10月に制度改正!「ふるさと納税」をめぐるゴタゴタ
先月22日、LINEヤフーは2024年冬に「Yahoo!ふるさと納税」のサービス提供を開始すると発表しました。ネット通販大手アマゾンジャパンも、2025年春にふるさと納税サービスへの参入を計画していると報道されるなど、「ふるさと納税」戦国時代を迎えようとしています。その一方で、今年10月から「割引制限」がかかるなど制度も変更となります。9月10日放送『つボイノリオの聞けば聞くほど』(CBCラジオ)では「ふるさと納税制度」について、小高直子アナウンサーが解説しました。
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「ふるさと納税制度」が始まったのは2008年のこと。
利用者が好きな自治体を選んで寄附金を送り、その自治体は原則、お礼として特産品などを送る仕組みとなっています。
利用者の所得などに応じた上限額までの寄附を行なうと、寄附金額から自己負担額2,000円を引いた金額が所得税・住民税から控除されます。
先月2日に総務省が公表した調査結果によりますと、昨年度に全国の自治体へ寄附された金額は初めて1兆円を超え、利用者数も約1千万人と、いずれも過去最高を記録。
ただ、住民税納付義務のある人のうち、ふるさと納税を行なっている人は2、3割程度と言われているため、まだまだ成長の余地がある市場と見られていることから、冒頭にありました大手企業の参入が計画されているというわけです。
ポイント還元が禁止される
大手企業同士で利用者の争奪戦が繰り広げられていますが、実は戦いは企業間だけではありません。
最近では楽天と総務省の間でも戦いが起こっています。
ふるさと納税を利用されている方はご存知ですが、寄附はそれぞれの自治体へ直接申し込むのではなく、楽天などの仲介サイトが多く利用されています。
その際、仲介サイトを選択する際の決め手のひとつに、ポイント還元があります。
例えば楽天ふるさと納税を利用すると、返礼品だけではなく楽天ポイントもつきます。
ただでさえ過度な返礼品競争が問題になる中で、ポイント目当てでふるさと納税を行なうことを問題視し、さらにポイント部分を自治体、ひいては税金で負担しているのではないかと疑問視した総務省は、今年の6月28日、2025年10月から仲介サイト独自のポイント付与は廃止すると発表しました。
これに猛反発しているのは楽天で、廃止撤回の署名を集めるサイトを即座に立ち上げ、8月1日時点で185万件を超える署名が集まりました。
翌2日には記者会見を開き、「楽天はポイント付与の原資は自社で負担している」、「これまで自治体と協力してふるさと納税を進めてきた」と主張し、ポイント廃止の方針撤回を求めました。
ふるさと納税の目的
一方、総務省側はポイントを獲得することや返礼品を目当てに寄附することは本来の趣旨とは異なると主張し、両者にらみ合いの状況です。
ここでいう本来の趣旨とは何なのでしょうか?
総務省のサイトによれば、ふるさと納税の意義として、以下の3つを挙げています。
1. 納税者が自分で寄附先を選択することで、納税の大切さを自分ごととして捉える
2. 生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域にこれから応援したい地域への力になれる
3. 自治体が国民に取り組みをアピールして自治体間の競争が進み、地域のあり方を考えるきっかけにつながっていく
正直、どの返礼品が良いかで寄附先の自治体を決めているという、ネットショッピング感覚や節税目的で行なっているという方もいらっしゃると思われ、それ自体は何も禁止されていませんが、本来の目的はどの自治体で何の目的で税金を使ってほしいかで決めるものです。
自治体との争いも
さらに自治体と総務省との争いもあります。有名なのは、大阪府泉佐野市と総務省との戦いです。
泉佐野市はさまざまな返礼品を用意したことで人気となり、2017年度から3年連続で全国トップの受入額となりました。
ただ、この返礼品がamazonギフト券や旅行券など、地域貢献とは無関係なものが多数用意されていたことや、返礼金が高額だったことを総務省が問題視。
総務省は2015年から数回にわたり「換金性の高いプリペイドカードは禁止」「返礼割合を3割以下に抑えて」「返礼品は地場産品のみにして」と通知しましたが、泉佐野市は通知を無視。
そのため、泉佐野市などは2019年、ついにふるさと納税制度対象から除外されてしまいました。
それに対して泉佐野市は除外されたことを不服として裁判に訴え、最高裁で泉佐野市は勝利し、2020年には復帰しています。
ふるさと納税のメリット・デメリット
ふるさと納税制度には問題があると言われ、都市部から地方への税金の流出や、高所得者ほど還元が大きいという高所得者優遇などが問題視されています。
ただ、今年初めに能登半島地震が発生した石川県では、返礼金なしのふるさと納税が20億円以上集まったそうで、メリットもあります。
また、先月初めての南海トラフ臨時情報を受けて、海水浴場を閉鎖したことで5億円の損失となった和歌山県白浜町を応援したというケースがあります。
また応援したい地域の取り組みに対してピンポイントで寄附できる、クラウドファンディング型のふるさと納税というものも増えてきており、多様化してきているようです。
(岡本)