侍ジャパン髙橋宏斗がWBC前にマエケンと熱論!~投手にとって大切なこと
竜の若き剛球投手がWBCの舞台へ!中日ドラゴンズの20歳、髙橋宏斗が、最年少で侍ジャパンに選ばれた。その髙橋は、CBCテレビの特別番組であこがれのメジャーリーガー前田健太と対面し、エースとしての姿勢やお互いの勝負球など、熱い野球談議に盛り上がった。米国で活躍するマエケンが、後輩右腕に語った「投手にとって大切なこと」その極意とは? (敬称略)
待ちに待った初対面
きっかけは、米国からのTwitterだった。
「ドラゴンズの背番号19の投手、良くないですか?」。
ミネソタ・ツインズの前田健太がつぶやいた言葉。それを知った髙橋投手は大感激し、「野球のことをいろいろ聞いてみたい」と対談する日をずっと夢見ていた。そして、ついにその日がやってきた。
明らかに次元が違う投手
前田は、自らのTwitterでのつぶやきについて、こう語った。
「明らかに次元が違う、めちゃめちゃいいピッチャーがいるなというのが最初の印象」
それは、ドラゴンズ春季キャンプ紅白戦の映像を、YouTubeで見た時だったそうだ。かつて投げ合ったことのある背番号「19」吉見一起さんは、すでに現役を引退している。誰だろうか?調べたら「髙橋宏斗」という若い投手の名前が浮かび上がってきた。
髙橋は髙橋で、その前田の言葉に感極まった。
「(前田のTwitterを)何回も見て、何回もスクショ(スクリーンショット)して」
2年目での飛躍を支えたもの
広島東洋カープ時代には、最多勝2回、最優秀防御率3回、そして最多奪三振2回と、投手タイトルの常連だった前田は、投手にとっての最高の栄誉でもある沢村賞にも2度輝いている。日米通算156勝を挙げている前田だったが、高校からプロに入った1年目は、1軍での登板がなかった。実は髙橋もまったく同じだった。1軍登板がなかったどころか、2軍でも0勝5敗と勝ち星なし。前田と髙橋、高卒2年目で大きく飛躍した、その理由を語った。
「期待されたから」前田の答えは明解だった。そして、背番号が入団時の「34」から、エースナンバーである「18」に変わったことが大きかったと語る。
「そのシーズンのカープは弱かった。6月か7月には早くも消化試合になっていた。そこで1軍に上げても意味はないというのがチームの判断。2軍で1年間ローテーションを守るように球団から言われた」
そして、2年目を迎える前田に、球団が用意したものが、背番号「18」だった。
「18番をつけて、2軍にはいられない。球団の期待に応えたい。オフシーズンもキャンプも、絶対に1軍で活躍すると取り組んだことが、いい結果につながった」
前田は2年目に19試合に登板して、9勝2敗の好成績を挙げた。
一方の髙橋も、2年目に同じく19試合に登板した。6勝7敗だったが、150キロを超える剛球はさえわたり、あわやノーヒットノーランかという試合もあった。134奪三振は堂々のリーグ3位である。2年目の活躍を支えたものは何か?
「1年目の怖さ。2軍でも1勝もできず、防御率も7点台。これはまずいと思ったし、いろいろな人から『お前、大丈夫か?』と心配されながらも、相当悔しい気持ちを持っていた」
この髙橋の言葉を聞いた前田は、高卒1年目で1軍に上がれないことを悔しく思う選手はそんなにいないと褒めながら、悔しさを持つことはとても大切なことだと、髙橋に語った。それぞれの2年目の飛躍、支えたものは「期待」であり「悔しさ」だった。
投手にとって大切なこと
日本でも米国でも活躍を続ける前田。ドラゴンズの、そしてWBCの舞台を足場にして、日本のエースをめざす髙橋。それぞれが“投手として最も大切なこと”を語った。髙橋が挙げたのは「気持ち」という言葉だった。
「1軍で投げ始めて6試合ぐらいになると、大丈夫かな?この打者めちゃめちゃいいな、などと思って投げた。結果もついてこない。気持ちの面で負けていた。後半戦になるとよし行ける!と思った時はいい結果が出た。気持ちの面で負けていては勝てない」
そんな20歳の髙橋に、前田は「信頼」という言葉を挙げて、自らの思いを説いた。
「チームから信頼されること、ファンから信頼されること、これが大切。大事な試合をまかされる。髙橋が投げるならば勝てると思わせること。信頼してもらうためには、日頃の練習と野球に取り組む姿勢がとても大事だと思う」
「気持ち」と「信頼」この2つから、共通の言葉が浮かび上がる。それは「心」。マウンドは孤独な舞台であり、そこに立つ投手がボールを投げない限り、野球のゲームは始まらない。髙橋が侍ジャパンというチームから「信頼」を得る活躍ができるのかどうか、WBCを戦うその姿を、前田はじっと見つめているに違いない。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。