仏像マニア興奮!興福寺・木造弥勒如来坐像が普段隠している背中を披露
毎週木曜日の『ドラ魂キング』では、CBCの佐藤楠大アナウンサーが仏像に関するトピックを紹介します。11月6日の放送で紹介したのは、興福寺北円堂の木造弥勒如来坐像です。今しか見られない「背中」について、熱弁する佐藤アナです。
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現在東京国立博物館で開催されている特別展『運慶 祈りの空間―興福寺北円堂』を見学した佐藤。
奈良県奈良市登大路町にある興福寺は奈良時代に建てられました。木造弥勒如来坐像は北円堂にあります。
興福寺と北円堂も治承4年(1180年)、南都焼き討ちに遭い焼失し、承元4年(1210年)に再建されました。その再建を任されたのがカリスマ仏師・運慶。
復興当時の北円堂の内部を再現したのが今回の特別展です。
弥勒如来とは?
釈迦が入滅してから56億7000万年後に悟りを開いて多くの人を救うために現れるのが弥勒菩薩。
佐藤「この弥勒菩薩が仏になった姿が弥勒如来なんです。菩薩からランクアップしたわけです」
国宝・木造弥勒如来坐像は座っている姿で140センチほどの高さ。鎌倉時代、すでにベテランだった運慶が弟子たちの指揮を執って作ったそうです。
佐藤「基本的には非公開で、春と秋に興福寺で期間限定で見られるんですが、この秋は、何十年ぶりかで修理をして東京国立博物館に展示されています」
運慶渾身の作
佐藤によれば弥勒如来坐像の見どころは二つ。
ひとつは運慶渾身の一作であるということ。
佐藤「国を挙げて興福寺を再建する一大イベントだったので、『運慶君、頑張れよ』と時の偉い人たちが、運慶の肩に全てを任せたわけです」
運慶が素晴らしい働きをしたおかげで、弥勒如来坐像は現在国宝として残っています。
佐藤「奈良時代に作られた仏像を復刻するために、運慶は当時の言い伝えや書物から、運慶がこんなのじゃないかと作り出したわけです。復元するのは難しい」
復元の失敗はいろんなところにあります。
例えば2012年、スペインで、キリストの肖像画が猿になってしまったこともありました。
インナーシャツ着用
佐藤「面白いのが、ただ奈良時代当時の様式を再現しただけではなく、鎌倉時代の最先端や運慶の作品の特徴も取り入れていることなんです」
弥勒如来坐像はインナーシャツのようなものを着ているのが特徴だとか。
首元に3本の皺があり、鎖骨の内側の始まり辺りからインナーが見えるそうです。
佐藤「奈良時代の仏像の特徴で、内側にこういうのを着てるのが多いんです」
体格にも個性が。東大寺の大仏に比べ、この弥勒如来坐像はウエストがくびれています。これが鎌倉時代に考えられたリアリティーのある体格。
佐藤「表情は人間っぽくぷっくらしてますね。これは運慶らしい作りなんですよ。単に奈良時代の物を真似しだだけでなく、時代の先端と個性を入れたところに運慶の能力が見えます」
背中丸見え
もう一つの見どころは期間限定公開の背中。
佐藤「仏像って、たいてい後ろにバーンってキラキラ輝いてる光背が付いてるじゃないですか。あれって基本、別々に外れるんです」
興福寺で見る時には光背が付いている状態ですが、今回東京国立博物館にで展示されているのは、修理されている本体のみ。そのため滅多に見られない背中が見られるそうです。
背中の丸みなどに、運慶ならではの人間らしさが出ているという佐藤。
佐藤「あとは螺髪。くるくる巻きの髪の毛の後ろの部分がポロポロと取れているところもあるんです。ここに年月の流れを感じます。後姿は今回でしか見られない可能性があるんです」
東京国立博物館で開催されている特別展『運慶 祈りの空間-興福寺北円堂』は11月30日までの開催。滅多に見ることのできない背中に注目です。
(尾関)
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