんの原因にもなります。肝臓には痛みを感じる神経がないので、自覚症状がないまま進行してしまう事も少なくないそうです。
お酒を飲まない人も要注意!脂肪肝になる原因
・アルコール
アルコールの摂取量が多いと、肝臓の働きがほとんど解毒・分解に使われてしまいます。すると、エネルギーを身体に供給する働きが低下してしまい、肝臓内に脂肪としてため込まれて脂肪肝になってしまうそうです。
・食べすぎ
通常、肝臓で作られたエネルギーは筋肉や皮下など全身に送られます。しかし、食べすぎにより栄養を過剰に摂ってしまうと肝臓の働きが栄養をエネルギーに変換する作業ばかりに偏ってしまい、筋肉や皮下に送られず肝臓にため込まれてしまうそうです。
・ダイエット
過度な食事制限をすると、全身にエネルギーを送るためのたんぱく質が不足してしまいます。すると、送り出せないエネルギーが肝臓内にため込まれてしまい脂肪肝になってしまうそうです。
・閉経による女性ホルモンの減少
女性ホルモンには、肝臓で作られた余分なエネルギーを皮下へ送る作用があります。しかし、閉経後に女性ホルモンが減少してしまうと、余分なエネルギーを皮下に送り出しにくくなり脂肪肝になりやすくなってしまうそうです。
検査では見つからない「隠れ脂肪肝」
先生曰く、脂肪肝の指標となるのは、血液検査での「ALT」「AST」「γ-GTP」の数値。ところが近年、数値が正常値にも関わらず精密検査を受けると脂肪肝が見つかる「隠れ脂肪肝」が増えているそうです。
<あなたは大丈夫!?「隠れ脂肪肝」チェック>
下記の項目に3つ以上当てはまる場合は、脂肪肝の可能性があります。
□週に3回以上お酒を飲む
□通勤や買物に車を使う
□20歳の時と比べて10kg以上太った
□ジュースなど甘い飲み物を好む
□眠る2時間前に食事をする事がある
□平均睡眠時間が6時間未満
ドクターおすすめ!肝臓をいたわる方法
先生によると、肝臓は再生能力が高いので、脂肪肝になっても食生活を見直したり運動をしたり生活習慣を改善する事によって、元に戻りやすいという特徴があるそうです。先生おすすめの肝臓をいたわる方法をご紹介します。
<肝臓をいたわる方法食事編>
先生おすすめのメニューは、納豆の上に黒ごまをのせて食べる「黒ごま納豆」。納豆は、肝臓の働きを助けるたんぱく質が豊富で、脂肪の燃焼や肝細胞の再生を促進するビタミンB2も含まれています。そして、黒ごまに含まれているビタミンEは、脂肪肝に有効だと科学的にも証明されているそうです。
<肝臓をいたわる方法食後編>
先生曰く、食事の後は30分間横になるのがおすすめ。肝臓に流れる血液の量がアップするので、肝臓内に栄養素が行き届きやすくなり、エネルギーに変換する働きが活発になるそうです。ただし、そのまま寝てしまうのはNG。30分経ったら動き出しましょう。
<肝臓をいたわる方法アルコール編>
お酒を飲んでから、完全にアルコールが分解されるには、約24時間かかるといわれています。そのため、1日おきに休肝日を設けるのがおすすめだそうです。