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竜のドラフト10年史(10)~高橋宏斗とドラゴンズジュニアの時代・2020年

竜のドラフト10年史(10)~高橋宏斗とドラゴンズジュニアの時代・2020年

超高校級の右腕・高橋宏斗

高橋周平の1位指名から10年目の2020年ドラフト。ドラゴンズの1位指名は、再びの「高橋」、地元・中京大中京高校のエース高橋宏斗だった。大学進学希望だった高橋が一転してプロ入りの希望を表明したことによって、竜のドラフト戦略は大きく舵を切った。
愛知県出身の高橋宏斗の存在は早くから注目されていたが、2019年の明治神宮大会で初優勝したことによって、12球団すべてからマークされた。甲子園での活躍こそ、新型コロナウイルスの影響で大会が中止となって実現しなかったが、150キロの剛速球によって、高校時代は「不敗神話」を続けた。他球団が即戦力の大学生を指名する中で、ドラゴンズは高橋の単独1位指名に成功した。相思相愛が実ったドラフトだった。

ドラゴンズジュニア3人組

高橋の入団によって、ドラゴンズには魅力たっぷりのトリオが出来上がった。2018年の根尾昂、2019年の石川昂弥、そして2020年の高橋と、ドラフト1位で入団した3人は、いずれも中日ドラゴンズが運営する少年野球チーム「ドラゴンズジュニア」で活躍していた。言わば「竜の申し子」。ドラゴンズブルーのユニホームを着ることは、まさに運命だったと言える。高橋は引退したばかりのエース吉見一起がつけていた背番号「19」を背負った。ドラフト会議を前にドラゴンズのスカウトは「松坂大輔投手や田中将大投手の高校時代に負けていない」とその投球を評価していたが、プロの世界でも2人を越える活躍に期待したい。高橋がマウンドに立ち、そのバックで根尾と石川が守る、そんな夢みたいな日がバンテリンドームで実現しますように。

2020年ドラフト総括

即戦力選手が揃ったドラフトだった。大学生の双璧は早稲田大学のエース早川隆久、そして関西六大学野球のスラッガー佐藤輝明(近畿大学)。それぞれ4球団が1位指名で競合し、
早川は新監督で同じ左腕の石井一久率いる東北楽天ゴールデンイーグルスが、佐藤は地元の阪神タイガースが獲得した。この他の1位指名では、北海道日本ハムファイターズが早々に地元・苫小牧駒澤大学の右腕・伊藤大海を、また広島東洋カープがドラゴンズも大学時代から注目していた右腕・栗林良吏(トヨタ自動車)を、それぞれ単独で1位指名し、大きな戦力アップを実現した。もうひとり、ドラゴンズが欲しかった東都大学野球の強打者である牧秀悟(中央大学)は横浜DeNAベイスターズが2位指名で獲得。牧はルーキーとして初のサイクルヒットを記録するなど、ドラフト1位組を凌駕する活躍を見せている。

竜指名選手の現在地は?

「中日ドラゴンズ2020年ドラフト指名選手一覧表」(C)CBCテレビ

ドラゴンズは1位の高橋宏斗を含む6人を指名した。高校生4人、大学生1人、社会人1人で、この内の投手は4人。育成選手は投手ばかり3人を指名した。育成1位の近藤廉(札幌学院大学)は早々に支配下登録されて、同期の中で最初に1軍入りした。即戦力の期待が高かった2位の森博人も9月に1軍で初登板、帽子を飛ばすほどの力投にスタンドは沸いた。また3位の土田龍空(近江高校)は、高校生離れした抜群の守備力を武器に、シーズン後半に1軍に抜擢された。「龍の空」という名前も、いかにもドラゴンズ向きである。しかし高橋をはじめ、全員がまだプロ入りして1年目、致命的なけがには気をつけながら、昇竜復活の日に向けて存分に“竜の爪”を研いでほしい。

連載を書き終えて・・・

2011年から2020年まで10年間のドラフト史をふり返ったが、中日ドラゴンズは決して他球団に負けない、優秀な人材を獲得してきている。ただ最近で気になるのは、入団した後の活躍、いわゆる“飛び出し”が目立っていないことだ。チームの上昇に勢いをつけるのは若い戦力である。かつて2度にわたってチームを指揮した故・星野仙一監督は、近藤真一の初登板ノーヒットノーランのようにドラフト獲得からデビューさせるまでの“演出”が実にうまかった。チームの将来構想、スカウトの目利き、そしてベンチの起用、三位一体となった竜のドラフト戦略に期待したい。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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