強いのか?弱いのか?与田ドラゴンズ開幕2週間の納得と「なぜ?」

強いのか?弱いのか?与田ドラゴンズ開幕2週間の納得と「なぜ?」

新型コロナウイルスの影響で3か月遅れの開幕となった2020年プロ野球ペナントレース。中日ドラゴンズは、シーズン120試合の10分の1となる12試合を戦った。
そこから見えてきたものは?

開幕勝ち越し「今年は違うぞ」

開幕戦を「たかが1試合」と見るか「されど1試合」と見るか、これは勝敗という結果に大きく関わっている。
シーズン開幕戦、雨中の神宮球場での乱打戦をドラゴンズが制した時、「今年は違うぞ」と喜んだドラゴンズファンは多かった。1点差で負けたゲームが27試合、サヨナラ負けは12試合もあった昨シーズンの悪夢が頭をよぎりながらも、4年ぶりの開幕戦勝利は嬉しいものだった。「去年なら負けか引き分けだった」と、結果論として「されど1試合」に1票を投じて喜ぶ。
開幕3戦目に好投した2年目の梅津晃大投手の試合後の言葉「今年のドラゴンズは違うぞと見せたかった」に竜党は大きくうなずいた。開幕カード勝ち越しも実に8年ぶりだった。しかし・・・。

苦戦「昨季と何が変わったのか?」

横浜DeNAベイスターズと広島東洋カープ相手に6試合を戦い1勝5敗。「あと1本が打てない」「あと1点が取れない」ここ数年Bクラスに低迷するドラゴンズの姿を、あらためて見せられた気分だった。
気になったことは「去年と何が変わったのだろうか?」という点である。スタメン野手の顔ぶれはほとんど同じ。さらに6試合すべてで打順が替わっていた落ち着きのなさも気になった。今季めざしていたはずの“攻撃型の2番”がほぼ毎日入れ替わったことも残念だった。6連戦で5人の選手が「2番」に入った。
ただ、1勝を挙げた吉見一起投手の投球には拍手を送りたい。かつてのエースも35歳、本人も胸に期すものがあっただろうが、そのマウンドには後に続く投手たちが見習うべきものが多々あった。通算90勝54敗。勝ち越してこその“エースの座”である。

虎に3連勝で差した光

チームが少し落ち着いたと感じたのは6月最終日の阪神タイガース戦。2番の平田良介選手はじめキャッチャー以外の野手は開幕スタメンと同じメンバーで同じ打順に戻った。
柳裕也投手の粘投に、ソイロ・アルモンテ選手の“技あり”満塁ホームランによって快勝。大量リードにもかかわらず、ライデル・マルティネス、そして岡田俊哉と締めたリリーフ陣の起用も加えて、今シーズンの浮上への“起点”となり得るゲームだった。
7月1日の2戦目は開幕初ローテーション入りの3年目山本拓実投手、2日の3戦目はドラフト3位ルーキー岡野祐一郎投手が先発でそれぞれ白星。本調子でない虎相手とはいえ3連勝でチームも勝率5割に復帰した。
しかし、3戦目の先発マスクが木下拓哉から加藤匠馬に替わったことに驚いたファンは多かった。「連勝」そして「猛打賞」だったキャッチャーを替える理由は何?
この試合ではもうひとつ、9回の抑え投手が岡田でなくマルティネスだったこと含めて、「正捕手」「抑えの切り札」を決めるという宿題は未だ結論なきままである。答が見えるのはいつなのだろうか?

ベンチ采配が問われるシーズン

チームの戦いには時おり歴史が顔をのぞかせる。
開幕戦は、1982年に近藤貞雄監督の下で優勝した“野武士野球”の豪快さを思い出させた。梅津、山本、岡野ら若手先発投手が少ない得点差で勝利を得た試合は、2000年代に落合博満監督の下で築き上げた“1点を守り切る野球”を彷彿させた。
これから続く2020年シーズン、球団史に存在しなかった新たな与田スタイルの野球がお目見えした時、スローガン「昇竜復活」が現実味を帯びてくるし、そうでなければ120試合は、あっという間に終わってしまうだろう。
与田剛監督自らがその右腕でクジを引き当てたドラフト1位の2人、根尾昂と石川昂弥両選手もウエスタンリーグで連日活躍している。「チームに勢いをつける起爆剤」はいつの世も“若い力”である。
新型コロナ禍の2020年シーズンは、これまで以上に“采配力”が勝負となりそうだ。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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