検証・立浪ドラゴンズ開幕1か月~誤算あり、拙攻あり、ミスあり、その出口は?

検証・立浪ドラゴンズ開幕1か月~誤算あり、拙攻あり、ミスあり、その出口は?

ドラゴンズファンにとっては、重苦しい春が過ぎ、季節は初夏へと向かおうとしている。2023年のペナントレースが開幕してまもなく1か月。本拠地バンテリンドームで阪神タイガースには勝ち越したものの、立浪和義監督の2年目、前年の最下位から逆襲を狙う中日ドラゴンズの苦しい戦いが続く。ここまで7勝11敗で4つの負け越し。それは、大いに期待してシーズンを迎えた竜党のストレスでもある。(成績は2023年4月23日現在)

立浪竜に訪れた誤算の数々

「サンデードラゴンズ」より田中幹也選手©CBCテレビ

誤算は多かった。春季キャンプ後半に、岡田俊哉投手が大腿骨折という大けがをして以降、次々とけが人が出た。チーム編成上で、最も痛かったのは、立浪監督が「開幕スタメンのセカンド」と期待していた、ドラフト6位ルーキーの田中幹也選手である。オープン戦で右肩を脱臼して、修復手術をした。今季の大きなテーマだった「センターラインの固定」も仕切り直しとなった。

WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)後に、キューバ代表チームに参加していたジャリエル・ロドリゲス投手が、予定通り来日しなかったことも痛い。シーズンに数々の誤算は付き物だが、田中選手とジャリエル投手の離脱は相当なダメージだったはずだ。

日替わり打線が続いた

「サンデードラゴンズ」よりソイロ・アルモンテ選手©CBCテレビ

それでも、オープン戦を通して活躍したドラフト7位ルーキーの福永裕基選手がセカンド、昨季の後半に成長を見せた龍空選手がショート、そして、新外国人選手のアリスティデス・アキーノ選手が「4番」でライト、この開幕戦の布陣は、十分に期待を持てるものだった。

開幕の讀賣ジャイアンツ戦、9回表に再逆転して勝った時は「今年のドラゴンズは違うぞ!」と歓喜したものだ。しかし、その後、打線から快音が聞かれなくなった。無得点だったのは早くも6試合。それに呼応するかのように、ベンチは毎試合のように打順を入れ替えてきた。

開幕3戦目にして、大島洋平選手とダヤン・ビシエド選手がスタメンを外れことにも驚いた。アキーノ選手も5試合終えたところで「4番」を外れて、ビシエド選手が入った。さらに次の試合では、3年ぶりにチームに復帰したソイロ・アルモンテ選手が「4番」に入った。新戦力のオルランド・カリステ選手含めて、外国人選手ばかりのクリーンアップも登場した。しかし、いずれも決め手がなく、打線の日替わりが続く。「臨機応変」は分かるが、未だ2023年ドラゴンズ打線の「スタンダード」を見せてもらっていない。

ミス多ければ勝てるはずなし

「サンデードラゴンズ」よりアリスティデス・アキーノ選手©CBCテレビ

立浪監督は2年目の抱負として「しっかりとした野球をやる」と語っていた。しかし、その大切なベースとなるはずの“守り”にミスが多すぎる。ここまで17試合で、失策数は13、リーグ最多どころか12球団でも最多である。

特に、外野に入るアキーノ選手の守備には、何度「あっ!」と叫ばされたことか。打球をグラブに当てての落球は論外。もちろん本人も一生懸命プレーをして、守備練習に力を入れているはずだ。

しかし、プロ野球は“結果”である。入場料を払って球場にやって来るファンに見せるものは“プロの技”であるはず。この他の野手にもエラーが多く、また、記録に残らないミスも目立つ。開幕直後という時期だけに、シーズンオフから春季キャンプ、一体どんな練習をしてきたのか、とファンとしては嘆きたくもなる。

新たな「エースと4番」誕生へ

「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手©CBCテレビ

希望の光もある。足のけがから1年ぶりに1軍のグラウンドに帰ってきた石川昂弥選手である。立浪監督は、4月14日の讀賣ジャイアンツ戦から、復帰早々の石川選手を「4番・サード」でスタメン起用した。この試合から、不思議に打線は落ち着き、チーム全体も落ち着いた印象だ。勝ち方も良くなった。

4月20日の神宮球場で、石川選手がバックスクリーンに放った今季第1号のホームラン。軽く振り抜いただけに見える打球の弾道は、石川選手がやはり“ただものではない”と見せつける当たりだった。チーム上昇への“号砲”となってくれればいいと願う。

投げる方では、エース大野雄大投手が左ひじの手術のためマウンドを離れた。しかし、開幕投手として145球の熱投を見せた小笠原慎之介投手、WBC“最年少侍”高橋宏斗投手が(※「高」は「はしごだか」)、力強い投球を続けている。新たな「エースと4番」、これが確立できていけば、2023年の立浪ドラゴンズが、ようやく本格的に始動することになるはずだ。

近づくゴールデンウイーク、球場へ応援に駆けつける竜党も多い。ペナントレース開幕を前にして、立浪監督は選手たちに対して「ピンチでもチャンスでも、強い気持ちで」と檄を飛ばした。「強い気持ちで」その言葉をどんな試合でも忘れてほしくない。同時に、2年目の立浪ドラゴンズに注がれるファンの視線には、1年目とは違う厳しさがこもっていることも、どうか忘れずに戦ってほしい。                      
  
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】 

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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