竜の“立浪革命”から目が離せない!~愛しのドラゴンズ!2022~(31)
新しい年がやって来た。干支は「寅」、しかし「トラ」という言葉にドラゴンズファンとしては、つい濁点をつけてしまう。「トラ(虎)」ではなく「ドラ(竜)」でしょう。球団創設86年目の中日ドラゴンズは、立浪和義新監督と共に新たな船出の年を迎えた。
筆者は『愛しのドラゴンズ!』と題した著書そしてWEBコラムも書いてきたが、与田新監督誕生以来3年ぶりに、このタイトルを付けてのドラゴンズ論説コラムに筆を執った。
星野新監督以来のワクワク感
ドラゴンズに新監督を迎えて、ファンとしてこんなに期待が高まる正月はいつ以来だろうか? 過去それぞれの新監督にも、毎回大きな期待と夢を寄せてきた。しかし立浪新監督に対しては、「必ず」という言葉に象徴されるような、得も言われぬ安心感と楽しみなワクワク感がある。それは1987年(昭和62年)から指揮を取った星野仙一監督以来かと思い当たる。2004年(平成16年)の落合博満監督の時は、FA宣言して讀賣ジャイアンツへ移籍した選手時代があっただけに、むしろ驚きの余韻の中での年明けだった。その後、2度目の高木守道、谷繁元信、森繁和、そして2019年から3年間指揮を取った与田剛と4人の監督が変遷したが、「本格政権」と思えるような期待感は、星野新監督以来、実に35年ぶりの実感かもしれない。
立浪監督「必ず」の言葉力
就任が決まってから、立浪新監督の言葉に数多く登場するのは「必ず」というフレーズである。就任会見でも課題の打撃陣について「打つ方は必ず、何とかします」と語った。球団納会の席上でも「必ず結果を出します」と挨拶した。ファンに対して「ドラゴンズは変わった。球場に行きたいと言われるチームを必ず作る」というメッセージもあった。
この「必ず」という言葉が胸に刺さる。指揮官の力強い宣言ほど、ファンにとっても頼もしいものはない。そこには強い信念に基づくリーダーシップがほとばしっている。それは、かつてPL学園高校時代にキャプテンとしてチームを率いて甲子園で春夏連覇を成し遂げたこと、入団したドラゴンズで1年目からレギュラーとして活躍し3代目「ミスター・ドラゴンズ」と呼ばれるようになったこと、そしてユニホームを脱いでからもずっとドラゴンズというチームを見続けてきたこと、そんな立浪監督が歩んだ道が「必ず」と言いきる自信につながっている。
チーム作りの根底にあるもの
落合監督が球団初のリーグ連覇を成し遂げた2011年を最後に、チームは10年間も優勝から遠ざかっている。立浪新監督はどんなチーム作りをするのだろうか。これまでに語られた言葉から具体的に浮かぶ布陣は、現時点では3つである。
「レギュラーと言えるのは大島とビシエド」
「根尾は打てばライトで使う」
「福留は代打の切り札」
昨今の低迷の大きな要因である打撃陣について、石川昂弥選手や岡林勇希選手らの起用も示唆するなど、若手を積極的に登用した星野監督の“思いきりの良さ”がうかがえる。12球団でもトップクラスの投手陣については「再整備する」と、落合監督が進めた“守り勝つ野球”をイメージさせる。これまで選手として身近に見てきた指揮官たちの手腕、その良いところを採り入れながらも自らの野球を構築していく、それが“立浪野球”なのだろう。
“すべては勝利のために”への期待
新しいスローガンは「All for Victory すべては勝利のために」。このところ続いてきた「昇竜復活」などの四字熟語から、大きく変わった。思い出すのは、これも星野監督の「Hard Play Hard」、そして落合監督の「Road to Victory」、この2つのスローガンである。この系譜の先に、立浪野球のスローガンがある。「ファンの皆さんに勝利を届ける」新たなリーダーのこの言葉が頼もしい。就任時の当コラムでも強く期待したが、立浪新監督には「チーム改革」などというレベルではなく「革命」を起こしてほしい。竜を力強く天に昇らせる“立浪革命”いよいよ開幕である。
「まずはチームの土台作りをして3年目には」という抱負、その年の干支はまさに「辰」。
竜の年に3年目を迎える立浪野球が成就することを今から楽しみに待っている。もちろん「トラ年」を「ドラ年」に替えて、いきなり胴上げを実現してもらっても大歓迎である。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。