ドラ1で一軍未出場も「大きなバネになる」ブライト健太の“大きな声”と成長
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
「日々の努力は大きなバネになる」ブライトのエモーショナルな逸話
最下位に沈んでいたドラゴンズに発破をかけるように、交流戦でブライト健太選手は頭角を現した。5月31日のホークス戦で、本人が「とにかく嬉しかった」と語るタイムリースリーベースを放ちチームの勝利を決めた。そんなブライト選手はプロ入りまでにも、数々の逸話を残している。まず1つ目は。
「高校時代、足の靭帯損傷中でも強行出場して一塁まで全力ケンケンでヒットを稼いだ」
彼の素晴らしい身体能力が成し遂げた結果でもあると川上憲伸氏も認めた。
そして2つ目のエピソードは。
「上武大学1年生の時、寮生活に馴染めず深夜4時に自転車で群馬から東京まで大脱走。チームメイトから『お前は4番を打つんだから戻ってきてくれ』と懇願され帰還」
さらに入団前には、特技であるラップを、野球というテーマで即興で披露している。
「ホームラン」
作詞・作曲 ブライト健太
Hey! 実力がなければ超不安
でも全国(大会)で打ったホームラン
まさか取材を受けるとは思わなかった
日々の努力 それがいつか
大きなバネになることを信じて 取り組む
ドラゴンズでは珍しいスキルを持った選手なので、ヒーローインタビューのお立ち台で披露する姿も待ち遠しい。エモーショナルな理想をどうやってリアルに近づけたのか単独インタビューで迫る。
一軍未出場からの飛躍、憧れのビシエドから教えられたこと
2021年のドラフト1位として期待を背負いながら昨シーズンは一軍出場がなかった。キャンプも二軍の読谷スタートだった今シーズンは、プライド云々をかなぐり捨ててがむしゃらにプレーしている。
「走攻守全てですけど、特にバッティングが通用しなかったので自分がやっていくことが分かった年だった」
その成果が実り、キャンプの実戦では2試合連続で2打席連続ホームランを放ち一軍昇格、そのままオープン戦まで完走し「開幕一軍」を手に入れた。
しかし、外野のポジション争いは激しかった。不動のレギュラー大島洋平選手、守備力と打撃センスともに評価の高い岡林勇希選手をはじめ、助っ人外国人も加わって熾烈を極めていた。そこで代打での出場が必然的に多くなったが、13打席でヒット1本と結果が出ず二軍降格となった。
「代打で1本出すのが一番苦しかった。二軍ではスタメンで出してもらっていたので1打席目の結果にこだわることと、タイミングを早く取ることを一から見直して早いストレートを打ち返すことを意識して取り組んでいました」
そんなブライト選手に転機が訪れたのは、入団前から憧れていた選手であるビシエド選手と二軍で共にプレーできたことだった。
「(ドラゴンズに)入ってくる前から、憧れでもありましたしスター選手なので、そういった方と一緒に野球ができているのは嬉しい。(ビシエド選手は)シーズンが長いので1、2試合打てないだけで気分を落とさないことや、自分の調整方法がわかっているのでそれを毎日淡々と行う部分はすごく勉強させていただいています」
スタンドまで届く声出しの理由
ビシエド選手からの教えもあり、二軍降格後は13試合で打率.358、ホームラン3本とアピールし、再び一軍昇格への切符を手に入れた。
「与えられたチャンスを掴むしかない。前回(一軍にいたとき)は、それを掴み損ねたので今回は絶対に掴もうと思って気合い入れてやっています」
5月30日のホークス戦では2番レフトで初スタメン、第3打席に初タイムリーを放つとその後もヒットを重ねて初の猛打賞を記録した。その調子のまま翌5月31日の試合、ツーアウト満塁の場面で3点タイムリースリーベースを決めた。
「自分が打てば試合が決まる場面だったので、どうしても打ちたかったので、ホームランにはならなかったがいい形で打てたかなと思う。勝ちに貢献できる選手になりたいと常日頃から思っているのでやっと自分が活躍して1勝できたかなと思います」
若手の積極起用によって巡ってきたチャンスに、たとえ出場機会がなくともベンチから大きな声で味方を鼓舞しチームを盛り上げる。
「全員が勝つためにやっているので、試合に出ていない中で何ができるかを考えた時に、自分には声出しくらいしかできなかった。変なプライドを持たずに、がむしゃらにやるのが当たり前だと思う。若手が成長するのは、今後のチームの力になるっていうことだと思うし、今は試合に出してもらっている立場なので、今シーズン中に自分の力で試合に出られるようになって誰にも負けない成績を残していきたいというのが一番強い思いです」
筆者の感想まとめ
ゲーム前円陣で鼓舞する姿、ゲーム中誰よりも大きな声で盛り上げる姿勢は、見ているファンとしてはそういった部分に感化される。筆者も二軍の春季教育リーグを観戦した際、ゲームセットに至るまで、チームや自身をパワーアップさせるために叫び続ける姿に心打たれて42番を背負って応援していこうと心に決めたほどだ。
そんなエモーショナルな部分以外でも、インタビューで語られるように、一軍の試合で要求される技術に対応していけるポテンシャルと的確な修正力を持っている。本人も語るように、今は与えられた機会かもしれないが慢心なく課題に取り組む姿勢からは、チームの勝利を見据え広い視野でプレーをできる期待もある。熱量とセンスを兼ね備えたプレーから今後も目が離せない。
澤村桃