昔へタイムスリップ!写真で見る昭和の名古屋はエモかった
いつも何気なく生活している私たちの街。通勤で歩く道、仕事で通うビル、お気に入りのカフェ、過去はどんな姿だったのか気になったことはありませんか?10月12日放送のCBCラジオ『石塚元章ニュースマン!!』では、今月発売される定点写真で楽しむ今昔写真集『名古屋タイムスリップ』(風媒社刊)を手がけた、フリー記者・編集者の長坂英生さんをゲストに招きました。聞き手はCBC論説室の石塚元章特別解説委員と加藤愛です。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く幻の大衆紙『名古屋タイムズ』を受け継いで
長坂英生さんは愛知県岡崎市生まれ。
大学卒業後の1980年に『名古屋タイムズ』に入社し、社会部記者として活躍。2008年に名古屋タイムズが休刊した後は、名古屋タイムズアーカイブス委員会を立ち上げ、フリーの記者・編集者として活動中です。
名古屋タイムズアーカイブス委員会は、終戦直後から続いた『名古屋タイムズ』の膨大な写真や記事などの遺産を保存し、写真集や展示などによってその歴史を伝えることを目的とした任意団体です。
『名古屋タイムズ』休刊の際、大量の写真のネガはすべて破棄される予定でしたが、長坂さんは非常に歴史的価値のある資料を廃棄してしまうのはもったいないと考え、著作権を継承して保存を続けることにしたのです。
ネガは記事に使用されなかった分も含めて、小型トラック2台分くらいの量があったそうです。
記事に使われなかったネガも重要で、「写真によって伝えたい情報以外にも、そこに至るまでの背景や社会風俗、人々の服装や街の様子などの全体を残さないと意味がない」と語る長坂さん。
『名古屋タイムズ』は名古屋市内に加え、尾張部や三河部にも支局があり、さらに岐阜や三重方面でも取材しており、膨大な資料が残されています。
写真が伝える歴史と変遷
ネガは劣化しやすため、名古屋市の博物館に依頼して大半を保存してもらっているようです。
写真集を出版する際、テーマに基づいた写真を探しつつ、こまめに整理をしているのだとか。
長坂さんはこうした資料から映画や野球、サブカルチャーなどをテーマに、10冊ほど出版してきました。
今回の新刊は、名古屋市の今と昔に焦点を当てた『名古屋タイムスリップ』という写真集。
来年で昭和が終わってから100年が経つことを記念して、名古屋の過去の写真と、その場所の現在の写真とを対比して掲載しています。
昭和30年、40年頃のモノクロの写真と、同じ場所で撮られた令和の現在のカラー写真を見比べることができる興味深いものとなっています。
建物などの都合により全く同じ位置、アングルから撮ることができなかった写真もあるそうですが、それもまた都市の変遷を感じる要素になっています。
加藤「栄も昔は木造家屋が立ち並んでいて、高層ビル群がないから今と全然景色が違ったんでしょうね。看板の『大須』の文字も左から右に書いてある!」
写真集を見ながら、現在とは全く違った雰囲気を見せる街の様子に興味津々の加藤。
3つの気づき
長坂さんには、写真集を作成していて気が付いたことがあるそうです。
ひとつ目は、現在の街の街路樹の多さ。
同じ場所、同じアングルで写真を撮ろうと思うと建物が隠れてしまうこともあるほど、昔の写真にはそれほど見られなかった街路樹が現在は青々と生い茂っていたのだとか。
長坂「緑化政策の一つの成功の形なのかもしれないが、ちょっと不気味な感じがするほど」
本来自然は繁華街の発展に伴って少なくなるものですが、繁栄に逆行するように緑も茂っていく不自然さに、どこか不思議な感覚を覚えたようです。
ふたつ目は、建物のデザインについて。
昭和20・30年代は戦前からの重厚でデザイン性のある建物もまだ多く残っていたそう。
それが時代とともにどんどん減り、今ではのっぺらぼうで味気のない建物ばかりになっていると言います。
石塚「代り映えがしない、みんな同じような顔をしたビルばかりになっちゃっているんですかね」
「かつての建物の外観がそのまま残っていたら、かっこよかったんじゃないかなぁ」と、少し残念そうに語る長坂さんです。
そしてみっつ目は、長い年月が経っても変わらない道の存在。
昔の写真から同じ場所を探そうと思うと、建物や街の風景が違うために苦労しますが、道は変わらないことに気づいて道路を辿って探したのだとか。
道のほかにも、石垣や道端のお地蔵様なんかも昔から変わらずそのまま残っていることが多いようです。
石塚が「意志が強いんですね(笑)」と締めくくりました。
かつての姿を知りたい方は、長坂さんの写真集を手に取ってみてはいかがでしょうか。
(吉村)