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ついに自衛隊まで出動!クマと人間との関係はどうなっていくのだろうか

ついに自衛隊まで出動!クマと人間との関係はどうなっていくのだろうか
イメージ画像:「クマ出没」(写真ACより)

名古屋の東山動植物園を訪れた。クマ舎に入ると、日本生まれのツキノワグマやエゾヒグマが、マレーグマなど海外から来たクマたちと飼育されている。檻の前で、園児たちは「可愛い!」と歓声を上げていたが、大人たちは一様に「こんなのに襲われたら怖いよね」という会話をしていた。

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過去最悪の人身被害

東北地方だけでなく全国でクマの出没が続いている。クマによる被害がニュースにならない日はないと言っても過言ではない。家屋への侵入、学校の校庭での徘徊、スーパーマーケットでの居座り、そんな目撃談ならまだしも、クマに襲われてケガをしたり、命を落としたりする人も続出している。死者など人身被害の数は過去最悪のペースだ。まさにかつてない“異常事態”である。

イベントの中止も相次ぐ

「アーバンベア」という言葉を耳にしたのは、2~3年ほど前だった。住宅地にあらわれる“都市型のクマ”で、車や工事の騒音、人の話し声などにも慣れている。当時は、住宅地へ入って来そうなルートに柵を作るとか、クマが人里でも隠れやすい藪や草むらを取り除くとか、対策も挙がっていた。しかし、今やそんなことでは、クマによる被害を防ぐことができないところまで事態はひっ迫している。秋と言えば、運動会を中心にした屋外イベントの季節だが、クマの出没情報によって、やむなく中止にする自治体も多い。

自衛隊の派遣を要請

イメージ画像:「クマ出没注意の看板」(写真ACより)

クマによる人身被害が多い秋田県が、防衛省に自衛隊の派遣を要請した。秋田県では、今年度すでに1,000頭以上のクマを駆除しているそうだが、それではとても追いつけないほどに、クマの出没数が増え、人が襲われる事態も急増している。自衛隊は、法律でクマに対して武器を使うことはできないため、捕獲に向けての後方支援となる。早速、陸上自衛隊と秋田県によって、猟友会のメンバーも交えての訓練が始まった。

政府もクマ対策に本腰

ルールの改正も進んでいる。鳥獣保護管理法も改正されて、地元自治体が「人的被害の恐れあり」と判断した場合は、市街地においても猟銃の使用が可能になった。「緊急銃猟」と言う。警察庁は、人里に入って来たクマに対して、警察官がライフル銃によって駆除することを可能にする検討に入った。ハンターの数も限られている上に、高齢化も進んでいる。政府は、これまでは「関係省庁連絡会議」だった組織を「関係閣僚会議」に格上げして、防衛省など出席メンバーも拡充した。クマ被害対策を総合的にまとめていく。まさに“国家を挙げて”の事態である。

クマの実態調査を!

環境省によると、全国各地に生息するツキノワグマの数は、およそ4万2,000頭と見られる。しかし、実際は2万頭から5万頭と、その数には幅があるという。要するに、クマの正確な現状は「把握し切れていない」のである。猛暑によって好物のブナの実が少なくなったという出没理由が、これまで言われてきた。しかし、実際それだけなのだろうか。クマの生息環境で、もっと何かが起きているのではないか。どんな“戦い”でも、まずは相手を知ることが必要だろう。国は予算を用意して、これまでになかったレベルでの、クマの実態調査を進める時ではないだろうか。

愛らしいクマも今は昔

「どんぐりポスト(東山動植物園)」:筆者撮影

「クマのプーさん」を始め「パディントン」「テディベア」と、クマは愛らしい動物として、人間社会でも愛されてきた。しかし、自然で暮らしている限り、生きるために人間に対しても牙を剝くことは当然ながらある。人を守るために、駆除されるクマの数が急速に増えている。それは人にとっても、クマにとっても悲しいことだ。両者の距離感が明らかに変容しつつある現実に、2025年(令和7年)の日本が直面している。

東山動植物園のエゾヒグマの檻の前には「どんぐりポスト」が置かれている。クマの餌になるよう園内で拾ったどんぐりを入れる箱で、この日も園児たちがどんぐりを入れていた。そんな微笑ましい風景を目の当たりにして、クマと人間の関係が早く落ち着いてくれることを切に願った。
          

【東西南北論説風(639)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

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