モーニングのパンはなぜおいしい?喫茶文化を支える業務用パンメーカーの世界~大竹敏之のシン・名古屋めし

モーニングのパンがおいしいのは気分の問題・・・じゃない!

東海地方では当たり前の喫茶店のモーニングサービス。朝の時間帯にコーヒーなどのドリンクを注文すると、トーストやゆで玉子などが無料でついてくるありがたいサービスです。ここで欠かせないのがもちろんトーストです。こんがり香ばしく、表面はパリッとして中はふんわり。トーストのおいしさこそがモーニングの満足度を決めるといっても過言ではありません。
さて、モーニングのトーストがおいしく感じられるのはなぜなのでしょう? 朝のひとときを充実させてくれるから。朝食をつくる手間が省けて贅沢な気分を味わえるから。コーヒーとの相乗効果・・・。様々な理由が考えられますが、実はズバリ、喫茶店が本当においしい食パンを使っているから、なのです。
「お客様にリッチな味わいのパンを食べてもらいたい。ホテルのベーカリー長だった創業者のそんな思いが当社の原点です」というのは本間製パン常務の佐伯信哉さん。同社は愛知県小牧市に工場・本社を構える業務用パンメーカー。東海3県のおよそ3000軒の喫茶店にパンを卸していて、そのシェアは実におよそ45%に上ります。業務用パンメーカーはどの地域にもありますが、一般的にはホテル向けや学校給食がメイン。喫茶店を主要取引先にしているのは東海地方ならではです。
独自の配送システムで新鮮なパンを工場から直送
では、喫茶店向けの業務用パンは、市販のパンとは何が違うのでしょうか?
「当社では、できたてのパンを工場から喫茶店に直送する独自の配送網を持っています。パンの消費量が多いお店には朝夕の2回お届けすることも。常に新鮮なパンをご提供できることが、モーニングのおいしさにもつながっていると思います」と佐伯さん。
喫茶店側からすれば、食パンの消費サイクルに合わせてこまめに配送してもらえれば、在庫を抱えずに済みます。こうした仕組みもまたパンのおいしさの秘密のひとつ。工場で焼き上がってから消費者が口にするまでのスパンが非常に短いため、保存料などの添加物をほとんど使わずに済み、その分小麦粉を主とする原料の品質によりこだわることができるのです。
また、業務用食品というと、量が多くて割安、そんなイメージを抱くかもしれません。しかし、同社の食パンは決して値段が安いわけではありません。1本(3斤分)の価格はグレードの高いものだと800円台~。スーパーやコンビニ、ドラッグストアで売っている大手メーカーの食パンは概ね100円台~ですから、喫茶店はそれよりも高価なパンを仕入れて、それをモーニングであれば無料でコーヒーに付けていることになります。
毎日でも飽きが来ないデイリーなおいしさ

「当たり前と思って食べていたから、そんな高品質のパンだと気づいていなかった」
モーニングユーザーの中には、そんな風に思う人も少なくないかもしれません。しかし、これもまた業務用食パンのマジック。ブームになった高級生食パンや、人気ベーカリーの食パンのような分かりやすいリッチさや個性ではなく、毎日でも食べ飽きない、主張しすぎない味わいが、その何よりの特徴、魅力なのです。小麦の香りがほどよく漂い、食感は軽やかで食べやすい。バターやジャム、あんこの味も引き立てる。あくまで名脇役としてコーヒーを楽しむひとときを支えてくれているのです。
東海地方では本間製パンのような喫茶店向けの業務用パンメーカーが何社もあり、この地域の喫茶店文化の縁の下の力持ちの役を担っています。店オリジナルのパンの開発にも力を入れているエースベーキング(愛知県清須市)、冷凍パンで独自のおいしさを追究する永楽堂(名古屋市瑞穂区)など・・・。次にモーニングサービスを利用する際は、その喫茶店がどこのパンを使っているかにも注目してみてください。トーストの味わいと合わせて、周辺産業ともスクラムを組んで成立している東海・喫茶店文化、その底力の一端にふれられるはずです。
※記事内容は配信時点の情報です
#名古屋めしデララバ
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