青森には「マイ缶詰」を贈る文化がある?

『CBCラジオ #プラス!』の「日本全国にプラス!」では今、全国に起こっている話題を取り上げます。8月26日放送は青森県弘前市の話題です。青森にはマイ缶詰といって、自分で缶詰を作って人に贈る文化があるそうです。青森県は明治以降に缶詰の一大生産地として発展し、かつて「缶詰王国」と呼ばれていたほど。缶詰を製造する技術は青森県各地の人々の暮らしの中に深く根付いています。光山雄一朗アナウンサーが青森県立郷土館学芸員の増田公寧さんに伺いました。
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そもそも「マイ缶詰」とは、どんなものでしょうか?
増田「自分で山から取ってきた山菜、きのこで作るオリジナルの缶詰です。青森では自分で缶詰を作って、他人にあげたりとか、もらったりする習慣が盛んです。台所にマイ缶詰が並んでいる家も多いです。
私の家にもいま約20缶あります。多い人は年に数百缶くらい作る人もいます」
増田さんも山菜、きのこを缶に詰めているんですか?
増田「私自身はしないですが、周りの者は山に行って自分で取ってきてその缶詰をくれたりすることはよくあります」
加工場で作る
どうやって缶詰を詰めるのでしょうか?
増田「県内にマイ缶詰を作ってくれる加工場がいくつもあります。山菜やきのこを自分で下茹でして、缶に詰めてその加工場にもって行けば、たった一個でも缶詰にしてくれます」
ただ魚とか臭いの強いものはダメだそうですが、基本的には果実などなんでもいいそうです。
増田「前の日に持っていけば、その日にやってくれて、次の日にはもう受け取れます」
県内で盛んなところはありますか?
増田「どちらかというと、青森県の西側の地域、津軽地方が盛んです。津軽地方の人が山から取ってきたもので作ります。
ただ、あげたりもらったりは、地域に関わらず青森県の東側の人にあげたり、遠い地域の人に送ったりはあります」
自分で作ったマイ缶詰は、お中元、お歳暮や返礼品として使うそうです。
ちなみにマイ缶詰を作るとき、加工場にどれくらい払うのでしょうか?
増田「コロナ前までは百何十円くらいでしたが、その後は物価も高くなり、今は二百数十円くらいでやっているところが多いです。缶代と加工賃込みです」
広まった2つの理由
なぜ「マイ缶詰」は広がったのでしょうか?
増田「背景は大きくわけて2つくらい考えられます。
ひとつは、青森みたいに積雪の多いところですと、冬場にいかに食べ物を保存するかが切実な課題でした。
塩漬けや乾燥など、伝統的な保存方法もありますが、戦前から戦後くらいに、缶詰で保存するという新しいアイデアが農村に広まったようです。
缶詰ですと、長期間保存しても風味も損なわれませんし、持ち運びも便利、見た目もいい。開けたらすぐに使えるといいことづくめです。
もうひとつはお中元、お歳暮、お見舞いの品として、缶詰は昔から人気があります。
手作りのマイ缶詰ですと、お金では買えないし、世界でたったひとつの手作り品という特別感があります。
ですから、青森では大切な人、特別な人への贈り物として、友達、親戚、離れて住む家族にふるさとの季節の味を伝える特別なアイテムとしてマイ缶詰が親しまれています」
根曲がり竹のマイ缶詰
増田さんがもらった缶詰でうれしかったものは何でしょうか?
増田「缶詰の中で一番好きなのは、根曲がり竹というタケノコの缶詰です。煮物にしたり、おつゆに入れたり、焼ソバに入れたり、とにかく自生している自然の味とコリコリしている食感がたまりません。
毎年もらいますが、友達が山奥に入り苦労して取ってきたタケノコで作った世界でひとつだけのマイ缶詰ですので味わいもひとしおです。
また、もらった缶詰をさらに誰かにあげるということも結構あります。青森県内ではそういう風に缶詰がぐるぐるまわっているという感じがあると思います」
(みず)
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