脱サラして飲食店に転身した男性2人 狙うは手羽先サミット日本一
2022年春、名古屋市にオープンして早くも大人気となっている飲食店があります。話題の新業態で奮闘しているのは、脱サラで夢を追う挑戦者たち。そのうちの1人は父親としてある思いを抱え、虎視眈々と日本一を狙います。走り続ける2人の男性に密着しました。
新業態の飲食店施設
名古屋市にある「クラウドイーツ・キッチン丸の内店」。中に入ると、独立したキッチンだけが並んでいます。この不思議な空間は、『クラウドキッチン』。それぞれのキッチンが独立してデリバリーとテイクアウト専門店を運営できる施設です。施設の中には、デリバリーの配達員とテイクアウトのお客さんがとめどなく行き交う店がありました。2022年3月にオープンした鶏肉料理専門店「リズキッチン」です。
こだわりのもも肉をカリっと揚げて自家製の旨辛ソースを絡めたヤンニョムチキンや、『恵那どり』を使ったサラダチキンなどヘルシーで食べ応えのあるメニューに、リピーターも続々とやってきます。
経営しているのは、近藤真裕さん(32歳)と笠本康二さん(35歳)。どちらも飲食業界を目指す同じ夢を持っていました。2021年共通の知人を介して出会い、出店を決意。この施設を見つけました。日々メニュー開発に勤しんでいます。
飲食店に挑戦する理由
ある日の仕事終わり、笠本さんの自宅へ伺うと妻の朱里さんと2人の娘さんが出迎えてくれました。朝早くて夜遅い仕事のため、家族といられる時間は週1回だけ。がむしゃらに頑張る笠本さんの夢を後押ししたのは、近藤さんとの出会いだけではありませんでした。
(笠本さん)
「父親の背中を見せるべきだと思っていたので。だから僕も新しく“ちゃんと飲食店をやろう”と思って」
笠本家にはもうひとり長男の恭平君がいましたが、生まれつき重度の脳性麻痺を抱えており、2022年2月に9歳7か月で突然亡くなりました。店がオープンする1か月前のことでした。
最愛の息子を亡くした笠本さんは、恭平君の分まで強く生きることを誓っていました。その想いはさらなる挑戦に駆り立てます。
手羽先サミットで2位の金賞を受賞
リズキッチンは、6月上旬に名古屋で開催された日本一の手羽先を決める「手羽先サミット®︎」にエントリーしました。目指すは優勝です。
2019年には約10万人が来場したこの大会。厳しい選考は通過し3日間の激闘を繰り広げる12店には、福井県の地元特産醤油を使った大正7年創業の老舗や、東京都から全国200店舗以上を構える「扇屋」も出店。優勝候補の2021年グランプリ「天下一手羽先」は、宮崎県産の大ぶりな鶏肉を、シンプルな塩味で仕上げています。
対するリズキッチンの手羽先は、SNS映えを狙って普通の手羽先をさらに捌き、骨を脚に見立てて身のところがスカートのような形をしていることから『手羽先むすめ』という名前にしました。味付けも、自家製ソースで5種類準備します。
金曜日の夕方から始まった本番は大盛況。3日間が終了し、惜しくもグランプリは逃したものの、見事2位の金賞を受賞します。3日間で売った手羽先の数は、11,016本に及びました。
(近藤さん)
「“やろうと思えばやれるんだな”と本当に今回わかった。この経験を忘れずにやっていこうと思う」
(笠本さん)
「今回の手羽先サミットをきっかけに、リズキッチンを知ってもらえるような拡大をしていきたい」
フルスロットルで走り続ける2人。これからもおいしさを届けるための挑戦は続きます。
CBCテレビ「チャント!」6月14日の放送より。