CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

MENU

「ホームズと乱歩の融合」書評家おすすめの本格ミステリー小説とは

「ホームズと乱歩の融合」書評家おすすめの本格ミステリー小説とは

木曜日の『CBCラジオ #プラス!』では、書評家の大矢博子さんがおすすめの書籍を紹介しています。9月2日の放送では、この夏イチオシの翻訳本格ミステリーとしてウィリアム・ハッセー『名探偵ジェリコ』(文春文庫)を取り上げました。移動遊園地を舞台に、現代社会の差別や排外主義と、シャーロック・ホームズや江戸川乱歩を思わせる王道ミステリーが融合した一冊。大矢さんが読みどころを解説しました。聞き手は永岡歩アナウンサーです。

関連リンク

この記事をradiko(ラジコ)で聴く

あらすじ

物語の主人公は、元刑事のスコット・ジェリコ。かつては非常に優秀な刑事でしたが、ポーランド系移民のこども3人を惨殺した容疑者に過剰な暴力を振るったことが問題となり、刑事を辞めることになります。
現在は、殺されたこどもたちの父親が経営する移動遊園地で、特に何をするでもなく暮らしています。

そんなジェリコのもとに、歴史家を名乗る人物から事件調査の依頼が届きます。依頼されたのは、半年前に起きた猟奇殺人事件です。男性の頭部が切り取られ、代わりに犬の頭が取り付けられていたという異様な事件でした。

さらに歴史家は、この事件がスペインで起きた老女殺害事件、そして直近に起きたインド系の若い女性の殺人事件ともつながっていると指摘します。 その根拠となるのが、150年前に起きた移動遊園地の芸人たちの連続殺人事件です。
そして、当時の被害者の中にはジェリコの先祖も含まれていた――。

現在と150年前の事件が交錯しながら、ジェリコが謎に迫っていきます。

移動遊園地という文化

大矢さんがまず読みどころとして挙げたのが、ヨーロッパの移動遊園地です。

永岡「日本じゃないよね」

大矢さんは、日本では遊園地といえば常設型が一般的なのに対し、ヨーロッパでは移動遊園地が主流だと説明しました。観覧車やメリーゴーラウンドなどの大型遊具も分解・組み立て式になっており、トレーラーに積んで町から町へ移動します。そこで働く人たちは定住先を持たず、移動遊園地とともに旅を続ける生活を送っています。

こうした人々は「トラベラー」と呼ばれます。
日本とは異なる文化そのものが、本作の興味深いポイントだと語りました。

現代社会の問題と古典的ミステリーの融合

『名探偵ジェリコ』では、移動遊園地をめぐる文化だけでなく、現代社会が抱える差別の問題も色濃く描かれています。トラベラーたちは長く差別を受けてきた人々として描かれ、主人公のジェリコ自身も同性愛者であることから、差別に直面します。
さらに、イスラム教を排斥する人物や、ポーランド系移民が殺される事件なども登場し、現代の排外主義や差別主義が物語の中にくっきりと浮かび上がります。

一方で、大矢さんが強調したのは、本作が社会派ミステリーだけではないという点です。

大矢「現代的な問題を扱いながら、実はこの事件の謎解きって、シャーロック・ホームズばりの、非常に古典的で王道の本格ミステリーなんですね」

さらに150年前の事件では、見世物小屋の芸人たちが登場します。日本でも昭和初期ごろまで旅回りの芸人や見世物小屋が存在していましたが、本作ではその描写がおどろおどろしいとのこと。

大矢「江戸川乱歩とか、そういう横溝正史の小説を読んでるみたいな」

シャーロック・ホームズを思わせる本格推理と、江戸川乱歩や横溝正史を連想させる怪奇的な世界観がひとつになっているといいます。

しかも、現代社会を描いているにもかかわらず、作品全体にはどこか「作り物めいた感じ」があります。主人公のジェリコ自身が、事件について「まるでミステリー小説みたいだ」と感じるほどで、その劇画的な雰囲気も本作の魅力です。

そして肝心の謎解きについても、大矢さんは「なんでそれに気づかなかったんだろう」と言いたくなるようなサプライズがあると絶賛。
現代社会の問題と、古典的な王道本格ミステリー、その両方を存分に楽しめる作品と紹介しました。

読書会も開催

この『名探偵ジェリコ』は文春文庫から1,430円で発売中です。

また、同作の読書会が9月26日(土)午後2時から名古屋駅周辺で開催されます。
読了した参加者同士で、完全ネタバレありで感想を語り合う会で、文藝春秋の編集者も来場する予定です。作品の裏話なども聞けるかもしれません。
参加費は1,000円です。

気になった方は「名探偵ジェリコ名古屋読書会」で検索して、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
(ランチョンマット先輩)
 

この記事の画像を見る

オススメ関連コンテンツ

PAGE TOP