「広島カープに入ったらレギュラーになれるのか」 与田新監督の言葉にドラゴンズ選手たちはどうする?
平成最後となるプロ野球日本シリーズが終わった。広島東洋カープと福岡ソフトバンクホークスの戦いは、まさに「両雄激突」と言える熱戦だった。がっぷり四つの横綱相撲を見せられた思い、本当に強いチーム同士の野球はこんなにすごいものなのかとあらためて野球の魅力を堪能した。
与田監督からの厳しい問いかけ
そんな素晴らしい日本シリーズの真っ最中に、6年連続のBクラスに沈んだ中日ドラゴンズは秋季キャンプをスタートした。
新たに指揮を取る与田剛監督もナゴヤ球場で23年ぶりにドラゴンズのユニホーム姿を披露した。そこで与田監督はこんな言葉を選手たちにかけたという。
「自分が今のカープに入ったとき、レギュラーになれるのか」
カープとドラゴンズの対比とは?
内野なら、首位打者と最多安打のタイトルを獲得したダヤン・ビシエド選手のファーストはともかくとして、セカンドは菊池涼介選手に対しドラゴンズ高橋周平選手、サードは安部友裕選手に対し福田永将選手、ショートは田中広輔選手に対し京田陽太選手。外野ではセンター丸佳浩選手に対し大島洋平選手、ライトは鈴木誠也選手に対し平田良介選手、それぞれ監督の言葉の対象となる。
他チームの同じポジションの選手のことはプロ野球選手ならずとも誰もが当然意識していると思うが、新しい指揮官から具体的にそれを言われた時に、ドラゴンズ選手たちはどんな思いだったのだろうか?
過去の新監督の言葉として、ドラゴンズの場合、39歳で就任した故・星野仙一監督の一言「覚悟しとけ!」は特に有名だが、今回の与田新監督の「カープに入ったらレギュラーになれるのか」という言葉はとても重く厳しい。しばらくドラゴンズというチームを離れて外から見ていた立場だからこそ言える言葉であろう。ファンも含めて外部の人が自分たちのチームとプレーをどう見ているのか?選手それぞれもこれを噛みしめたと信じたい。静かに響くだけに底知れぬ恐さがある言葉だ。選手起用の責任者は監督である。
個の実力を見せつけたシリーズ
今回の日本シリーズは個の力と采配の力、その両方が際立った。
ホークスではバットを折りながらボールをスタンドに運んだ4番柳田悠岐選手のサヨナラホームラン。6連続で盗塁を阻止してシリーズMVPを獲得した甲斐拓也捕手の鉄砲肩。武田翔太投手の圧巻リリーフ。
カープでは安部選手の満塁ホームランに鈴木選手の力強いホームラン3本という競演もあった。
しかし、主将の内川聖一選手に当然のように送りバントを命じ、“熱男”松田宣浩選手や主砲のアルフレド・デスパイネ選手をスタメンから外すなど、シーズンとはひと味違う戦い方をした工藤公康監督のタクトが2年連続での日本一の凱歌を奏でる結果となった。
パ・リーグの野球に造詣の深い職場の後輩は「これまでどちらかと言えば短期決戦を苦手にしていたホークスの野球が変わった。シーズンもシリーズも強くて、まさに鬼に金棒」と分析する。
ホークスの選手層は厚い。昨季のシーズンとシリーズのMVPである抑えのデニス・サファテ投手を欠きながら、それでも代わりの抑え役が登場してくる。“甲斐キャノン”という流行語も生み出した甲斐捕手は、実は育成ドラフト6位での入団である。チームとしてちゃんと選手を見て、育てて、そして選手本人もそれに応えて練習を怠らず成長した結果であろう。
負けるな!竜戦士たち
ドラゴンズ秋季キャンプが行われているナゴヤ球場のスタンドには、いつもの年以上に沢山のファンが訪れて、熱心に練習を見守っている。
「今のソフトバンクホークスに入ったとき、レギュラーになれるのか」
愛すべきドラゴンズが、セ・リーグの覇者カープ以上、日本一のホークスにも勝てるチームに復活できるのか。ファンは温かく、でも厳しい眼差しでドラゴンズ選手たちの練習を見つめ続けている。実りの秋が過ぎるのは早い。
【CBCテレビ論説室長・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。