「ボールが大きく感じる…」ドラゴンズ山井大介の投球を打席で見た夢の時間

「ボールが大きく感じる…」ドラゴンズ山井大介の投球を打席で見た夢の時間

秋晴れの日、私は大ベテランのキャッチボール相手になっていた。最初は10m。そこから徐々に50mまで距離をとった。どれだけ離れても綺麗な回転のボールが胸元に届く。

山井大介が2019年に向けて一歩を踏み出した。

「40歳を過ぎて現役を続ける選手はほとんどが名球界メンバー。僕なんて通算59勝。全然たいしたことのないピッチャーです」。背番号29は常に謙遜する。

しかし、彼ほどインパクトのある活躍をした選手がいるだろうか。2007年の日本シリーズ第5戦。伝説の山井・岩瀬の完全試合。2013年にはノーヒットノーラン。2014年は最多勝と最高勝率の2冠。2018年は史上9人目の40代完封勝利を挙げている。

「誇れるものは何もないですけど、あえて言うならば、プロ野球の投手が経験することをほとんどしたということですかね」。先発、敗戦処理、セットアッパー、抑え。優勝も味わい、怪我に苦しみ、開幕投手も務め、FA権も取得し、今は引退がちらつく。

プロ野球選手と練習する夢の時間は続いた。途中で元中日の湊川誠隆氏が合流。「湊川、ちょっと座ってくれないか。若狭さんは打席に入って下さい」。なんと投球練習が始まったのだ。

まず、ストレートに驚いた。ボールが大きく感じる。「山井さんの真っ直ぐは回転数が多いから、手元で伸びるし、大きく感じますよね」。湊川氏が解説。

そして、カーブ。一旦、真上に跳ね上がったボールは激しい縦回転で落ちてくる。「僕のカーブは抜くんじゃなくて、切って投げるからかなり回転が多いんです」。今度は山井が解説した。

さらに伝家の宝刀スライダー。今度は斜め回転。右打者の背中に当たりそうなボールが外角低めに決まった。

青空に描く背番号29の来年の姿

不惑を迎えても、球には力がみなぎっていた。私は聞いた。「どこで力を入れるんですか?」「いや、力は入れません。トップ(投げる時の手首の位置)さえ決まれば、自然にボールは走ってくれる。逆に力めば力むほど球は弱くなります」。

さらに山井は続けた。

「若狭さん、さっきのキャッチボールの時、力むと開きが早くなって腕が体から離れていました。すると、腕が振り遅れて、球はシュート回転します。そこを注意すると、もっと良くなるはずです」。

山井は「技術を言語化」できる。しかも、誰もが分かる平易な言葉で。経験値の高さがそうさせるのだ。将来、彼は必ず素晴らしい指導者になる。しかし、それはまだ先でいい。

与田剛監督が中日時代に付けた背番号は29。私は澄んだ青空に想像した。来年、衰え知らずの右腕が新監督にウイニングボールを渡す瞬間を。

【CBCアナウンサー若狭敬一
CBCテレビ「サンデードラゴンズ(毎週日曜午後0時54分放送)」、CBCテレビ「スポーツLIVE High FIVE!!(毎週日曜午後1時24分放送)」、CBCラジオ「若狭敬一のスポ音(毎週土曜午後0時20分放送)」、CBCラジオ「ドラ魂キング」(毎週金曜午後6時放送)ほか、テレビやラジオのスポーツ中継などを担当】

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