ドラゴンズの窮地を救うエース!大野雄大は弱さを認めてますます強くなる

ドラゴンズの窮地を救うエース!大野雄大は弱さを認めてますます強くなる

「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム

今季最多の借金に先発投手の相次ぐ離脱も重なり、チームとしては厳しい状況にあるドラゴンズ。

しかしそんな中この苦況を打破し、与田監督が常々言葉にしている ”優勝” に向かって戦うにはどんな時にもチームを支えてくれるエースが必要だ。

周囲の期待の中、思うような成績を残せず苦しんでいた、
“霧の中を抜けたピッチャー”が、
“霧の中でもがいているチーム”を救い出してくれるだろう。

そのピッチャーこそ ”大野雄大” である。

苦い負け方をしたGW最終日の翌日。大野雄大はその試合の意気込みをこう語る。

「今シーズン初めて一人で投げ切りたいなと持ってマウンドへ上がった。」

彼は、完封という最高の結果で示してくれた。
9回にその日の最速タイの149kmのストレートを投げ込み、
重い雰囲気を鮮やかに切り裂くような投球でチームを再び前に向かせた。

ナゴヤドーム開幕戦に『自信はないです』

開幕前、首脳陣からナゴヤドーム初戦は大野に任せるとから告げられた。
その時の心境を聞かれ大野はこう答えた。

「自信は、無いです。」

ただ素直な気持ちを伝えられた時点で、大野の中の何かが変わっていたのかもしれない。
間違いないのは、昨年のことを思うとその自信は揺らいでいたことであろう。

新首脳陣はそんなフィルターを外して、昨年の屈辱を晴らすべく力を蓄えた大野を純粋に評価し、こう伝えた。

「大野は新しい目で見たときにいいピッチャーだ。だから自信を持ってマウンドで投げてほしい。」

その言葉を聞いて大野は思い直した。
「俺が自分自身を信じられなかったらどうすんねん。」
そうして、勝ちこそつかなかったもののチームの勝利につながる投球を見せた。
失点をしても崩れることなく切り替えができたことについて大野はこう分析する。

「自分の弱さを今まで隠していた。間違いなく弱いピッチャーだった。そこを認める。次どうしたらいいのかとなったときに完璧に抑えるのは難しいかもしれないけど、最低限試合を作ることだけを目標としていこうとした。」

開幕前に首脳陣に伝えた言葉も、自身の弱さと向き合うための禊(みそぎ)だったのかもしれない。

見ている人の感情を強く揺さぶる彼特有の人間臭さはとても魅力的だ。
大野投手の誠実さと向上心は周りにも影響を与える。
だからこそ、実直に向かいあって努力を怠らずに進んできた大野に、
周囲の後押しと結果がついてきたことはもはや必然であったのだろう。

好調の3つの要因

好調を支える要因は、昨シーズンが終わってから着々と準備されていた。

まず一つは、球の威力を左右するリリースポイントの改善についてだ。
大野はこう説明した。

「ボールを離す位置が何センチか前になっている。バッターからしても体感速度が違うと思う。キャンプから阿波野コーチとリリースを前にする練習をしてきた。」

大野のストレートは昨年までで見てもチームでトップレベルの威力を持っていた。
ただそれを大野自身に信じさせる最後の一押しが必要だったかに思う。
リリースポイントの改善でそれはようやく確信に変わったのだ。

2つ目は、秘密兵器のチェンジアップである。
ピッチングに緩急をつけるために、新たな変化球として習得した。
だが、ストレートとスライダーだけでも今年の大野は押していける。

3つ目は、周りからは絶対無理だと言われていた禁酒である。
ドラゴンズ の宴会部長として名を馳せるほどのお酒好きの大野だが、そのお酒でも消せない不安もあったのだろう。

「去年の秋くらいにはプロ生活は、あと2~3年かなと思って、その後の人生どないしよかなと考えていた。」

そんな気持ちだった大野は自らの決意で変わったのだ。

「今は全くそんなことを考えないし、変われたのかなと思う。」

精神的にも成長し、覚悟を決めて闘う大野雄大は我々に進化するピッチングを見せつけてくれるだろう。

笑顔のヒーローインタビュー!涙がなかったその訳は?

大野雄大といえば、2年前開幕投手を任されながら2ヶ月の間勝ち星がつかず、中継ぎに入ったり、二軍での調整を試みたりともがいて掴んだ勝利試合。
その感情が込み上げた涙のヒーローインタビューが印象に残っている人も多いだろう。

今年の初勝利は608日ぶりで喜びはその時を上回るものだろう。
私はその嬉しさを涙ながらに語る姿を期待してしまっていた。

ところが泣くことはなく、なんなら笑顔で受け答えをしていた。
驚くと同時に何かが変わったことを感じた。

その時の気持ちを大野はこう話す。

「投げている球は間違いなかったしもちろん嬉しかったけど、これくらいはできるという思いがあった。」

思うような結果が出ずとも、挫けることなく向かっていったことがぶれることのない自信に繋がったのだ。
素の自分と向き合って、強いところも弱いところもありのままに受け止められたのだろう。

また自身の理想とするピッチャーについて最後にこう語った。

「今日はこのピッチャーだから勝てるんじゃないかと選手も監督もコーチも、ファンの皆さんにもそう思ってもらえるピッチャーになりたい。その自分の追い求めている投手像に少しずつ近づけていると思う。」

ゲスト解説者の山田久志氏も、二桁勝ったら評価しましょうね、と笑顔で激励の言葉を送った。
前を向き続けてくれた大野に全力の期待を掛けられることが嬉しくてたまらないのは私たちファンだけではないようだ。

そしてもう振り返ることはなく進み続けて、優勝するときには嬉しさに涙する姿を心待ちにしている。

澤村桃

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