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立浪ドラゴンズ“2年目の失敗”と来季への課題~『屈辱と萌芽』の著者として解く

立浪ドラゴンズ“2年目の失敗”と来季への課題~『屈辱と萌芽』の著者として解く
バンテリンドーム(C)CBCテレビ

「まさか」の一言、そんな2023年シーズンだった。ようやく秋風が心地よくなった、10月3日、本拠地バンテリンドームでの最終戦。スタンド席に座りながら、今季も懸命に応援を続けたファンのひとりとして、立浪ドラゴンズ2年目の戦いに思いをはせた。

「まさか」のシーズンだった

ペナントレースを前に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社)という本を出版した。最下位ながらも、多くの若い選手が活躍し始めたシーズンをふり返り、2年目となる立浪ドラゴンズにエールを送るものだった。対談した立浪和義監督も「まずAクラスに入って、チャンスがあればもちろん優勝を狙う」と力強く語っていた。

次に出版するならば、本のタイトルは『歓喜と開花』と心に決めていた。しかし「まさか」だった。開幕直後からほぼシーズンを通して最下位に低迷し、結局、球団史上初の2年連続の最下位でのゴールという『屈辱パート2』となった。“切り札”立浪和義への期待が高かっただけに、ファンのショックは計り知れないほど大きい。

チーム作りの失敗

バンテリンドーム(C)CBCテレビ

再確認しなければならないポイント、それは2023年シーズンの“位置づけ”である。「若手を育てる」年ではなかったはずだ。立浪監督自身「若手にチャンスを与えたのは去年まで。今年は勝てる選手を使う」と語っていた。勝ちにいったのだ。

しかし、新しい外国人選手の不調に象徴されるように、勝てる戦力を整備できなかった。「勝ちにいくシーズン」は、いつのまにか「若手育成のシーズン」へとすり替わっていた。厳しい言い方だが「チーム作りの失敗」である。

象徴的な試合は、開幕2戦目に早くも訪れていた。龍空選手のスタメン落ち。立浪監督は昨季の後半から春季キャンプへと、この20歳の内野手に大きな期待をしていた。開幕戦はショートのスタメン、しかし、2戦目は早々にベンチ。本人の成長不足もあったが、育て切れなかった責任もある。

不可解な采配の数々

そんなチーム状態を受けて、ベンチの采配も揺れ続けた。きちんとローテーションが守られた投手陣に比べて、打線は落ち着きのない状態が続いた。日本球界に復帰したソイロ・アルモンテ選手を「4番」にした“助っ人クリーンアップ”には驚いた。

開幕して、まだ7戦目のことだ。シーズン半ばには「1番・ビシエド」という試合もあった。緊急トレードで移籍してきた宇佐見真吾選手に「4番」を打たせた試合もあった。長くドラゴンズを応援し続けている身として、正直、首を傾げたくなる打順だった。ほとんどが負け試合となり、それは継続されなかった。

監督の前言撤回も目立った。代表的な例は、高橋周平選手のセカンド起用である。立浪監督は「サード1本。セカンドはない」と明言していたはずだ。当の選手たちが、その采配に戸惑っていないかと心配にもなった。

「立浪監督」で勝ってほしい

「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督(C)CBCテレビ

後半戦に入ると、立浪采配に対する声は厳しさを増した。監督の責任を問う声も目立ち始めた。しかし、ドラゴンズファンは、基本「立浪和義」という野球人を愛してきた。そうでなければ、「3代目ミスター・ドラゴンズ」と呼ばれるはずがない。「立浪監督で勝つ」と信じて応援してきた。ただ、ベンチ采配にファンは敏感である。

就任1年目は若手を使うという方針に筋が通っていたため、最下位に終わっても、多くの竜党は納得していた。今季の立浪監督への声は、2年目の采配へ疑問を投げかけているのである。「立浪で勝つ」という強い期待があるからこそ、その裏返しで、厳しい声をあげるファンも多かった。それが、最終戦セレモニーの挨拶で、立浪監督自らが口にした「私への批判、不満」なのである。

球団主導でのチーム作りを!

阪神タイガースのリーグ優勝が決まった直後、球団は「立浪監督の来季続投」を発表した。その時点で、チームは借金29での最下位。契約期間も残っている中、わざわざの続投発表は、周囲の雑音を封じる意味もあったと拝察する。

球団のコメントが、スポーツ紙などでも紹介されたが、その中に「球団としても補強を含めて全面的に協力していく」とあった。「球団としても」ではなく「球団としては」と言い切ってほしかった。「も」というのは二次的な意味合いを持つ。監督が先頭を走るのではない。チーム作りというものは、あくまでも球団が主体であるべきである。

ドラゴンズは、伝統的に「監督」に依存しすぎる傾向がある。星野仙一さんや落合博満さんらマネージメントに長けた監督の時は、チームは強くなるが、そうでない場合にチームが低迷した寂しい歴史も多い。今季は2軍も負け越し37で、2年連続の最下位。チーム全体としての底上げはできていない。監督ひとりに頼らない長期的な戦略を、竜フロントには強くお願いしたい。

“個の力”を結びつけてこそ

バンテリンドーム(C)CBCテレビ

来季への楽しみは多い。打つ方では、岡林勇希、石川昂弥、そして、細川成也の3選手が規定打席をクリアして、当然レギュラーに入ってくるだろうし、大島洋平選手も健在である。あとは大砲がほしい。それは、他球団からの日本人選手でも、外国人選手でもかまわない。

投げる方では、先発ローテーションに、新たに梅津晃大投手や根尾昂投手も入ってきそうである。エース大野雄大投手の復活も楽しみだ。来季への希望の光は多い。必要なのは、そんな“個”を結びつけて“強い集団”にする戦略と実行力である。2年連続最下位の屈辱を忘れずに、秋季練習から春季キャンプへ、今度こそ徹底的に鍛え上げてほしい。

本拠地最終戦では、堂上直倫ら4選手が、気持ちのいい涙と共に、竜のユニホームに別れを告げた。ドラゴンズの変化は、ますます加速している。時代の波に乗り遅れない、そんなチーム作りに期待しながら、2023年最後のドーム観戦を終えた。立浪ドラゴンズ、待ったなしの3年目はすでに始まった。                           
  
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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