ギネス世界記録にも認定された「瞬間接着剤」ニッポンでの開発の歩みと魅力

ギネス世界記録にも認定された「瞬間接着剤」ニッポンでの開発の歩みと魅力

「接着剤」の歴史は、人類が道具を使い始めた頃にさかのぼる。石器時代の矢じりも、天然アスファルトを使って、木の棒に付けられたと言われる。紀元前のメソポタミア文明の王の墓からは、貝殻などを接着したモザイク画も見つかった。モノとモノをくっつけるために、様々な接着剤が用いられた。やがて合成接着剤を経て、20世紀半ばの米国では「瞬間接着剤」が発明された。その名の通り“あっという間にくっつく”接着剤だった。

アロンアルフアの誕生

「工業用アロンアルフア・1963年頃」提供:東亞合成株式会社

この瞬間接着剤に、日本の会社「東亞合成株式会社」が注目した。米国で生まれた瞬間接着剤の化学構造が、日本で初めて工業生産に成功した自社の化学製品「アクリル酸エステル」によく似ていることが判った。このため、国産の「瞬間接着剤」作りをスタートした。1963年(昭和38年)、「アロンアルフア」と名づけた瞬間接着剤を発売した。最初は“工業用”だった。

家庭用の瞬間接着剤へ

「一般用アロンアルフア第1号・1971年」提供:東亞合成株式会社

そんなある日、魚釣りが趣味という顧客から、工業用のアロンアルフアを、魚釣りの仕掛け作りに使ったら「便利だった」という話が届いた。

「それならば、一般家庭でも役立つはずだ。家庭用の瞬間接着剤を作ろう」

東亞合成のさらなる開発が続いた。瞬間接着剤は、すぐに固まってしまう。接着する位置の調整もしやすいように、あえて接着の速度を速めすぎない工夫もした。その保存状態も重要だった。家庭でも保管しやすく、さらに、使い始めて短い期間で中身が固まったり、接着性が落ちたりしないよう、二重になった「ロケット型の容器」を開発した。容器の中には乾燥剤も入れた。1971年(昭和46年)、世界で初めて“家庭用”の瞬間接着剤が誕生した。

木材も陶器も瞬間接着!

「アロンアルフア 木工用」提供:東亞合成株式会社

アロンアルフアの進化は続く。発売当初、接着できるのは「プラスチック」「合成ゴム」「金属」の3種類だけだったが、接着剤の“粘り気”すなわち粘度を高めることで、「木材」の接着も可能にした。1978年(昭和53年)に発売された「木工用」は、わずか1滴で木材を接着することができる、画期的な接着剤だった。さらに粘度を高めて、“ゼリー状”にすることによって、接着できる対象も広がり、「陶器」など接着剤がしみ込みやすい素材や、垂直に接着したい素材にも使えるようになった。

使いやすい容器の改良

「アロンアルフア EXTRAミニ×4」提供:東亞合成株式会社

容器の改良も進めた。使い切りタイプの「EXTRAミニ×4」や、ノズルの先をスティック状に細くして、1滴だけのピンポイント使用もしやすくした「EXTRAスティック」なども登場した。こうした商品によって、接着剤が手に付く心配なく、使用できるようになった。万が一、手についた時などにも剥がしやすいように、「はがし隊」という商品も開発した。

ギネス世界記録に認定

「アロンアルフア タフパワー」提供:東亞合成株式会社

世界でも認められた。2019年(令和元年)には、一般消費者向け瞬間接着剤最長寿ブランドとして、ギネス世界記録に認定された。2年後に発売された「タフパワー」は、耐水と耐熱でも強さを発揮して、アロンアルフア史上最強と言われる商品になった。日本で生まれたアロンアルフアは、日本国内だけでなく、世界20以上の国や地域で、活躍している。

「瞬間接着剤はじめて物語」のページには、日本の文化の歩み、その確かな1ページが、“あっという間にくっつく”自慢の接着力で、しっかりと固定されている。

          
【東西南北論説風(453)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿の日本はじめて物語」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして執筆しました。

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