なぜ転売はなくならない?「チケット不正転売禁止法」を考える

『CBCラジオ #プラス!』の「ニュースにプラス!」のコーナーでは、光山雄一朗アナウンサーが気になるニュースを紐解いていきます。6月3日放送のテーマは「不正転売」です。メジャーリーグのチケットやちいかわのハッピーセットの買い占めなど、人気商品の高額転売が立て続けに問題になっています。しかし、一部を除いて転売行為自体が違法になることはありません。どうしてでしょうか。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美先生に解説していただきました。
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「転売ヤー」という言葉があります。オークションなどで定価より何十倍、何百倍の価格で販売して、転売する人で、その人が暴利を得る行為を不正転売と呼んでいます。買い占めなどにより本当に買いたい人が定価で購入できない状況になります。
不正転売をするとどんな罪になるのでしょう?
正木「基本的にどうにもならないです。というのも日本は資本主義経済をとっています。憲法上も職業選択の自由とか営業の自由は保障されています。さらに、契約の面でいえば、誰とどんな契約をするかは原則自由だという契約自由の原則もあります。
価格を決めるのは基本的には需要と供給が働く市場です。なので、ものを安く仕入れて、市場価格で販売すること自体は合理的な行為です。
需要があるが供給がなければ価格が高騰するのは自然な市場原理になるので、転売は大原則では適法な経済活動で、転売すべてを取り締まる法律はないのが現状です」
チケット不正転売禁止法
ただし、チケットに関しては別途『チケット不正転売禁止法』という法律が設けられています。
正木「これは2019年6月にできた法律です。特に音楽などのチケットが高額に転売されるということが問題になっていました。
それは興行主の利益になるわけでなく、転売をする人の利益にしかならない。チケットの適正な流通が阻害されるということで、報道はされていました。法律ができる前は、詐欺罪で立件することで対応していました。
しかし、箱で行なう興行はその集客可能な人数は制限があります。音楽やスポーツなど、エンターテインメントを守るという意味では規制が必要だった。そして、この法律ができました。
とはいえ、対象のチケットはあらゆるチケットではなく、不特定多数に販売されていたり、日時や場所の指定があったり、主催者側から転売禁止と明示されているなど、一定の条件を満たしたチケットのみとなります。
そういうチケットは、興行主の同意がなく定価以上の転売を繰り返し行なう意思をもって業として行なうことが禁止されていて、違反すると1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金、またはその両方を課すとされています」
ただ「本当に行くつもりで買って、でも予定が合わず行けなくなったので、誰かに譲る」ケースは対象外です。あくまで転売目的のものを禁止する法律となっています。
チケット以外の不正転売は?
チケット以外の不正転売はどうなるのでしょうか?
正木「難しいところですが、社会問題になっているのは事実で、企業さんは転売ヤー対策が必須になっています。法律上、転売自体は問題がないとしても、『転売しないでください』と明示されることが増えているし、対応に苦慮しているところは見受けられます。
規制するとしても、どのようなものの、何をどう規制するかが問題になります。社会問題として大きいものにはなっているので、今後、他のものに対してもなんらかの手段で規制せざるを得ない、という議論になる可能性はあると思います」
不正転売を利用しない
われわれ消費者は何に気をつけたらいいでしょうか?
正木「まず理解することが大切です。暴利をむさぼる転売は、需要がなくなり利益が得られなければ、なくなるのが大前提です。
いま時計は需要がなくなって転売ヤーは減っています。
何かを購入する場合は、正規の販売ルートを利用するのが大前提になります。メリットとしては偽物や法律で禁止されたもの、違法なものを買ってしまうリスクを避けられます。
あわせて消費者の側も知識をつける。違法だとか、違法のおそれがある不正転売を利用しないことが大事です。
実は転売を繰り返して仕事として行なうには、古物営業法という許可をとらないといけないですが、それをしない個人や企業が繰り返しやっている可能性もあるので、そういう法律や仕組みを知って、違法なおそれがあるものは利用しない。それによって需要を減らすことが大切だと思います」
光山は「チケットを買った人がライブに行けなくなった場合、正規のリセールサイトがあって、そこにチケットを売るという形も整ってきていますね。なにより不正転売について、われわれは知識を身につけていかないといけないと思いました」とまとめました。
(みず)
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