1日限定の爆音コンビニ。そのわけは…
記者「この店内、すごく大きな音がします。マイクを外してしゃべると…たぶん、聞こえないと思います。それくらい大きな音がしています」
12/4、東京都内で1日限定で会話もできないほどの大きな音量で音楽をかける「爆音コンビニ」がオープンしました。
実はコンビニの店内を再現した撮影用のスタジオなのです。
店内に流れる音楽はおよそ100デシベル、電車が通るときのガード下と同じぐらいの音量です。
声を使ってのコミュニケーションは不可能です。
会話もままならないなかで買い物を体験するという取り組みが行われました。
体験する人は「弁当や飲み物を買う」といった課題のほか、「切手を買う。肉まんにつけるカラシをもらう」など細かい課題が与えられます。
口の動きが見えないのは聴覚障害者にとって大変
企画したのは聴覚障害者の支援などを行うNPO法人です。
NPO法人サイレントボイス 尾中友哉 代表
「(聴覚障害者は)今まではなんとか口の形を読みとって、手話ができない人とコミュニケーションをとっていたが、そこにマスクが乗ることで、話かけられていることにも気づけない」
新型コロナの感染拡大後、マスクをつけるのが当たり前となったことで、聴覚障害者が困っているというのです。
実際にコンビニでよくある「お弁当温めますか?」というやりとりも、マウスシールドであれば 口の動きが見えますが、相手がマスクをしていると話しかけられていることに気づかないときもあるといいます。
口の動きを読み取ることは、意思疎通をはかる上でとても大事。そのことを健常者に理解してもらうためのコンビニなのです。
聴覚障害がある医師は
聴覚障害者が困る場面は買い物だけではありません。
三重県の尾鷲総合病院に勤務する内科医 今川 竜二さん。
生まれつき聴覚障害があります。
新型コロナの感染拡大前は、口の動きを読み取る読唇術で、コミュニケーションをとってきました。
しかし新型コロナの感染拡大で、マスクが診察の壁になっています。
今や筆談での診察がほとんど。
見た目ではわからない聴覚障害。コロナ禍のなか周囲の理解がますます必要だと今川医師は訴えます。
今川医師「自分から耳が聞こえにくいという事を伝えるも大切なのですが、伝えにくい、または伝えるタイミングが掴みにくというもどかしい気持ちを私たちが持っているという事も、この爆音コンビニを通して経験してほしいなと思います」
お互い課題があることを知って解決の道へ
実際に記者が爆音コンビニで買い物をしてみると…
記者「あの、切手…え~」
手元にない商品を説明するのは一苦労でした。
記者「疲れますね。言葉で出来たらなんでもないことがものすごいストレスに感じました。特に切手の購入やレンジで温めてくださいと頼むのがすごく難しいですね」
コロナ禍でのマスク着用は大事。しかし聴覚障害者にはコミュニケーションの壁になることがよく分かりました。
NPO法人サイレントボイス 尾中友哉 代表
「コミュニケーションは共同作業なんだと伝えたい。お互い課題があることを知ってどんなことが職場や学校で出来るのか対話が広がっていけばいいなと思います」
マスクが当たり前となった社会のなかで、聴覚障害者が困っている。
そのことに私たちが気づくことが課題解決の第一歩です。