個人事業主の相続問題。分けられない資産はどうすればいい?
少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。1月15日の放送では、複数の店舗で小売業を営んでいた個人事業主の相続事例を北野誠と松岡亜矢子が三井住友信託銀行 財務コンサルタント竹中秀勇輝さんに伺いました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く承継がうまくいかない2つのポイント
今回竹中さんが紹介するのは、複数の店舗で小売業を営んでいた個人事業主の相続事例。どのような内容だったのでしょう?
竹中「お父様が個人事業を営んでおり、相続人としてお子様3名のうち1名が事業を継がれる予定で、家業の手伝いをされている状況でした」
ところが、事業承継をしている最中に父親が急な病で亡くなってしまいました。
財産分配の話がすんなりまとまらず、事業運営に支障が出て、結果的に事業を縮小せざるを得ない結果に。
竹中さんは、今回の事例がうまくいかなかった2つのポイントを挙げました。
まず、相続資産の大半が店や機械などの事業用資産となっていたこと。
次に、父親が遺言書の作成をしていなかったこと。
そのため、事業を継がないこども2名から財産分与の主張があった時に、事業用資産以外に分ける財産がなかったため分割協議が難航。結果、事業継続に支障が出てしまったのです。
機械や店舗などの分けられない資産
北野「個人事業主の場合は特に気を付けないといけない点がありますか?」
竹中「個人事業主の場合は、事業に使用する資産すべてが本人名義となります。なので、相続が発生した場合は、事業用資産のすべてが法定相続人全員の共有財産となってしまう」
法定相続人全員での遺産分割協議がまとまらないと、後継者自身が事業用資産を自由に使用することや処分をすることができなくなってしまうそうです。
北野「(相続する)機械とかは分けられないもんね」
今回の事例だと、どのような対策をするべきだったのでしょう?
竹中「資産の大半がお店や機械などの資産でしたので、お父様がお元気なうちに事業継続に必要な資産すべてを後継者へ渡す内容の遺言書を作成すること」
そして、他の相続人である事業を継がないこども達には、「事業用不動産の一部を賃貸する」等の対策を行ったうえで、遺言により賃貸用不動産として相続するなどの工夫が有効であったと竹中さん。
事業承継で揉める第三者の存在
北野「なぜ、事業を継がれないお子様2人は理解を得られなかった?」
竹中「実は事業を継がれないお子様2名は、当初後継者が事業を継続するのであれば事業用資産が後継者へ集中することに賛成していたんです」
なぜ途中から話が変わったのでしょう?
竹中「事業を継がれないお子様はご結婚されており、各々の配偶者から財産分与の意見があったことから考えが変わられたようです」
北野「揉める元は相続人以外の第三者!もらえるんだったらもらいたいってなるんでしょうね」
今回の事例でも、父親が苦労して事業拡大をしてきた経緯をこどもたちは幼いころから見ていたので「事業継続の苦労は理解してくれて当然」と父親と承継者は考えていたそうです。
北野「個人事業主の相続は大変なんですね」
竹中「今回は不動産という換金可能な資産が残っていましたので、事業縮小という残念な結果とはなりましたが、何とか協議がまとまりましたが、分ける財産がない場合は事業継続すらできない可能性もあります」
いくら「ウチは承継問題で揉めない」と信じていても、第三者が入ると予想外の結果になることが多いようです。北野も「早め早めに」と遺言書作成を促しました。
(野村)