「一緒に背負っていく…」亡き母親の名前を店名に 独創的な寿司を生み出す若き大将

2022年8月2日(火)放送
「一緒に背負っていく…」亡き母親の名前を店名に 独創的な寿司を生み出す若き大将

ぷりっとした大きな身をサッと湯がいて、絶妙な柔らかさの半生の状態でダシにつけた車エビの握りに、1年のうちごく限られた期間のみ出まわる高級魚の新子の握り。腕をふるうのは、まだ29歳の若き大将です。提供するのは、奇抜で一風変わった寿司の数々。料理の世界に飛び込んだのは母の死がきっかけでした。新進気鋭の若き寿司職人のこだわりと素顔に迫りました。

身に炭を直接当てて焼く!? 繁華街の一角で独特の寿司を提供する店

全国有数の繁華街として知られる、名古屋市中区錦3丁目の一角に店を構える「鮨 香斗(こうと)」。カウンター席のみの完全予約制の店です。

切り盛りするのは、あま市出身の菊池健斗さん(29歳)。料理はコースのみ、夜は寿司が10貫と一品料理が6つのシンプルなメニュー構成です。

ウナギを調理する際には単に焼くだけでなく、身に炭を直接あてる独特な焼き方。炭の香りがより楽しめるように工夫します。

他にも夏の風物詩、そうめんに合わせているのはなんと毛ガニ。大将独自のアレンジで今までにない食べ方を提供してくれる、季節感のある料理が店の特徴です。

メインの寿司はもっと変わっていて、例えば杉の木板をバーナーで炙ってから白身魚のクロムツを押し当てた後握ります。食べると口の中で燻製のような香ばしい香りが広がると評判です。

ひと箱4万5000円もする北海道産最高級のウニを、これでもかと言わんばかりに積み上げた黄金に輝くウニタワーもあります。

赤身マグロの握り寿司にも、斬新な工夫がされていました。漬けにした赤身マグロの中には、ワサビではなく洋がらしが。カツオの粉末も入れてダシを効かせたこだわりの逸品です。

客は絶賛「昔からの流れじゃない料理を提供している」

独創的な寿司について、お客さんはどう思っているのでしょうか。

(魚の卸売業を営む男性客)
「型にはまった昔からの流れじゃない料理を提供している。新しい、今どきな感じの寿司」

(不動産業社長の男性客)
「セオリーを大事にしながら、新しいクオリティーを求めているのが素晴らしい」

コースの値段は少々高めですが、お客さんは大満足の様子。有名になったきっかけは動画サイトで紹介されたこと。現在では予約の取りづらい店として名を馳せています。

ガリを切る見事な包丁さばきなど、間近で見られるライブ感あふれる調理も人気ですが、変わった味付けも目を惹きます。

(香斗 菊池健斗店主)
「普通は砂糖をあまり使わない。甘くなっちゃうので。脂を甘くしたいというのがあって(砂糖を使う)」

のどぐろは一般的に塩だけで水分を飛ばすことが多いと言いますが、菊池さんは、砂糖を塗って味付けし求肥昆布で締めることで甘い脂を作り出しています。

シャリは、淡泊な白身などに合わせる米酢や、脂身の多いネタには酸味の強い赤酢をネタに合わせて変えるこだわりも。

普段から様々な飲食店を食べ歩いて、得たヒントを自身の寿司に生かしていました。

母親の死をきっかけに料理の世界へ

「鮨 香斗」ができたのは2020年。店の名前は、母親の名前「由香」と自分の名前「健斗」、一文字ずつ取って名付けました。

ある日、菊池さんは久しぶりに実家に帰ると、最初に仏壇に手を合わせました。実は菊池さんが高校2年生の時、母親の由香さんはガンで亡くなったのです。

(香斗 菊池健斗店主)
「親孝行じゃないですけど一緒に背負っていくというか。最初から(店名に母親の名前を)入れると決めていました」

母親の死をきっかけに、元々憧れていた料理の世界へ飛び込みます。

高校卒業後、母親の弟が料理長を務める鹿児島のホテルで和食と洋食を3年修業。その後愛知に戻り、合わせて4つの寿司店を渡り歩き、「鮨 香斗」を立ち上げました。

菊池さんの姉・紗弓さんは、健斗さんの負けず嫌いな性格は母親から受け継いでいると感じています。

「他の店では食べられない、自分ならではの寿司でお客さんを楽しませたい」という強い思いが、古い形にとらわれない若い感性で、菊池さん独自の新しい寿司や料理を生み出す原動力となっていました。

CBCテレビ「チャント!」8月2日放送より

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